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異世界ワンダーランド  作者: 真水登
3/7

その3

     5 混沌の世界

       ――大型スーパー、藻、ゾンビ――



 放課後。清華からのお誘いがなかった私は、真っ直ぐ家に帰ることにした。清華は習い事があるらしい。スイミングかテニスかゴルフか。私は、その三つの競技をしている彼女の姿を思い浮かべた。どれもが健康的に汗を流している絵だが、どうしても発育のいい胸や、肉感的な美脚を意識してしまう。ここまで来ると病気か偏執だと思えてくる。

 男が女の体に欲情して何が悪い、とは清華の前では死んでも言えない。せっかく学業のライバルという関係で知り合いになれたのだ――中二病を明かしたとはいえ、それ以上の黒い部分を明かしてしまったら関係が終わってしまう。

 私が男女間の友情の有無について考えていると、いつの間にか駐輪場に辿り着く。と、そこでまたしても私の愛車『白銀号』の前に人がいた。それも、朝の時と同じ赤髪の先輩――アテナだ。私の視界に映っている時からこっちを見ていたので、もう向こうには私の姿を認めているだろう。

 ここでUターンするのは、私が彼を避けているようで何かしゃくだ。どの道同じ学校にいるのだから、接触は避けられない。私はむしろ堂々として向かった。

「今度こそ、世界大戦を始めようというのですか?」

 アテナは私の言葉を聞いて肩を竦める。

「だから、僕には君と戦う理由はないって。全く好戦的ね……嫌いじゃないけど」

 むしろ嫌いになって欲しいから中二病モードで拒絶しているのだけど。

「で……結局何の用ですか?」

「ちょっと、アーノルド。堅っ苦しい敬語なんていらないわ」

 私は初めてその名前を呼ばれた。ちょっと格好よく感じる。

「いや、先輩だと知ったからにはそうせざるを得ないんですよ。表裏がはっきりと別れているタイプですから」

「じゃあ裏の方で接してよ。『アーノルド』と『アテナ』で話をしているんだから」

「もしかして先輩、まだ現役で中二病じゃあないんですか?」

 私は訊く。根拠はないが、自分を本名で名乗らないことは十分怪しい。

「いいえ」彼は首を振る。「ただ昔に付けた『アテナ』が気に入っているだけ。他に理由はないわよ。それより、遠慮なんてしなくていいからね」

 私は頷いた。先輩がそこまで言うんだから、これから敬語で話すのはかえって失礼になるだろう。先輩に向かってタメ口は慣れないけど、仕方がない。もう一人の自分を出す的な感じにすればうまくいくかも。

「何の用だオラァ! 用がねえなら邪神の生贄にするぞこの野郎が!」

「豹変し過ぎじゃない!? 誰よ!」

 一気にギアを上げてしまった。自分でも調節は難しい。

「まあ、いいわ。用ってほどでもないけど、遊びに行きましょ」

「遊ぶ?」私は訝しむ。

「そ。ゲーセン行って、それからカフェ。いいわね?」

 そう言うと、アテナは自転車を取りに少し離れた場所に行った。私はその隙に自転車の鍵を外してスタンドを蹴り上げ、駐輪スペースから引っ張り出す。方向転換してからサドルに跨り、ペダルを踏んで発進させる。

「ちょ――――っと待ってよ! 何涼しい顔でペダルを()いでるの?」

 彼は必死になって私に追い付く。流石に気付かれてしまった。

「えっ、だって『待て』とか言われてなかったし、俺は行くとか言ってないし」

「流石に先輩命令出したくなってきたわ」

 溜息なのか呼吸を落ち着かせるためなのか、彼は深く息を吐いた。

「あっちでいいよな?」私は北西方向を指さして言う。

「来てくれるの?」

 アテナは目を輝かせながら嬉々とした声で訊いてくる。

「ああ。どうせ暇だからな。たまには勉強の息抜きも必要だ」

「よかった~、ありがとう、アーノルド」

「でも、アテナは後輩の俺を誘うくらいなら、同学年のやつらでも誘ったらどうだ?」

 私がふと思った疑問をそのまま口に出すと「えーっと」と急に歯切れが悪くなった。

「いや、今日はみんなと予定が合わなかったからさ」

「ふうん」私は相槌を打ち、それから運転に集中する。

 これから向かうのは、市内の大型スーパーだ。最近になって知ったのだが――その大型スーパーを始め数多くの店舗を運営するそのグループは、国内で五本指に入り、海外にも展開しているらしい。そしてその本社が市内にあるという。これから向かうその大型スーパーは、本社のお膝元だけあって、敷地がとてつもなく広い。映画館、ホームセンター、食料品売り場、おもちゃ屋、本屋、レストラン、カフェ――などなど、一つ一つ挙げたらキリがないくらいだ。

