日常
「あははははは〜」
大樹はリビングのソファーでテレビを見ながら大爆笑した。
「あはははっ、この芸人本当におもしろいわね。」
大樹の横でジェニーも笑った。
ジェニーの左手にはビックサイズのポテトチップの袋。
ボリボリとおいしそうに食べては笑い、ときどき大樹も袋に手を伸ばしながらは笑い。
見た目は全く違うが、似たもの同士の二人だ。
「ただいま〜」
桜が帰宅した。
「おかえり、桜。」
ジェニーは真ん丸顔を桜に向けた。
「今日も誰も聞いてくれないヘタクソな歌一生懸命歌ってきたか?」
大樹が意地悪な顔を桜に向けた。
「あのねぇ、あたしはあんたと違うの!もう大変よ。人がわんさか集まっちゃって。」
「またまたぁ、見栄張っちゃって。」
「み、見栄なんかじゃないわよ!ってかあんたこそシケた顔して歌ってたじゃない。今日駅前で見たわよ。人が立ち止まるどころか、クスクス笑われちゃって。片割れとして情けないわぁ。」
「なっ!」
ジェニーは二人の喧嘩を呆れた顔で眺めていた。
「そんなことより大樹、あたしのニット勝手に着ないでよ!男のくせに女物着るなんて気持ち悪〜い。」
「はっ?ニットなんて着てないよ!帽子は拝借させてもらったけど…」
ん?という感じで二人は顔を見合わせた。
二人の後ろでジェニーは気まずい顔をして立っていた。
二人はギロっとジェニーを見た。
「あまりにもかわいいニットだったから、ついね。
いいじゃな〜い!一回借りただけなんだから、許して!サ・ク・ラちゃん。」
「許せな〜い!一回だろうが何だろうが、伸びちゃうじゃない!ブカブカになっちゃうじゃない!ご飯食べた後にお菓子やアイスガツガツ食べて、もういい加減太るのやめて!」
「まぁ、ヒドイ。確かに私はおデブちゃんだけど、かろうじて桜のかわいいタイツだって履けたわよ!デンセンしちゃったけど…」
「あ、あのカラータイツ…ないと思ったら…あれも…
お母さんのバカぁぁぁ!!」
『あたりまえ過ぎて 僕には気付けなかったもの』