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我らセイド会!  作者: 陽田城寺
元生徒会長にして現生徒会書記・百合の伝道師にして愛の戦士・冷泉百合
18/28

冷泉百合と等木精華の出会いとセイド会の発端・後編

「昔の距離感って微妙っすね」

 男の後輩がそう尋ねた。

「あなた達みたいに一目惚れじゃないもの。他と一線を画す出会いだったとは思うけどね」

 初対面の時は、女性にして男性にも引けを取らない強気な雰囲気などに、私は凄いと思った。けどその精神力とも言うべき方に私は惹かれていたのかもしれない。

 人類、性別も問わず一人の人間として付き合うという思想。

 私にはできないと思ったし、そもそもそんなことできる人はそうそういない。

「さて、ここからはしばらくの間、私とお姉様に関わりはないんだけど……」

「むしろそこからどうやって今みたいになったんだ?」

「そうね、中間テストで私がクラス一位になって、次の期末テストの頃だったかしら。あの頃はそろそろお姉様も前のような姿になって……」



 正梵高校は定期テストの点数が名前とともに張り出される。といっても各学年トップ二十まで、あくまで高みを目指すためのものと言われている。

「やあ百合、前回のテストは見事だったな」

「あら、等木さん。そういうあなたも、前回は総合七位だったかしら? 一緒にがんばりましょう」

 私の周りには数人の女生徒が居て、多少怪訝な目つきで前の等木さんを見ている。

 等木さんは前回は金髪で、更に坊主になったけど、今はおかっぱより少し長いくらいの綺麗な黒いショートで、前よりも少し幼い雰囲気があるけれどやっぱり綺麗な女性だった。

「冷泉さん、この人って……」

「ええ、いろんな噂がある人ね。でも悪い人じゃないのよ?」

 それでもその人は怪訝な目つきを辞めなかった。

「ああ、いかんな、いかんいかん。噂で聞いただけで実際のその人に触れずに決めつけるのはいかんぞ? そういった偏見が差別を生む、肝に銘じたまえ、深道清乃(ふかみちきよの)