 小学生の時は母親に車で連れてきてもらった記憶があり、中学生の時は家から自転車を漕いで来たものだ。家からは自転車で三十分以上かかる。だが、高校からは十数分と近くなるので、学校帰りに寄っていくのは簡単だ。

 私とアテナは車道の隅を自転車で走る。目的地の大型スーパーまでは、自転車が安全に通れる道があまりない。歩道は無いか、あったとしても人一人しか通れない狭さだ。

 額に汗が滲み出てきた頃、私とアテナは目的地に到着する。四月の上旬とはいえ、十分以上も自転車を漕ぎ続けると汗が出て暑い。駐輪場に自転車を停め、足早に店内へと這入る。しかし、時期が時期だけにまだ冷房の効きが不十分だった。

「暑い。日本の温暖化はどうなってんだ」

「自転車を漕いだんだからしょうがないわ。じゃあ遊ぶ前に冷たい飲み物でもどう?」

「ん? ここら辺って何かあったっけ?」

 アテナは指で示しながら先を行く。この入り口近くは惣菜屋とかレストランが軒を連ねるだけだと思ったけど、近くのカフェか?

 彼が向かったのは、裏路地みたいな目立たない場所だった。

「ここ、知らない?」

 私は首を振る。そこは茶葉の専門店だ。玉露が高級そうだな、くらいのイメージしか持っていない私には縁がない場所である。

「こんなところに連れてきて、何を飲むんだ? 緑茶とか抹茶は飲みたくないぞ」

「大丈夫だって。ほら、これ見て」

 アテナが示す先には、茶葉の専門店と隣り合わせで、ドリンクの販売店があった。その全てが緑茶に関連した飲み物だ。

「ここで()れたお茶を使用しているから、お茶だけでもおいしいのよ。でも、オススメはこの『グリーンティー+ソフト』ね」

 ガラスのケースにはサンプルが並んでいて、アテナはその一つを指さす。透明なプラスティックのカップは藻のような緑色の液体で満たされており、その上にとぐろを巻く白いソフトクリームが乗っかっているのだ。

「いや……でも、緑茶なんだろう? ソフトが付いたところで変わる?」

「断然。口で説明するの面倒だから試してみてよ」

 私が答えを出す前に、アテナは「すみませーん。『グリーンティー+ソフト』を二つ、お願いします」と勝手に注文した。

「おい、まだ飲むと決まったわけじゃあ」

「いいのいいの。ここは僕の(おご)りだから。遠慮せず飲んで」

 私は何も言い返せない。奢ってもらうのだから拒否する理由がなくなった。あとはもう味を確かめるだけだ。彼が支払いを済ませると、すぐに注文の品が出来上がる。彼は店員に渡されたカップをそのまま私に差し出した。

「ありがとう」

 私は『グリーンティー+ソフト』を受け取る。サンプルと違ってお茶の緑色もソフトの白色も輝いていた。白と緑のコントラストがよく映える。

 近くのベンチに座ってから、アテナは言う。

「まずね、ソフトを先に一口食べるといいよ」

 彼はソフトに差さっているストローを手に取った。先端が開いていて、それがスプーン代わりになっている。そこでソフトの中腹辺りをすくい、口に運んだ。

 私も同じようにしてソフトを食べる。

「濃厚でおいしいでしょう? それから緑茶を飲むと苦さが和らぐの」

 言われた通り、口にソフトの味が残っている状態で緑茶を口に流し込む。

「……うまい」

「でしょ? 他にも色々と食べ方や飲み方があってね」

 アテナは得意げにそれらを私に教えてくれる。ソフトを緑茶に沈めてから食べるとか、緑茶にソフトを溶かしてから飲むとか。それらは全て正解だった。どれもが満足のいく味だ。濃い緑茶に甘いソフトが合うという事実に私は衝撃を受ける。

 食べ終えてから「ごちそうさまでした」とアテナにお礼を言った。

「うまかった。特に後半ソフトが融けると緑茶の味がちょうどよくなって、最後まで楽しめる。こんなすごい物を見落としていたなんて一生の不覚だ」

「そこまでおいしそうに食べて飲んでくれたなら、奢った甲斐があったわ」

 彼は嬉しそうに何度も頷く。私は一度店を見て、今度来る時は自分のお金で飲もう、と心に誓った。

「それじゃあ、体も冷やしたことだし……ゲーセン行く? それとも、服でも見る?」

 アテナは立ち上がって、この先のプランを訊いてくる。私は満たされた腹をさすりながら腰を上げた。

「悪いが、俺は服を漁るような女々しいことには興味ない」

 そうかな、と彼は苦笑する。



 当初の予定通り私達はゲームセンターに行くことにした。二階に上がり、隣の別館まで歩く。ゲームセンターは映画館の隣にあり、そこには、私達と同じく学校帰りの生徒達や上映時間を待つ大人達がいる。

