用法容量を守ろうの会
○NG集
平「俺はフィリピン爆竹を使うぜ!
僕らはいつも以心伝心であった。だから誰がどの授業をとっていて、週の何曜日だとのこの時間は何をしているんだとか、おおよその情報は互いにつかんでいるのだ。つまりはこういうことだ。
「なぁ平、教室の扉から柲がこちらをじっと見つめているぞ。第7回春ちゃん協定で授業中のストーキングは禁止していたはずなんけど」
「春、今はセンソウ期間中だったのを忘れていたか」
柲のやり過ぎを防止するための協定がついには7回も更新されているとは驚いたが、重要なのはそこではなかった。僕たちの隠していた方の時間割を割られてしまっていると言うことだ。
今僕たちは普段の面子+数人でリアルロールプレイングゲームを行っていた。つまり大規模なごっこ遊びのようなものである。今回はセンソウと言うRRPGを行っている。
ルールは(比較的)簡単で、時間や距離等もろもろ無制限の鬼ごっこと言えるものであるあった。今柲が教室の前で陣取っているのもその一環であり、鬼である柲が僕もしくは春を狙って待ち伏せしているわけである。しかし、全く以て柲も甘いやつだ。
「春耳を貸せ」
もちろん大教室の中で行うコソコソ話が教室のドアの所まで届くわけは無いのだが、柲は重くはあっても馬鹿ではないので……いや、アホではないので……いやアホではある。しかし、自分の友人に頼んで僕たちを見かけたことや、会話してる内容を教えてもらったりすることは考えるだろう。だからこの行動は却って自然に見えることであろう。
僕は無防備に耳を傾ける春に若干の罪悪感を……いや、勝手に食べられたハーゲンダッツの恨みをぶつけるかのごとく、爆竹を鳴らした。もちろん、周辺被害ややりすぎてしまい春の鼓膜を傷つけてしまっても悪いので、火力はかなり抑え目である。
しかし、油断していた春にとっては、驚き、思わず叫んでしまうに十分な火力ではあったようだ。
「うおー!!!」
もちろん周囲から視線は集まる。教授の視線も集まる。柲の関心も集まる。
爆竹に火をつけた段階で既に机の下に潜り込んでいた僕は、その隙をつき教室の後ろ側つまり柲とは反対側に出るのであった。
すまんな春。君は犠牲になったのだ……長きにわたるセンソウの犠牲に……。
そうしてそもそも授業登録をしておらず、ダミーのために受けていた授業をフケて一目散に逃げ出すのであった。ちなみに春は騙され、ちゃんと授業登録をしているため逃げられないのである。つまりスケープゴートには最適であった。
そうして自由な時間を手に入れた僕は、センソウを有利に進めるためのアイテム探しに時間を当てる事にした。
このゲームの欠点の1つとして、単なる鬼ごっこだけにするとその期間中家にこもっていれば問題が大体解決するようになり、絵的に全く映えない、やってる側は大して楽しくない、鬼にとって地獄になるだけといった欠点があるのであった。それを解決するためにいくつかルールがあり、その1つが授業にはちゃんと出ることと言うものである。
そして仕組みもいくつかありその1つが、ゲーム内のイベントで手に入る宝の地図に記載されている与えられた謎を解いていくとセンソウを有利に進めることができるアイテムを手に入れることができるというものであった。早々に謎を解いた僕は、ほぼ確実に邪魔の入らないように鬼を餌に食いつかせたのであった。
そして僕は食堂へと向かった。
予想通り鬼は餌に張り付いているようで、追いかけてくる様子はなかった。安堵しつつも一直線に備え付けの自動販売機に行きその下をまさぐった。
この謎の答えは一見机の裏と回答できる内容であるのだがそれは罠であり、安易な答えに飛びつかずもう少しだけ粘って考えてみると実際の答えは自動販売機の下と気付けるような謎であった。
まぁ確かに、隠し場所を人が集まる食堂の机の裏にしてしまうと、偶然手や足がぶつかり関係ない他の人に見つかってしまう可能性はある。その点自動販売機の下であれば基本的には誰も手を入れない。しかも学生証(カード式)についている電子マネーがメジャーであるこの夕月大であればなおのこと、小銭を落としてたまたま手を入れてしまう、と言うシチュエーションもほぼ起こり得ない。
そうして探り始めて30秒、僕は疑問に思い始めた。明かに、無いぞ。
その時パシャリとカメラのシャッター音が聞こえた。
僕は悟った、はめられたと。
「平氏、策士策に溺れるとはこのことだもなぁ?」
そこにはアイテムが入っていたであろう封筒を掲げながらスマートフォンのカメラをこちらに向け、ドヤ顔をする>>1の姿があった。
熾烈な騙し合い、加熱を極める頭脳戦、僕たちのセンソウはその激しさを増ていきましていく。
僕らはどこで間違ったのであろうか。
するべき事は騙し合い、出し抜き合いなどではなく、互いに手を取り合い協力することではなかったのだろうか。疑心暗鬼になった結果僕はあれからずっと>>1の足を引っ張り続け、最終的にはトイレの時間すら安心できないところまで追い詰めてやったのだった。
そうして失点が嵩み>>1をダントツのビリに追い込み安心していた頃……。
「同列ビリは平と>>1です」
GMであった西夏が淡々と告げた。
僕は、上記の策略、もとい講義の妨害により多大なペナルティーを課され、そのまま沈没するのであった。
○登場人物
・平:骨くらいは拾ってくれ、と発言した結果罰ゲームは犬の着ぐるみを着て3回回ってワンと言いながら骨を拾いに行かされる羽目になった。
・春:何だかんだ許された
・柲:驚く春ちゃんカワイーヤッター
・平と春の後ろで授業を受けていた柲友人:驚く春ちゃんカワイーヤッター
・講義を中断させられた教授:驚く春ちゃんカワイーヤッター
・>>1:(アイテム)カードは拾った!すぐに落とした! 罰ゲームは傲慢のデブメニュー踏破
・逢:馬鹿共が醜い争いをしている間にカードを持っている方の馬鹿から数少ない存在価値をスる。これでも怪盗の弟子なの。
・西夏:お前ら普通に遊べよ
・大夏:(野球の)ボールは僕の友達!よっては法人格を認められているというわけで当該センソウにおいても参加権を有する。つまり俺が鬼になってもボールに鬼の権利を移しそのまま相手のゴール(頭)にシューッ 超エキサイティンで鬼こうた……あ、ダメっすか