3話
むつはコーヒーをすすって、椅子ごと山上の方を向いた。山上は、細い目でじっとむつを見ている。
「人に影響はないと思う…」
「たぶん、な?」
葉なの頭にシワを寄せるようにして、むつが歯を見せると山上はくっと笑った。
「変な顔すんな」
「何よ?余計に不細工って?ほっといて」
結局、ファンデーションしか塗っていないむつは、軽く目の下を擦った。瞬きを繰り返しているが、目の上下が腫れぼったいせいで、大仏のようになっている。顔の事はやはり気になるようで、むつは小さな鏡を引き出したから出して、眼鏡をずらして目元を指で押さえてる。
「…歳だな」
「なっ、何言ってんだお前‼ってか、昨日西原が追い掛けて鍵持ってきてくれたんだろ?すぐ寝なかったのか?」
ぶはっと笑った山上は、少し目を細めてむつの些細な変化も見逃さないかのように、じいっと見ている。
「寝れなかった…お腹が空いて」
「あ、鶏一で何にも食べてなかったもんね」
「うん。軽く食べるか悩んでるうちに朝方近くなっちゃって…そのまんま寝たんだけどね」
「食えよ。夜中でも食えよ」
山上に言われ、あははと笑ったむつは山上の視線から逃れるようにパソコンの方を向くと、仕事しよーっとっとわざとらしく言った。