 さらりと名前を答えて、ふっと笑って等木さんは横切って行った。

「……個性的な人でしょ?」

「変人じゃないですかね?」

 清乃はあっさり答えた。

 まあ、彼女が自分で会って話してそう言う分には、等木さんも満足なんだろう。


その日の放課後、生徒会室に等木さんが来ていた。

「性差別、性問題、同一化推進会、でどうだ!!」

「いいぞ等木! これで決まりだ!! いいかな、倉敷(くらしき)!?」

 生徒会長は権田先生と等木さんの高いテンションに困りながら、けれど嫌々といった様子で認めた。

「部員も、まあ二人になっているみたいですし、内容も顧問もありますし……認めなくもないですけど」

「どうしてそんな微妙な反応なんだ、生徒会長!!」

 等木さんが暑苦しく語ると、会長は言う。

「この内容じゃ、公式の部室が用意できませんよ? 空いている部屋もあるにはあるんですが、ちょっとね」

 自由が校風の正梵高校は、一人で同好会を作ることができるし、部室も自由に設定できる。

 そのために多くの同好会がある中、同好会の一つに貴重な部屋を明け渡すと色々なところから批判が来る。

 学校としても功績を残している部活の荷物置き部屋として使った方がいい、なんて声もあるくらいだし。

 そんな事情を知ってか知らずか、等木さんは苦々しそうに頷いた。

「……まあ、よかろう。知り合いを外に待たせているから、今回はこれでいいか」

 不満げだけど等木さんはそこから出て行こうとした。

「あ、ちょっと等木さん、一つ聞いていいかしら?」

「む、なんだ、百合?」

「あなたの話だと、実際に会って話して、それでも相容れなかったらどうするの?」

 昼間に思ったことを愚直にぶつけてみると、彼女はふっと笑った。

「私とともに来れば、ともに話し合えるぞ?」

 試すような視線に、胸が高鳴る。

「べ、別にそこまで聞きたいわけじゃ……今、あなたの率直な意見を聞かせて」

 人類平等を唱えていたけれど、平和とまでは言っていない。

 彼女がどう考えているのか、それを聞きたかった。

「構わないさ。自分の正直に生きて、それで好かれようとも嫌われようとも構わない」

 不敵に笑う顔は、私にはどこか妖しく見えた。

「……変なの」

「はっはっは!! 変か変じゃないか、常識から外れているかどうか、そんなものはその人が生きて積み上げたちっぽけな価値観に過ぎない! 理解しようと試みずとも、少しその人について考えてあげるだけで充分さ。私も、もう少し君に私のことを考えてほしいよ」

 私の中のほのかな気持ちに、この人は気付いてそう言っているのかと思うほどに、ますます胸が高鳴った。

 等木さんは出て行った。待たせている人、というのはこの部員名簿に書かれている屯田剛毅とかいう噂のキモイ男だろう。

 等木さんの真面目な態度でありながら奇人であることに、そんな人くらいしか付き合いがないことを惨めに思いつつ、なぜそんなキモ男が等木さんと仲良くできるのか、という男への憎しみなんていう背反する感情が私を包んだ。