「よくさ……こういう大型スーパーとかデパートに行くと、ゾンビが出てこないかな、って思わない?」

 お菓子を取るドーム型の機械を通り過ぎる時に、アテナが訊いてきた。

「思う。それで、どうやって生き残るかシュミレーションするんだろう?」

「でもさ、実際数で攻めて来られたらどうにもならないよね? それに、昔のゾンビならまだしも、最近のゾンビって全力疾走するでしょう?」

 私は「そうだな」と頷く。

「素手はもちろん、近接武器でも倒すのが難しくなっているわ。だから僕は思うの。もしバイオハザードが起きたら、最初に全滅するのは日本だろうって」

「銃が無いからだろう? でもよ、たとえ日本が銃社会であろうと、一般市民が持っている弾には限りがあるだろうし、撃ち尽くす前にやられる場合だってある。まあ、俺なら弾さえあれば死なないがな」

 私達はレースゲームのコーナーを通り過ぎ、更に奥へと行く。

「へえ。そんなに言うなら、アーノルドは射撃の腕前に自信があるの?」

 アテナが私を疑るような目で見てくる。

「舐めるなよ? ゲームとエアガンで鍛えた俺の異名は『地獄の業火』だぜ?」

「ふふふ。それじゃあ、お手並み拝見させてもらうわ」

 辿り着いた先は、シューティングゲームが並ぶ場所だった。銃撃戦を楽しむもの、迫り来るゾンビをひたすら撃つもの――などなど種類は豊富である。

「いいだろう。現実でできない分、ここでゾンビ達をぶち殺すぜ!」

 私とアテナは迷わずゾンビの方を選んだ。百円を入れると、銃声が鳴り響く。私は銃の形をしたコントローラーを手に取り、画面を撃ってゲームを始める。

 これは過去に何回かプレイしていて、敵の配置や流れなどもうろ覚えだがつかんでいる――だけど、アテナはこのゲームをやったことがあるのか? 言葉の端々からは余裕が窺えるのだが、実力があるのかどうか。

「アテナは、このゲームをやったことは?」

 オープニングのムービー中、私は横にいる彼に聞く。

「何回かあるわ。面白いよね、これ」彼はわくわくした様子で言う。

 ムービーが終了すると主人公達の主観画面に変わり、ゲームが始まった。私は殺到するゾンビに銃を向ける。

「行くぜ……一匹残らず駆逐してやる!」

「ちょっ、目が怖いわよ、アーノルド!」

 このゲームは割と新しい方で、特徴としては、銃がサブマシンガンになっている。その分、画面内に出てくるゾンビの数も多い。私はトリガーを引いたまま狙いを変えてゾンビに銃弾を浴びせる。フルオートなので頭は狙いやすい。

「やるわね、アーノルド」移動の合間に言うアテナ。

「まだまだ」私は首を振って応える。

 アテナのプレイは安定していた。弾切れを起こした時には画面の外を撃ってリロードするのだが、彼は自分に向かってくるゾンビを倒すと、余裕を持ってリロードするのだ。私は弾が切れるギリギリまで撃ち続けてからリロードする。なので、中盤になると弾切れに気付かずダメージを受けてしまう。

 順調に先へ進むと、イベントが発生して画面一杯にゾンビが現れた。

「俺が手榴弾を投げる」

 私は銃型のコントローラーに付いているボタンを押す。すると、画面に手榴弾が投げられ、爆発した。あっという間にゾンビが一掃され、端に残るゾンビをアテナが片付ける。

 このゲームはゾンビが多い分、アイテムとして敵を一掃する手榴弾があるのだ。数に制限があるから使いどころが重要になる。

「ふははははははっ! 見ろ、ゾンビがゴミのようだ!」

「もうそういうネタはいいってば」

 アテナは呆れたように言う。私は久しぶりにこのゲームをプレイして興奮していた。現実で得られない爽快感を得ている。

「よーし、ボスが出てきた」

「毎回思うんだけど、こういうゲームのボスキャラって中二病臭いよね?」

「いいだろう。じゃないとこういうゲームは成立しないぜ」

「まあ、そうね」

 私とアテナはノーダメージで一面をクリアした。その後もアテナとは息が合い、しかも彼はライフ回復アイテムや手榴弾があるボックスの位置を把握しており、相当やり込んでいると見られる。はっきり言って私よりうまい。

