気付いた後は鍋食って温泉浸かって帰った
NG集 〜今回の舞台がコタツだったら〜
全員楽単含め落単し落胆する
ある日のことだった。事務所に期末レポートを書いていた僕らは、
「おひょひょひょひょひょひょwww」
いきなり奇声をあげはじめた>>1の方に視線を向けるのであった。曰く、うるせーよと。
そんな視線の物理的圧力を感じたのか>>1はこちらを向いてごめんと謝った。ちょうどレポートが終わったのか、逢が>>1に声をかけた。
「どうしたの、あなたがそんな奇声をあげるなんて珍しいわね」
まるで普段から誰か奇声をあげているかのような言い方に聞こえたのは身に覚えがあるからか。今いるメンツであると、消去法で……なんだ、春のことか。1人納得した僕は8割型終わったレポートを保存して>>1の開いているタブレットPCにを覗き込んだ。これはゲームのプレイ動画かな。
「ふふふ」
何の内容か僕が理解できていないうちに、先に覗き込んでいた逢が笑い始めた。続いて、とっくのとうに集中力が切れていてネットサーフィンをするのに忙しかった春もつられて笑い始めた。いや、お前画面見てないやん。このまま、みんなで頑張ってレポートを完成させて、旅行に行こうこの会はうやむやのまま解散されることと思っていたが、そんな風のストリーム(主流な場の流れ)に負けない強い意志を持った西夏が意見した。
「今からみんなにガムテープの切れ端を渡します。雪国で鎌倉を作ったり、雪合戦をしたり、雪だるまを作ったり、スキーをしたり、おいしいもの食べたりお酒を飲んだり温泉に浸かったり……楽しい思いをしたいと考えるのであれば、そのガムテープをどこに貼り付けるべきかわかるよね?」
僕らは西夏の勢いに押され、自ら口元にガムテープを貼り付けた。一部の目元に貼り付けた馬鹿は
「いやー、レポートもしたいし、動画も見たい。でも片目がふさがってたら動画しか見れねぇなぁ! いやー、しょうがねぇなぁ! 俺もレポート片付けたいんだけどなぁ
!」
「そうかわかった、留守番はお前に任せた」
僕は西夏のご機嫌を取るために間髪入れずそう返した。馬鹿はほっといて僕らはレポートを仕上げ、単位を稼ぐべきなんだ。そのためには馬鹿の1人や2人踏み台にするべきだ。
「www www…… www www」
口元にガムテープを貼ってなお、器用に爆笑をつける位置は右手をあげた。それも高らかにだ。春のもう片方の目にガムテープを貼り付けている柲か>>1を指差し発言を許可した。
「モゴモゴ……ゴゴゴゴゴ……」
フムフムなるほど、どうやら一言目はガムテープを貼っていることを忘れて発言し、二言目はそれに気づいたが面白いのでそのまましゃべってみようとして失敗したと言うことだ。聞く価値が全くなかった。ちょうどいい、こいつも西夏のご機嫌取り使い、ボロ雑巾のようにしてやろう。そもそも、大学に通っていると言うのに、>>1は先輩である僕らから過去問や参考資料として僕らは書いたレポートを持っているからといって、テスト期間前に遊び呆けているため人間は、僕らのような意識の高い集団には不必要といえる。
僕は野郎の中でも比較的意識の高いといえる残り唯一の相棒である、大夏に視線を送った。
「ん?」
キュッキュッキュ。日頃から手入れをされたグローブを磨く良い音が鳴った。そんな大夏を見て、罪人扱いされた春は西夏の手からガムテープをひったくり、大夏の鼻にガムテープを巻き始めた。まるで見えているかのように動く春の手からガムテープを受け取ると、僕は大夏の目にガムテープを貼り付け始めた。>>1は大家の口にトクぺを突っ込みガムテープで固定した。
まるで海で溺れてしまっているかのようにもがき始めた大夏を尻目に、僕らは自分たちのガムテープはがし始めた。
「で、>>1は一体何の動画を見ているんだ」
西夏は大夏に巻きつけられたガムテープを剥がすのに必死になっているため、この会はやはり解散されると僕は予測し、>>1に再度会話のボールを放った。
「いいいいいいやっふ」
やっぱりムカついたので>>1の口に再度ガムテープを貼り付けた。僕は逢に目線を投げかける。
「有名な某赤帽子の人がものすごい勢いで後ろに飛んでいくの。カクカク動いたかと思ったらいきなり動き始めるのよ」
再度動画をよく見た僕は気づいた。これはケツワープ、そしてこれはRTA動画だ。世界的に有名な配管工のおっさん様が、プレイヤーの最速クリアに全てをかけた操作により、シュールがギャグとしては通用し得る動きをしているのであった。
僕がそんな人生全く役に立たないだろう動画を見ている後ろで、1人の馬鹿が不吉な反応を示す。
「ケツワープ、RTA 、レポート、……は、これはもしや!」
春がこうなるとろくでもないことをになると知っている皆が春をガムテープでぐるぐる巻きにした。
しかしだ、旅行と言う言葉に僕も少しぴんときた。旅行するには資金が必要で、資金繰りをするために僕らは働かなくてならない。そこで僕らは未だに寄せられる小さな事件をいくつか解決しようと考えていた。つまりは……。
「みんなよく聞いてくれ」
僕はみんなを見回してこう言った。
「事件解決RTAの始まりだ」
……思えばこの時運命は別れたのだろう。僕らは本筋である旅行を楽しむと言うことをすっかりと忘れ、ただひたすら効率的に事件を解決する機械に、一時的にとはいえ成り下がってしまったのだった。僕たちがその間違いに気づいたのは、軍隊ばりに効率的な雪合戦を繰り広げ優勝した後のことだった。
○登場人物
平:この後メチャクチャガムテープでミイラ取りisミイラった
春:何故見えないはずなのに見えてるかのように動けるかって? 気合だぜ!
大夏:キュッキュッキュ 実はグランドスラム事件の際もキュッキュッしてた
>>1:実は課題は授業中に片付ける派。ダクトテープ持ってたけど流石に弁えた
柲:春ちゃんのフォローはまかせろー
逢:笑いのツボが点在している上深いので、どこでツボにハマるか分からない人。今回は旅行の移動中ずっとRTA動画を垂れ流しにしていた。もちろん酔った
西夏:委員長気質なのでRTA期間中は内心一番ノリノリだった