第二嫁 誘惑地獄 その一
買い物を終え、帰宅する途中に一人の少年のような少女がいた。特に髪が短いわけではないが、元気いっぱいといった感じの面構えをしている。
しかし体つきはというと、相反してとてもエロス。もといナイスプロポーション。
セクシーというにはまだまだ幼いが、将来の見込みあり。
艶やかなセミロングのブロンドヘアは、やわらかなウエーブがかかっていてしっかりと手入れがされているのがわかる。
そして肌はとても白く、積もったばかりの粉雪のようにきめ細かい。
その肌を傷つけない材質の服はシルクなのだろうか、柔らかそうだが体のラインがよくわかる。かなり名のある家の娘だろう。
そんなことを考えていたらこちらに向かってくる。じろじろ見ていたせいで変質者かと思われたかもしれない。
まずい、逃げるか?
いやいや、ここで逃げたら余計に怪しまれる。成り行きに任せよう。
「ねえねえ、おにいさんっ」
「う、うん? どうしたのかな」
思いにもよらず、普通に声をかけられ挙動不審になってしまった。どうやら頭の中を覗かれていたわけではなかったらしい。そんな魔法があったら欲しいが。
「この辺にさ、ルゥ・コーゲンの家があるらしいんだけど、知らない?」
何故この少女はルゥの家を知っているのだろう。嫌な予感しか浮かばない。
「ルゥの家ねぇ……きみはルゥの関係者なのかな?」
「うん、あたしはルゥの奥さんで、トルテティアっていうんだよ!」
予想はしていたさ。ああそういう返答がくると思っていたよ。
「あ、あはははは……」
もはや何も言えない。ただあまりの状況に、笑うしかない。
「でさー、どうなの? 知らないの?」
少女は少し苛立ったような口調で、問いかけてくる。
「ええーっと、一応僕がルゥなんだけど……」
もうヤケだ。どうにでもなれ。
とはいうものの、この子は我が強そうだから、他にも妻がいるなんて知ったらえらい剣幕で怒られそうだ。
「え、まじ? 気味の悪いじいさんだったらどうしようかと思ってたのに、なかなかかわいい顔してるじゃん。あたしの旦那様って感じだね」
キミに合わせてこんな容姿になったわけではないが、そう言われると気分は悪くない。だけどこの後どういう目に合わされるのか、気が気ではない。
「こんなところで話すのもなんだし、うちに行こうか」
「はぁーいっ」
戻るまでに覚悟を済ませておかないと。