 結局――私達はゲームを全てクリアしてしまった。私は三回コンティニューして、アテナはノーコンティニューという素晴らしい成績を残す。

「負けたぜ、アテナ。つーか滅茶苦茶このゲームを熟知していただろう」

「そうだけど……でも、アーノルドだってがんばったわよ」

 私と彼は互いの健闘を称え合った。

「結構シューティング系が好きなのか?」

「というより、ミリタリー系が好きなのよ。だからこういうのも好き」

「じゃあさ、『COD(クールオブダーティ)』ってゲーム持ってる?」

「持ってる! あれいいよね? アーノルドも? うわーっ、まさか持っている人がいるなんて感激!」

 急に目を輝かせてテンションが高くなるアテナ。あまりの高揚ぶりに私の手を握り出して、非常に対応が困る。気色悪い。

 ちなみに、『COD』とは一人の兵士を操作して戦場で戦うアクション系のゲームだ。世界中で人気があり、家庭用と携帯用のソフトがあるので、オンラインで遠くの人達とも遊べるし、通信機能で何人かが集まってプレイすることができる。操作が複雑で玄人(くろうと)向けなので、初心者と熟練者の実力の差が激しいゲームでもあるのだ。私も持っているが、そこそこの実力しかない。

「ねえねえ、今度一緒にオンラインしようよ。何なら学校でやってもいいし」

 アテナから誘いが来た。しかしそれは対戦の誘いである。一対一もできるし、知らない人達と混ざっての集団戦もできる――様々な戦い方があるのだ。

「いいぜ……望むところだ」

 勢いに押し切られる形で受けてしまった。しかし、今日のシューティングゲームの実力を見るに、『COD』も強そうだ。対戦した時に悲惨なことが起きないようにしなければいけない。そのためには特訓が必要だな、と私は思った。

「それじゃあ、もう七時に近いから帰りましょう」

 アテナはスマートフォンを取り出して時間を確認する。それで今更気付いたのか、私に番号とアドレスの交換を要求してきた。私はそれに応じる。交換し終えるとアテナは何故か顔を綻ばせていた。



 帰り道は暗く、昼の陽気が嘘のように肌寒く感じた。自転車のライトで数メートル先を照らしながら私とアテナは帰路を走る。道中では、今日のことを振り返るように色々と話をした。『グリーンティー+ソフト』の味の感想や、他にもおいしい店を知っているから今度連れて行く、といった話、シューティングゲームの話、『COD』の話などを。

 私は薄らと見える星空を眺めながら、ふと口にする。

「世界は平和だな。いくらゾンビとの戦いを想定しても、ゾンビは一体だって現れない。お化けや幽霊だって姿を見せない」

「どうしたの? 急にそんなこと語って。それが現実でしょう。起こりもしない非現実や存在しない何かを想像するから面白いのよ? 実際にゾンビやお化けや幽霊が現れたら、面白いなんて言えないわ」

「まあ、そうなんだけど……」

「中二病の典型的な症状ね。そういう変革や刺激を無理にでも求めたがるものよ」

 そうかもしれない、と私は思った。

「でもね、そんなのがなくたって私は楽しんでいるの。だって、今日アーノルドと遊んだ時間はすごく楽しかったわ。君はそう思わない?」

 つまらなくはない。面白かったし、楽しかった。だけど、私はそれを言葉に出したくなくて、ただ黙って頷く。アテナはニヤニヤしながら私を見る。

 私達は途中で別れることにした。あいさつを交わして、それぞれの道へと進む。一人になった帰路はとても静かで、夜の闇は私を飲み込もうかというくらい暗かった。



     6 厨二病ワンダーランド

       ――草原――



 道路に戻ってから、僕はどれだけハーレー・ダビッドソンを走らせただろう。ランランとの別れからどれだけ時間が経ったのだろう。時を刻むスマートフォンは、彼女の手元にある。そして僕は時計を身に付けていない。

 会おうと思えば、いつでもランランに会いに行ける。何せ道路の右側には常に荒野と砂漠があるのだから。バイクを停めて地に足を踏み入れれば――彼女は現れる。だが、そう簡単に会いに行っていいものか? いや、無闇に会う必要もないだろう。彼女がそれを望んでいるとは限らないし、僕が今以上に会いたいと思う時が来るかもしれない。僕は、何となく再会する運命を感じている。

 いつの間にか太陽は傾いており、世界が夕焼け色に包まれていた。もうすぐ今日という一日が終わる。あとどれくらい走れるのか、そして今日はどれだけ走ったのか。メーターが無いので走行距離がわからない。それでもいいと僕は思った。

 日が陰り始めると、僕が走る道の風景も違ったものに見えてくる。右手に見える荒野と砂漠は紅に染まり、より一層近付く者を拒絶する威圧的な雰囲気が強く映った。今は赤いコモドドラゴンの姿は確認できない。左手に見える草原は真逆だ。風の波に揺られる緑は夕日に当たって黄金色に変わっている。川は水面の揺らぎによって光が反射し、キラキラと輝いていた。全体的に温かみを感じる光景であり、荒野と砂漠のような殺伐とした要素は一切ない。白銀の馬は昼のような荒々しい走りをやめ、ゆっくりとクールダウンするように走っている。その毛並みは白いカンバスのように夕日の赤を写し出していた。ピンクのイルカは姿を見せていない。