 家で一人、リボンを付けたピンクのクマのぬいぐるみを抱いてベッドで寝転がった。

 私の部屋は家の大きさに比べてそれほど大きくない。

 机とベッドとピアノと、タンスや電話もあるけれど、特に一人で過ごす時に何かを使うということはない。

 ただベッドで寝るだけの部屋のようなものだ、けれど今はそれも落ち着かない。

 等木さんは、人類誰もが誰もと等しく付き合うべきだと言う。

 国籍も人種も学年も、何より性別も。

 それは果たして恋愛も同じだろうか。

 子供もできないのに、向こうがこっちを好きになってくれるかも分からないのに、それでもそんな風な付き合い方をするのだろうか。

 私には分からない、あの人はどんな回答をするのだろうか。

 会いたい、話し合いたい。

 彼女に会いたい。



 期末テストが終わり、返却も始まる。

 しばらくしてみんなの成績が出る、その時にはもう夏休みが目前だった。

 私は学校では盤石の地位を築いていたけれど、心は満たされていない。

 廊下でバッタリ会うのを期待して、いちいち廊下に出るのも、我ながら情けないと思いながら、私はそれに期待して学年の成績順位をじっと見つめていた。

「冷泉さん、そんなに何を確認しているんですか?」

「あ、いや、他の人が前回と比べてどう推移したか気になって」

 私は変わっていないけれど、上位はやっぱりいくらか変化している。

 等木さんは七位から五位にまで上っていた。

「君は一体、普段どれくらい勉強しているんだ? 生徒会は忙しくないのか?」

 後ろから、突然聞きたかった声が響いた。

「ひ、等木さん!」

「驚かせてしまったか、すまない。だが元気そうで何よりだ。セイド会ができてからというもの、生徒会室に行くことはなくなったからな」

 伸びてきた髪も合わせて、もう等木さんは大人びた美しい女性にしか見えない。

「あの、話があるんだけど、あ、その……」

 周りの目を気にして、言えるわけがない悩みのことを考えた。

「それなら私の教室に放課後来てくれ。一応はそこで活動しているからな。人もいないから話しやすいだろうし、何より私は今、少し忙しい」

 等木さんは、ぽんと私の肩を叩いて去って行った。

「何かのお話があるんですか?」

「え、ええ。たまに喋る仲だから」

「へー、意外ですね。等木さんって変な人ってイメージがあるから。でも冷泉さんと仲が良いなら、それほど悪い人じゃないんでしょうね」

 そう、みんなは温かく笑った。

 それをあの人はどういう反応をするんだろう。

 私には分かる気がする。何の根拠もない、付き合う人だけで判断されて、等木さんは怒るんだ、『別に百合と仲が良いからと言って私が良い人とは限らまい』なんて言って。

 自分を不利にして、変な人と言われて、それでも構わないと、そう言えるのだろう。


 放課後、その教室に荷物を置く人はたくさんいたみたいだけれど、等木さんと屯田しかいなかった。

「あ、えっと……」

 勝手に入ることに少し抵抗を覚えていると、等木さんがすらすら説明した。

「屯田剛毅だ。我がセイド会の部員で副部長をしている。ああ、話しづらいなら別に帰らせるが」

「ちょっ! テラヒドス! じゃあ小生はココラ・デ・ショコラしておこうかな」

 本当にこんなゴミみたいな奴が等木さんと一緒にいるのはどうしてなんだろうか。

 デカイ図体を揺らしながら屯田が出て行くのを二人で見守る間、等木さんは適当な椅子に座った。

 そして、その隣の席をぽんと叩く。

「じゃあ、話そうか。剛毅を帰らせたんだ、それなりの話だと期待するぞ?」

 期待に輝く顔は、私に別な想像もさせる。

「え、と、あの、等木さん……」

「うむ、遠慮はいらないし、言いにくいならいくらでも待つ。君がどんな人間でも、その思想には一定の理解を示すつもりだ」

 ――そうだ、今更等木さんがどんな人を嫌がるというのか。

 屯田にだって普通に付き合っているんだ、オタクで一人の屯田だって。

 だったら、だったら私がどんなでも――

「等木さん、実は、私は……その、ね」

 彼女はまっすぐ、私ではなく黒板の方を見ていた。

 私を見ていたら緊張で言えなかったと思う、彼女の勇ましい横顔に、思いをはせるように、私は告白した。

「私は……私は、男性に魅力を感じないの」

「ふむ、男性が嫌いなのか」

「ええ、皆が格好良いという人を見ても何も感じないし……いえ、何も感じないというよりも、嫌悪感のようなものを感じる」

「それは誰でもか? 逆に剛毅のようなアブノーマルな……」

「あんなものはゴミよ! 消えてほしい……」

「そ、それはちょっと言い過ぎだと思うが……ふむ、男性の魅力が普通よりも半減している、と言ったところか」

「……うん。全員、男ってだけでマイナスって感じがするの」

 あまりに周りの評価が高ければ高いほど、嫌悪が増すような気もする。それは、女性の目を集める男性が憎いからかもしれない。

「ふーむ、男性が嫌いか。女性はどうだ? 友達以上の感覚などを持ったりは……」

「そう! それなの! のほほんと穏やかで安心感のある会長とかちょっと厳しくてけれど優しい清乃とか、強い心をもって格好良い等木さんとか、他の人よりも凄くいいなって思って……あっ、いえ、その……」

