余談 魔王
僕の時代では魔王なんて滅んでいて、考えることすらアホらしいと言われている。
だけど現実的に魔王は現れた。何故だろうか。
大昔、世界には六体の魔王がいた。人々は戦い、たくさんの犠牲を出しなんとか封印することができたんだ。
しかし封印は所詮封印。長い年月の果てに朽ちてしまった。
そこでまた再び暴れる魔王たち。今度こそ駄目かと思ったときに現れたのが、空間を支配する神マレッカ。
神は空間ごと魔王を砕いた。それこそ魂ごと。二度と復活できないように。
人々は神マレッカを讃えた。我々を救う究極の神だと。
しかし時の経過でそれは薄れ、魔王共々神を忘れかけていた。
もう神を信じる時代ではない。そうして街の中心にある神殿を邪魔とし破壊することになる。
マレッカは憤慨した。助けてやった恩を忘れた人間に対して。
そうしてマレッカは再び光臨した。……魔王として。
だけどそのマレッカももういない。自らの魂までも破壊し、自滅させられたから。
とするとえんりは一体どういうことだという話になる。
魔王の生まれ変わりとするならば、その魔王の魂が必要になるはずだ。
でもそれがないというのに、先日のあれはあきらかに人間の所業ではない。
ここで一つ、考えにくい結論が出た。
──えんりは、人造魔王なんだ。
どうやったらそんなものができるのかはさておき、こうやって実際にいるんだから否定はできない。
僕は彼女の支えになることができるのだろうか……。




