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ゆーづきしの2²  作者: NiR_aSaKi
3/8

3:ジムに行った平「ポケットを叩いても靴下は増えないんだよ!!」

「「何を言ってるんだ(ですか)、お前は(お兄様)?」」


 場所はくるとん(ファミレスメイド喫茶)、悲しみを背負った僕に共感を示すこともできないサイコパスは、大夏と琴子の二人だ。高校野球なんてマゾスポーツをトップレベルで打ち込んだ大夏は、新興宗教フランチャイズの教主にぴったりだろう、ちょうどレポート明けで目も虚ろだし。でも。


「琴子がそんなに薄情だなんて思わなかったよ。これからパフェを3つも頼むお客様には、サービスで共感くらい示してもいいんだよ?」

「ご注文を繰り返します、チョコ乱馬3つですね?すぐお持ちします」

「調子に乗ってすいませんでしたッ!!」


 僕は躊躇わなかった。春ならともかく、僕ら程度のデブ=“楽しみと関係無しに大食いを行う人種”ではこの店の裏メニュー、夕月市が誇る五大デブメニューの一つを食し切ることはできない。普通のパフェ部分は何とかいけるのだが、気が違ったようなあのチョコ量はどうにもならない。某ラーメン?みたいに器から溢れているのでは無く、器やスプーン、コップすらチョコで提供されるのだ。


 そんな準備するのも大変そうなメニューを躊躇なく3つ胃に叩き込もうとする悪女は、この店のマスター(男性:娘を溺愛)の娘でもあり、看板娘でもある久瑠宮くるみや 琴子ことこ、この店内で彼女相手に調子に乗ることは死を意味する。


「でも、聞いてくれよ。今日ジムに行ったんだけどさ、いざ着替えようと更衣室行ったら運動用の靴下片方しか持ってきてなかったんだ。で、近所ではあるけどわざわざ家に帰るのも嫌だし、どうにかしようと隣のショッピングモールに行ったんだけどそこにも無いんだ」

「だからビスケット感覚で増える可能性にドルオタの命を懸け、ポケットに入れて叩いた、と?」

「流石>>1、その通りだよ!」

「流石、じゃねえよ」

「可哀想に、糖分が足りないようですね」


 今くるとんに来たばかりなのに僕の考えを察してくれた>>1とは違い、最初から居たにも関わらず察することのできない二人が可哀想で仕方がない。ってちょ、琴子ちゃん物騒なこと言って戻らないで、せめて正しいメニューを復唱してから戻って!!


「おう>>1、レポート終わったのか?」

「うん、もれでもできる簡単な奴で助かった。やっぱちゃんと勉強するのは疲れるよ」

「あれ、春は? 僕は>>1と一緒に課題片づけてから来るって聞いたけど」

「ああ、春氏は『新しい指標を作れってムリがあるだろ!?』って悲鳴をあげてたお」

「え、今回のレポートって“授業で出たい指標について考えてこい”……つまり指標についての考察をレポートとして書いて来いって内容じゃなかったっけ」


 僕と大夏は揃って首を捻る。


「そういう内容だったの? 春氏は『指標について考える……なるほど、指標を新しく考えて来いってことだな!!』って張り切ってたよ、初めの30分は。もれは一年だから、二年ってすごいなーって思ってたけど」

「日本語って難しいな」

「だな」


 僕と大夏は揃って意思疎通における言語の難しさに納得した。


「そういえば、さっきから聞こうと思ってたんだが、>>1はなんでスーツ姿なんだ?」

 如何にも安物な青いスーツを着た>>1が大夏に答えを返す。

「それはね、もれがいつも着てる服にダイエットコーラをぶちまけちゃって着るものが無くなったからだお」

「いや、でも他の服くらいあるんじゃ……」

「服を買いに行く服がないんだお」

「「…………………………」」


 >>1の言葉に小中学校での校長先生の長話を聞き流すため、欠伸を噛み締めた時くらい全僕らが涙した。


「それだったらパフェ食い終わったら服買いに行こうぜ。高等遊民なんだから金には事欠かさないだろ。別に太ってるわけじゃないんだから、白シャツと黒いスキニージーンズ着とけばなんとかなるだろ」

「もれはブランドという名のオサレ野郎どもにお金を貢ぐ気はないお」

「大丈夫、基本さえ押さえればユニ村や無地クロでもいけるから」

「お待たせしましたお兄様とご主人様方、いつものパフェです」


 その時琴子ちゃんがパフェを持って戻ってきた。甘党の>>1にはホイップクリームとキャラメルソースがたっぷりかかったキャラメルパフェ、対照的に大夏のはちょっと苦めのココアパウダーーとコーヒーゼリーが特徴的な珈琲パフェ。


「で、僕には何時もの苺パf……」

「ちょうど苺が切れてしまったので代用のチョコ乱馬ですわ、お兄様」

「琴子ちゃん、お兄ちゃんちょっとその無茶振りには応えられないかな」

 去年一年間は失踪した名探偵の代わりに二代目と偽る無茶振りに応えきった僕ですら、この無茶振りは物理的に応えられる自信はなかった。

「この後春ちゃんがいらっしゃるのではないですか?」

「ああ、そういえば奴はデブだったな」

「ええ、夕月市五大デブメニューを唯一制覇した春ちゃんとなら余裕ではないかと」


 そういうことなら、まあいいか。半分も食べ切れる自信が無かったから頼まなかったが、このパフェには前々から興味があったんだ。

 僕は届いた3つのパフェを写真で撮り、春に


『レポート上がりのパフェうめぇ~。あ、春さんまだレポート中っすか? さーせんwww』


とウィスプする>>1を尻目に話を再開しようとする、が。


『りょーりサークルの帰りの柲と逢と西夏に、サークルで作ったの貰ったから今日はぱふぇはいーや』


 とドヤ顔で料理に頬張る春のウィスプを見て僕は言葉を無くすことになった。


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