 暴走気味でとんでもないことまで口走ってしまったけれど、等木さんは表情一つ変えていない。

「それは、他の女子と比べてどうなんだ? 普通の人でも、私でも会長の穏やかな空気をよく感じるし凄い人だと思う。別に過剰な愛かどうかは分かるまい」

「え、っと、確かに、他人にそんなことを話したことはないけれど」

「もしかしたら男性に嫌悪するだけの性質かもしれないな。それか、男性に嫌悪しつつ女性が好きな性質。百合は自分がどっちだと思う?」

「女性が好きなんです!!」

 再び告白するように、私は確信を持って言った。

 だって、こんなにもこの人のことが気になるんだもの。

「ふむ、そうか。女性が好きなんだな。分かった。それで問題は何かあるか?」

「え?」

「見たところ男性が嫌いだけれど、人付き合いは普通にできている。女性が好きで親しくできている、嫌なことはなんだ?」

 今の状況で嫌なことはなにか。

 自分の心の中で反復してみて、色々考えてみて、するとやっぱり現実的な問題がでてきた。

「私が女性だから、やっぱり男の人と付き合って結婚しなくちゃならないから。他の人と、あの人は格好いいね、っていう話をするのも少し辛い」

「ふむ。後者は考えようだな。正直な感想ばかり言うと友達を失うことになるわけだからな。だが前者はどうか? 別に男と結婚せずとも、他の女性と一緒に暮らせば……」

「私は冷泉家の長女よ!? 他の家の人と結婚させられるに決まっている……儀礼的なものだけど、それをしないと駄目な家なのよ」

 幼い頃から婚約者はいないけれど、あの家と結びつく、とかいう話は聞かされてきた。

 もう決まったこと、そして父の言葉には逆らえないこと、男と結びつく他ないのだ。

 等木さんは体をこっちに向けたけど、顎に手を当ててすっかり考え込んでいる。

「父親を説得するか、家を出るか、結婚は受け入れてその相手に事情を説明するか……、方法は様々あると思うが、現状での解決は難しそうだな」

「お父様にそんなことを言ったら、きっと軟禁されるわ。そうしたら、もう二度と……」

「百合、しばらくは今まで通り隠して生きるのが手段かもしれない。私に力がないから……」

「そんな! 等木さんのせいじゃないわ! でも、隠れて生きるのは……」

 結局は今まで通り、ということになってしまう。

 辛いのを我慢して、周りに嘘を吐いて、嫌な男にこびへつらって生きていく。

「そんなことはない!!」

 泣きそうな私に、等木さんは強く言った。

「確かにしばらくは本心を隠して生きるのが手段だと言った! だが隠れるわけじゃない。その意見を、バレない程度に伝えていくんだ!」

「そ、それってどういう……」

「どうして、君の想いが無碍にされなければならないんだ? 好きなものを好きだと言うことは罪じゃない、愛する人と一緒になれないなんて、ロメオとジュリエッタの時代で充分だ。考えてもみたまえ、この時代のこの国で、どうして好きな人同士で結ばれないなんてことがあるか?」

 確かに、結婚差別なんて自分には関係ないと思っていた。でも女性同士なんて……。

「性別なんて関係ない。その想いをもっと広めるんだ。そして世間が少しでも変わっていけば、きっとお父さんも君の想いを認めてくれるはずだ。いや世間が変わらなくても、きっと君が変われば……」

