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第一嫁 天使地獄 その三

「おはようございます、ルゥ様」

 朝起きて、用を足した後にキッチンへ向かったら、知らない少女が声をかけてきた。

 ん? ああ、そうだった、今は僕がルゥで、彼女はその妻なんだ。まだ寝ぼけていて、僕が誰なのか一瞬わからなかった。

「おはよう、リルミム。いい匂いがするけど、朝食ができてるのか?」

「え、ええ。あの、その……ハムエッグくらいしか用意できませんでしたが」

 リルミムが持っている皿には、焼いたパンの上に、ハムエッグが乗っていた。

「料理なんて後々覚えればいいよ。それにハムエッグは普段から食べているから、全然問題は無いよ」

 一口くわえ込む。

 蒸し焼いた目玉焼きは、ほどよく熱が入りとろみのある黄身がゆっくりと垂れた。

 塩コショウも最初多いかなと思ったが、黄身によってまろやかになり、丁度よかった。

 よく作っていたんだろうな。この完成度は高い。

「ごちそうさま。火加減も丁度よくてうまかったよ」

「よかった……。それで、朝食の後はお時間ありますでしょうか」

「ん、なんで?」

 そう聞き返そうとした矢先、リルミムが胸のボタンへ手をかけた。ちょ、そんな朝っぱらから……。この子、想像以上に大胆だ。

 頬を赤らめ、潤んだ瞳で視線をそらしている姿を見たら、息子、もといビッグボスが稲妻のように血管を浮き出しているのを、見えなくても感じられる。このままでは理性が保てない。

「あ、ああ、えっと……そ、そうだ。仕事が立て込んでいるから処理しないと……」

「大変なお仕事なんですね。でも、あまり無理なさいませんように」

「ありがとう。リルミムは自由にしていていいからね」

 クソ、チクショウ!

「あの、それならば私にも仕事を頂けないでしょうか」

 何もせずにじっとしているのも退屈で辛いか。かといって作戦上、仕事の手伝いをさせるわけにはいかない。

 それならば、僕が今までやっていたことを代わりにやってもらうのはどうだろう。食事を作ってもらっていることだし、掃除や洗濯もやってもらえると助かる。

「じゃあ家事を頼めるかな」

「はいっ。任せてください!」

 元気よく返事をし、ぱたぱたと小走りで去って行った。

 僕も仕事にとりかかるかな。

 とはいえ、別に急いでしなくてはいけない仕事なんて無い。

 結局昨日は町へも行けず、研究するための書物も仕入れられなかったし。

 それに今日は手紙が遅れているらしく、まだ何もすることがない。

 やることやること……っと、そうだ、手紙を整理しなくては。

 どういう感じで整理しようかな。今までやったことなかったから、うまくできない。

 やはり名前順だろうか。それと、受けたかどうかでもわかよう。

 えーっと、これはこっちで、あれは……。

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