 僕は少し困る。何故なら、ずっと道路を走っているのに、未だにモーテルどころか建物一つ見つからないからだ。寝床が無い――それは非常に困る。砂漠にあった石の建物まで戻る? いや、その時にはもう空は真っ暗になって何も見えなくなるだろう。それに、砂漠に行くには荒野を横切らなければならない。バイクのヘッドライトが照らすだけの視界では、赤いコモドドラゴンに奇襲でもされたら一巻の終わりだ。

「……とは言っても、徹夜で走るっていうのもな」

 途方に暮れながらもハーレーを走らせていると、左前方――草原側で道路から少し離れた場所――に大きな岩があった。まるで隕石でも落ちてそうなったかのように、一つだけ草原にポツンとあるのだ。遠くて大きさはわからないが、上の方は比較的平坦になっている。ひょっとしたら上で寝られるかもしれない。

 僕は見つけた一縷(いちる)の望みにかけて、大きな岩を目指して走り出す。



 草丈の低いところを探して何とかハーレーを走らせ、僕は目的の岩に到着した。高さはおよそ三メートル、外周は三十メートルくらいの岩だ。ぐるりと回って調べてみると、岩の側面は反り立っていて、自力で登る足掛かりも見当たらない。しかし、一ヶ所だけ人工的に削り取られて、上まで登れる階段が作られていた。

 僕はバイクの座席後部にある荷物を、階段を往復して全て運んだ。それから一つのバッグの中を探り、ランプ、携帯コンロ、小型ケトル、缶詰、カップ麺を取り出した。

 既に辺り一帯は暗闇で、漆黒の夜空を穿つような円い月が、草原で唯一の光源になっている。まず、僕は始めにランプに明かりを灯して、岩の上の視界を確保した。僕がいる場所はほぼ長方形で、長いところが八メートル、短いところは七メートルある。光によって岩の下や周囲の視界がほぼ見えなくなるが、弊害はほぼないだろうと判断する。ただ、念のため体の正面を登ってきた階段に向け、手の届く範囲に拳銃S&W M500を置く。それから次の作業に取りかかる。

 携帯コンロに火を点けて、小型ケトルに入れたミネラルウォーターを沸かす。これから食事の準備だ。湯を沸かし、それをカップ麺の容器に入れて三分待つ。僕は、その二つの待ち時間で違うバッグから毛布を二枚取り出した。一枚は下に敷くため――岩の上は直に寝転がると背中が痛くなる――に、一枚は自分にかけるために。

 食事の準備は終わった。カップ麺とチリビーンズの缶詰と(さば)の缶詰、そしてただのミネラルウォーター。これが僕の夕食だ。漆塗りのマイ箸を持ち、何から食べようかと思っていると――階段の方から物音が聞こえた。もっと言えば、階段を登る音だ。

「…………!?」

 僕はすぐさま箸からリボルバーに持ち替えて立ち上がる。撃鉄を起こし、何者かが変な動きをしても即射殺できるように拳銃を構えた。すると、階段を登ってきた者の胸から上がランプの光に照らされ、僕と相手はお互いの姿を認識する。


「ま、待たないで! 撃って! 撃って!」


「はあっ?」僕はその言葉に混乱した。

 その人は首と両手をぶんぶんと振って、僕に制止を求めている。にもかかわらず言葉は『待つな』や『撃て』という。ボディランゲージと言葉が矛盾しているのだ。

「浮ついて……あたしは敵よ。とりあえず銃を上げて、黙り合いましょう」

 言っている意味がわからない。いや、ランランの時みたいに言葉が逆じゃないから、言葉自体はわかる。ただ、状況と言葉が噛み合っていない。

「動くな! 手を上げてこっちに来い」

 手を前に出して振っていたので、相手の顔が見えない。女性の声だが、顔を見るまで判断はできないので、僕はそう呼びかけた。

「わからない。後でこっちから来るわ」

 そう言いながらも相手は手を上げ、階段を登ってこっちに来る。

 ランプの光がその者の顔を鮮明に照らす。やはり女性だった。ポニーテールの髪は新芽のような淡い緑色で、挑戦的な大きい釣り目が特徴だ。赤色と黒色の波型模様のタートルネックは、体の細いラインや胸のふくらみを露わにしている。紺色のジーンズも同じようにぴったりと脚や尻の曲線を強調していた。背は僕と同じ、いや、僕より少し高い。百七十五、六はある。雰囲気から僕より年上な感じがした。

「そこで止まれ」彼女が僕から三メートルほどの距離まで近付いたところで言う。

 彼女の素性がわからない以上、僕は警戒せざるを得ない。一見して武器を持ってはいないが、隠し持っている可能性も考えるべきだ。

「お前は何者なんだ? 《白雉(パールフェゼント)》の者か?」

 まず、頭に浮かんだその組織を口にする。彼女が僕を殺しに来た暗殺者の可能性だって高い。ただ、もしそうならここで答えるはずもないか。じゃあ違うとしたら? こんなところに来た彼女の目的は何だ?