「ひ、等木さん!」

「なんだ?」

 本当にそんなことができるのだろうか。

 女性が女性と付き合える国なんて、できるのだろうか。

「……等木さんの考えは、確かに、私は嬉しい。今まで自分が変な人なんだって思ってたから、それを認めてもらえただけでも充分。でも、やっぱり無理よ。そんなの」

 彼女の言うことは、所詮は理想論。

 この人のことは好き。考え方も私のことを無理に理解しようとせず、けれど聞いてくれて、一緒に悩んでくれる。

 でも彼女は理想家、夢見がちな子供みたいなもの。

 言っていることに説得力を感じない。

「無理か。何故そう思う?」

「結婚っていうのは子供のためのものでしょ? 子供がつくれない女性同士で結婚の意味なんて……」

「違うな。結婚は役割分担だ。働く女性と家庭を守る女性がいれば結婚はできるだろう?」

「働く女性なんて……」

「社会は女性に働けというぞ? その考え方はむしろ、君が考える社会に反するものだが」

 確かにその通りだ、と反論に困ると、等木さんは別の話をした。

「同性愛は確かに危険ではある。同性愛カップルというだけで襲われる国もあるからな。だが、結婚自体は多くの先進国で認められている。何故日本では認めないのか?」

「そ、そんなの知らないわ。襲われる国があるって言うのなら、禁止した方が安全じゃない?」

「宗教でも同性愛は罰せられるからな。だが、それは別の先進国の話だ」

 等木さんの話は、私を一定の方向に導こうとしているものだった。

「同性愛にあたりの激しい外国が同性婚を認めているのに、外国と比べて事件の少ないこの国がどうして同性婚を認めないんだ?」

 そう言われると、確かに……おかしいとは思うけど、認めるべき、なんて思ってしまう。

「まぁ、同性婚のあたりが激しすぎるからこそ、事件になるほど表でいちゃつく人がいないとか、同性愛者の数に差があるなど理由はあるだろうが……」

「そ、そういう理由があるんじゃない! 何よ、もう……」

「それは事件が少ない理由にはなるが、同性婚を認めない理由にはならないよ、百合」

 名前を呼ばれる度に、何故かドキリと胸が高鳴る。

「ん、もう……」

「他にも死刑は先進国ではこの国くらいでしかしていない。何故他の国ではしないのに、この国ではすると思う?」

「そんなのになると、本当に分からないわ。殺さないと満足できないんじゃない?」

「それはおかしいな、直すべきだ」

「……それと同性婚こそ、関係ないわよね?」

「はは、一本取られたか」

 意外と、人を食ったようなジョークも言うみたいだ。

「そ、それで等木さんは結局何が言いたいの?」

 いろんな話をされて、少し混乱してきた。

 等木さんは再び前の黒板の方を、穏やかな目で見つめて言った。

「結論を言うと、君には何も恐れず、正直な気持ちでいて欲しい。隠し事はしたっていいし、言う必要のないことは黙っておけばいい。けれど、苦しいことがあったら、私にだけは素直に言って欲しい」

 まっすぐ瞳を向けられて、私がつい目を逸らしてしまう。

「あ、あなたにだけ……?」

「ああ、君が信頼できるのは私だけでは……」

 そんな言葉の途中で、私は行動に出た。

 等木さんの顔を掴んで、そっと唇を重ねた。

 緊張して目を閉じたけど、顔を離してすぐにその顔を見た。

 少しだけ赤くなって、けれど驚きで目を普段より大きくした等木さんの顔は、やっぱり乙女のものだった。

「……あの、いや、でしたか?」

 やってから言うのもなんだけど、聞かずにはいられなかった。

 等木さんも少し照れた風に、とぎれとぎれの言葉を発した。

「嫌、というわけではないんだが、なんというか、別に、私は女性が好きなわけではないぞ? 男性が好きとも言わんが……驚いたよ」

「ええぇっ!? 女性が好きじゃなかったんですか!? それじゃなんで……」

 てっきり勘違いだってするというか、確かに非常識な行動だと思っていたけれど私は想い合っていると思ったからこそそういった行動に出たというか……。

「人類の平等のためだ。だから特別嫌なわけではないから安心してくれ。それに君は綺麗だからな」

 綺麗、と言われてまたドキドキしてきた。強引なことをして出た少しの罪悪感も、それで和らぐ。

「それだけの行動ができるのなら、心配はいらないかな? また悩みができたり、相談事があればいつでも言ってくれ。相談に乗る」

「……うん。またお願いします」

 その後も私はしばしばセイド会に訪れるようになり、二学期の全てのテストが終わった頃に確か入部して、今に至る。



「思えば、あの時からだんだんお姉様と親しくなっていったのよね……」

「で、どの段階で今のお前みたいな横暴で理不尽な性格に変わるんだ?」

 今の話を聞いている限りでは、百合ではなく別の女生徒が会長に相談して先走っちゃったちょっと恥ずかしい話である。

「横暴で理不尽な性格? 私が? 何言ってんの? 部活以外では全然普通よ」

「ここでは駄目だって自覚してるんじゃねえか……」

 と、そこで扉が開き、会長が顔を出した。

「やあ、百合と礼貴か。どんな話をしていたんだ?」

「私とお姉様の馴れ初めですぅ、うふふっ!」

 心底楽しそうな百合に対して、会長は表情を曇らせた。

「私は、時々自分の考えと行動が正しかったのかどうか、百合を見ると迷うのだ……」

 純真な百合が、今ではこんな風に……って感じだろう。そりゃ悩む。

 けれど百合だけは本当に楽しそうな笑顔で、その顔だけを見ると、不思議と心が安らぐ。

「間違いありませんよっ! 私は、お姉様に出会えて本当に幸せです!!」

 そんな風に笑顔を向けられたら、会長もそれ以上顔を曇らせることはなかった。


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