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ナナシス論  作者: 客野
3/4

「論」から遠く離れて

ある年齢より前の文章を、私は読むことができない。そこに表れているのが文字ではなく、ましてや想いなどではなく、単なる自己顕示欲でしかないからだ。醜く稚拙で、それでいて真摯でさえないものを、私は私として受け入れることができない。

ナナシス「論」と題されたふたつの文章も、間違いなくそれに類する。私は未だに、このふたつの文章を読むことができない。ただ、消すこともできないというだけのことなのだ。


私は数ヶ月前、ナナシスをやめた。推しのイベントを走っている最中に、全てが嫌になって、その場でアプリをアンインストールした。あっけないものだったが、特に後悔はしていない。

やめてみて、はて、俺はナナシスの何が好きだったのだろう、と考えた。答えは出なかった。俺はナナシスの何も好きではなかったのだ。

映画並なら映画を見ればよい。アニメ並ならアニメを、アイドル並ならアイドルを、それぞれ鑑賞すればよい。確かにエピソードは優れたものが多い。しかしそれを取り巻く種々のノイズが、私にはどうしても我慢できない。

しかし、それでもなお、私はナナシスを捨てきれなかった。あの猥雑な享楽を切り取ったHeaven's Raveに、悲壮な決意を描き出したMelody in the Pocketに、そして何より鮮烈なSeventh Havenに、俺は今なお魅了されている。

既に終わったことは、もう取り返しがつかない。10万円を課金し、4年の月日を費やしたあのアカウントは、もう戻ってこない。そしてそれでよい。私は、金も時間も嫌いだ。私が求めているのは、稲妻のような一瞬だけだ。朝4時にランニングをしながら、Heaven's Raveを聞く。叩きつけるような声が、誰もいない歩道に響くとき、私は確かに生きることを楽しんでいる。それでいいではないか?

以下の文章は、そのように、ナナシスを私の生活において切り結ぶ、くだらない話になるだろう。ナナシス世界の考察も、楽曲に秘められたメッセージも、キャラクターの言葉の真意も、もうどうでもよい。つまらなく素朴で下品な日常こそ、私が生きる場所だ。そしてそれのみが、今の私がナナシスとともにあることのできる場所なのだ。

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