 彼女は首を振って「ええ、そうよ」と言い、直後、何かに気付いたのかハッとした。

「あっ、これは、その、違わなくって……ええっと」

 身振り手振りでは必死になって否定しているのに、言葉では肯定している。言動が矛盾していてらちが明かない。

「いい加減にしろ! どっちなのかはっきりと言え!」

 僕は思わず慌てふためく彼女に怒鳴ってしまう。すると、ぴたりと動きが止まったかと思えば、今度は小刻みに震えて目に涙を浮かべた。なおもそれは止まらずに溢れ出し、彼女のくしゃくしゃになった顔に流れる。更には子供のように大声で泣き出した。

「うわああああああああああん! う、うう、あああああああああああっ! 優しいよ、優しいよ! な、何で、あたしが、喜ばれなければならないの? えっぐ、ひぐっ、ううう、ああ……あたしは、ただここに、巡回のために、帰ったのに。草原と河川の巫女が、どうして銃を向けるのよ。わかる!」

 僕は何も言えないし、何もできない。女性が本気で泣いて、わけのわからない言葉で怒鳴り散らかす様は、とても手に負えないものだ。しかし、僕は彼女の泣き言の中から重要なワードを聞いた。それは『草原と河川の巫女』である。

 同時に僕は、あることに気付く。さっきまで無風だったのに、急に風が出始めたのだ。そして、その風は今も勢いを増している。どうしてだ?

「わああああああああああああああああああああああああああああああああん!」

 彼女が強く泣き叫ぶと、僕に向かって突風が吹いた。その風の強さに僕は体を押される――足を踏ん張らせないと倒れてしまうくらいだ。これは偶然なのか? そう思っていると、再び彼女が大声を上げ、それに呼応するように風が強く吹きつける。足元にある出来上がったばかりのカップ麺がひっくり返り、岩の上に麺と湯が広がった。僕はショックを受けた。缶詰のふたをまだ開けていなかったのが幸いだ。

 この風は偶然ではない。彼女の能力だ。僕はほぼそうだと確信している。それは、これが初めてではないからだ。荒野と砂漠の巫女であるランランは雷を操った。もしも彼女が自分で言った通り草原と河川の巫女だとしたら、風を操ることは容易だろう。そう考えたのだ。

「すまない! ちゃんと話を聞くから落ち着いてくれ! 銃も下ろす。僕は敵じゃない」

 僕は彼女に言葉をかけ、向けていた銃を下ろして岩の上に置いた。とにかく敵意を見せては駄目だ。早く彼女を泣き止ませなければ。これ以上風が強くなったら、姿勢を維持することが難しくなり、最悪岩の上から吹き飛ばされてしまう。

「怒鳴ったことは謝る! だからお互い落ち着いてゆっくり話し合おう!」

 風が吹き荒れる音より大きな声で、僕は彼女に言葉を伝える。すると、それが功を奏したのか彼女の号泣が少しだけ落ち着き、同時に吹き(すさ)ぶ風も弱まった。

「うう……ひっく、嘘?」

「嘘じゃない。本当だ。ほら、もっと近付いてもいいよ」

 僕がそう言うと、彼女は泣きじゃくって手の甲で目を擦りながらも、一歩ずつ僕に歩み寄ってくる。しばらくして、彼女の落ち着き具合を見てから僕は訊く。

「ねえ、僕は君と話をしていて違和感を覚えたんだけど……何かあるのなら言ってくれないかな? ごめん、失礼なことだけど。お互いに齟齬がないように確認したいんだ」

 彼女は静かに頷いた。

「あたしは、本当のこともしゃべれるの。だからあたしの言葉は普通に聞こえない」

 彼女は真剣な顔で言う。変に嘘をついているようには見えない。わけがわからない風に聞こえるのは、僕が理解しようとしていないからか?

「……あっ、もしかして」

 僕は最初から彼女が言った言葉を思い出してみる。そして、言葉と行動の矛盾について理由を考えたところ――一つの仮説を思いついた。

「ねえ、『本当は白』って言ってみて」

「えっ……嘘は黒」

「次は、『上、右、下、左』と指でさしながら言って」

 彼女は言われた通りに上から左まで順に指をさしながら「下、左、上、右」と言う。

 それは、僕の仮説が証明される結果となった。最初は戸惑ったが、一度似たような体験をすればある程度耐性というものが付くのかもしれない。とにかく、僕は導き出した結論を彼女に言う。

「君は、言葉を反対にしてしか言えないんだね」

 それを聞いて彼女は嬉しそうに「いいえ」と答えて頷いた。僕は胸の引っかかりが取れたような気分になる。

 彼女の話し方は肯定を否定に、否定を肯定にという風に、あらゆる言葉の意味を反対にして言っているのだ。そして、今までの言動を見る限り、行動に関しては反対にならないらしい。だから、言葉で否定しておいて行動で肯定をする矛盾が生まれたのだ。

 ランランの言葉自体を逆にするのとはまた違う――言葉の意味を逆にする話し方。だがそうとわかってしまえば、ランランよりは簡単だ。録音して逆再生するまでもない。言葉の意味を反対にするだけなら、何とか脳内で処理できる。

「だからあたしは、昔まで正直者って言われてこなかったの」

 これはつまり『今まで嘘つきと言われてきた』という意味なのだろう。まあ、そう言われても仕方がない。銃を向けられて「撃って」とか言ったり、どんな指示に従おうとしても逆らったり、あらぬ疑いをかけられて否定しようにも肯定したり――彼女の話し方の仕組みをわからないと、絶対に誤解されてしまう。

「なるほど。(おおむ)ね理解した。じゃあ僕が君に色々と質問するから、君は極力しゃべらない方がいいね」

「わかったわ」彼女は首を振った。「だってあたしはおしゃべりするのが大嫌いだもん」

 何ていい性格をしているんだ。

「オーケー。まあ、僕が理解するのをがんばるよ。まず、君の名前は?」

神乃奈々五倍子儀(かみのななふしぎ)(えり)

 彼女はその名前の漢字を丁寧に教えてくれた。どうやら固有名詞や反対の語が無い場合は変換されないらしい。説明の時に名字と名前が反対になっただけだ。

「これはまた……見たことも聞いたこともない名前だね。エリって呼んでいい?」

「そんな、ようやくエリって呼ばないなんて。別に嫌だけど」

 彼女ははにかんで言う。言葉と表情が噛み合っていないので、僕は反応に困った。笑いながら『嫌だけど』って、何だか不気味で恐怖を感じる。

「さっき、ここへは巡回のために来ただとか、自分は草原と河川の巫女とか言っていたよな? 本当か?」

「嘘よ」エリは頷く。どうやら本当のようだ。「あたしは草原と河川を放任している巫女……それで、ここは見晴らしが悪いから、草原一帯を見渡すことができない。だから時々訪れないの」

 要は、彼女は草原と河川を統治していて、この岩は展望台のような役割をしているという。そうか――だから、この岩には上に登るための階段があったのだ。だけど、あの階段をエリが作ったのか? 岩だったところを削って。しかしそれは、女性一人でできるものではない。男性でも根気と体力が必要な力仕事だ。

「あの階段は?」

 僕は気になって、彼女の後ろを(あご)で示しながら訊く。

「ああ……あれ? もちろんあたしが壊したのよ。これを見ないで」

 そう言ってエリはジーンズのポケットから何かを取り出し、僕に見せた。それは、丸い石だ。庭園にあるような小さくて丸い石を、手の平に二つ持っている。

「――――」

 エリが何かを(ささや)くと急に風が吹き、僕の頬を撫で、彼女のポニーテールを揺らす。風が強くなったかと思うと、彼女の手の平に乗っている二つの石が宙に浮き出した。それらは彼女の手の上で螺旋を描きながら上下に動きながら漂っている。

「これは……」

「あたしが風を放置しているのよ」

 それからエリは詳しく説明してくれた。どうやら、彼女は風を操作して自分の手の周りに集約させ、圧縮した空気で渦を巻いたのだという。精密な風のコントロールによって、二つの丸い石は螺旋を描きながら彼女の手の上で浮遊しているのだ。

 続けて彼女は説明した。

 風で小さい石をいくつも飛ばして、岩にぶつける。その衝突で削れた岩や石を風で巻き上げて、再び岩にぶつける。石や岩を風の力でぶつけて掘削を行ったのだという。

「すごいな……風を操る能力は、草原と河川の巫女になってから?」

 エリは頷いた。

「巫女を辞めた時に、能力を失った。そして、言葉も……」

 能力の発現と言葉の制限は、ランランと同じ経緯だ。

 エリとランラン――道路を隔てた二つの場所、そこにいる二人の巫女。何か繋がりでもあるのだろうか。僕は訊く。

「なあ、エリ。道路の向こう側にいるランランって知っているか?」

 彼女は「知っている」と言って首を振った。

「そうか。君と同じような立場で、荒野と砂漠の巫女なんだ。てっきり知っているものかと思っていたよ」

「あたしはそこから這入ったことがあるから、他の世界を知っているんだ。それに、あたしが這入ったら、世界が正常になり、世界が始まるの」

「なるほど」それも――ランランと同じだ。

 そう言えば、ランランの口から草原の話を聞いたことがない。エリのことについても話さなかった。それは、彼女がエリのことを知らないのか、話す機会がなかったのか。また会う時に確認するしかない。

 エリのことが色々わかった。少し長く話をしていたのか、僕のお腹が空腹を告げる音を鳴らす。そこで僕は、食事をしようとして彼女と遭遇したことに気付いた。更に、彼女の風でカップ麺が倒されたことも。

「お腹、減ってない? よかったら何か食べる?」

「えっ、駄目なの? 食べない食べない!」

 エリは目を輝かせてながら何度も頷いた。何だか、ランランの時は逆再生を聞けばいいだけなのだが、エリの時は一度彼女の言葉をそのまま聞く分、違和感が残る。まだ表情と言葉のギャップに慣れない。

 とりあえず、エリも食べるということなので、他の缶詰とミネラルウォーターと新たに二つカップ麺を用意した。そこでふと、最初に作ったカップ麺の残骸を見る。

「すまない、エリ。風の力でここ片付けてくれる?」

 僕は他の物を全て別の場所に移動させてから、岩の上に広がるカップ麺の残骸を指して言う。すると彼女は「どうして?」と言わんばかりに首を傾げた。

「君の風で僕のカップ麺が一つ台無しになったんだ」

「それは……ありがとう」

 感謝の言葉? その反対って何だろう――謝罪か?

「でも、あんたが銃を向けず、あたしに優しくしたからこうなったんだからね」

「それはわかっている。すまなかった」

 エリは溜息をついてから手を伸ばし、手の平を上にして指を動かした。挑発的な動作に見えるが、その直後に風が巻き起こり、伸び切った麺が見えない箸にすくい取られたかのように浮き上がる。僕がゴミ袋を持って構えると、宙に舞う麺が全てその中に入れられた――その際僕の顔に汁が飛んだけど、彼女が能力を使って片付けてくれたのだから、文句は言わない。

「よし、ありがとう。それじゃあ、食事の準備をするから少し待ってて」

「遅く遅く」

 エリは期待する眼差しを向けて、僕を急かした。



「……まずかったわ」

 僕が用意したカップ麺を食べ終わり、エリは言った。とろけるような笑顔でそう言われると、喜んでいいのかどうか迷う。たとえ『おいしい』という意味であっても。

「そう言えば訊き忘れてたけど、エリは《白雉(パールフェゼント)》のことを知っているのか?」

「知らない。あまり良い連中よ。頻繁に帰っては馬やイルカを解放するの」

 それはつまり、馬やイルカを捕獲しようと時々来るってことか。やつらの目的は一体何なんだ? 僕を殺そうという目的があるのはわかる。正体を確かめる前にランランの落雷で死んだが――恐らく、僕と彼女を銃撃したのもやつらなのだろう。僕の殺害が目的ならば、何で馬やイルカを捕獲する必要がある? そこがわからない。

 僕は最後に残ったチリビーンズをかき込み、咀嚼しながら考える。

「あんたは、どうしてあんなところでご飯を食べないんだ?」

「ん? それは、宿が無いからだ。で、ちょうどここを見つけた」

 エリにバイクで旅をしていること、道路を走っている以前の記憶が無いことを話す。

「ふうん」彼女は相槌を打つ。「まあ、急いで働くのが悪いんじゃない。後は短いんだからさ」

「そうさせてもらうよ……ありがとう」

「そっちこそ、まずい食事を奪ってくれたわ。いただきます」

 エリは手を合わせて頭をぺこりと下げると、ゆっくり立ち上がった。

「もう行くのか?」僕も腰を上げて訊く。

「いいえ。草原と川は狭いから、遅く回らなくていいの」

「うん。そうだな。えっと、また会えるかな?」

 本当に短い時間だったけど、エリと話を交わして面白かった。引き止めはしないが、僕はそう訊いてしまう。彼女はすぐに頷いた。

「絶対会えないよ。私は草原と河川の巫女……風と共に去り、風と共に現れる」

 言い終えると、エリは一瞬で姿を消す。まるで風に乗ってどこかへ飛んでいってしまったかのように。後には、穏やかな風しか残らなかった。

 彼女を見送るというわけではないが、僕は夜空を見上げる。円い月をずっと眺めていると、そこに黒い影が映った。それは人の形をしていて、僕に手を振っている。

 エリだ――直感でそう思った。僕はその幻想的な光景に目を奪われ、手を振り返す。

 しばらくしてから影は去ったが、僕の感動はまだ去ってはいない。



 こうして、ランランとエリに出会った長い一日は終わりを告げる。

 先の見えない旅路が僕を待っていると思うが、それでも、前に進む強い意志はあった。

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