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「ユージスは、全部俺より優れているんだ。術も剣もあいつの方が、遙かに上なんだ」
「そうか」
なんて言ったら良いか分からずに、短く返す。
ここでいやお前も、充分ずごい。なんて言っても意味がない気がする、ジルベールの中では、従兄が上で自分が下という図式が出来上がっているのだろう。
それにあいつが、凄いのは短い関わりでも分かった。気づかぬうちに術を構築して見せた。それにまだ存在を自己主張している氷の蔦は、まるで装飾のように華奢だというのに驚くほどの強度がある。これだけでも凄いのだとは、理解できる。
「でも故郷だと術に関して重きをおく傾向があって、二つ適性があるってだけで凄い存在のように扱われる。皆が褒めやそすんだ。直ぐ近くに一つの適性で、俺より遙かに凄いユージスがいるのに」
「そうか」
さっきから、そうかとしか返してないな。けど何時もと様子の違うジルベールに、下手なことは言わない方が良い気がするんだ。
―― こんな自虐的で、後ろ向きなジルベールは初めて見るな
それにしてもジルベールのスペックを持ってしても、劣等感というものを抱くこともあるんだな。顔良し頭良し加えて腕も立つ。術なんて適性外でも、造詣が深くて俺にアドバイスも出来る。見た目も良いけど、中身も良い奴だ。
こんな高スペックで劣等感を抱くなら、モブ中のモブたる俺はどうなってしまうのか。
劣るどころか色々とレベルが違う。攻略キャラとモブとの格差は、埋めようがなく存在している。悩もうが解決しない問題だな。
そこまで考えて、思考が逸れていることに気づいた。今はジルベールの話に、集中しよう。
「外に出ると誰も彼もが、適性がって口にするんだ。そのうち他人と関わるのが嫌になって、こんな思いするのなら一人の方が良いなって思ってたんだ」
「そうか」
―― すまないジルベール、語彙が貧しくて
目を伏せた姿に、さすがに何か言った方が良いとは思った。思ったけど、何かこう気落ちしている心を晴らす名言みたいなものが思いつかない。
こんなときロイなら、上手いこというんだろうな。短い言葉でジルベールの心を癒やす何か良いことを言って解決しそうな気がする。さすが主人公だ。出来たらこの場にきてほしい。
―― 止めよう
現実逃避が、過ぎる。ちゃんと話を聞こうと思っているのに、なんてこう横道に逸れるんだ。
―― 適性か……
俺は適性が一つで、というよりほとんどが一つだけだ。希有っていうのは、それだけで特別視されるものなのだろう。
特に術に重きをおくって言っていたから、子供の頃から適性だけで判断されていたのかもしれない。どんな性格とか、何をしたとか、ジルベール個人ではなく生まれ持った適性だけしか見ようとしない。人格を否定された気になったのかもしれない。
―― 辛いだろうな
俺は人に褒められるようなものを、何も持ってないから想像しか出来ない。けど考えただけで、気分が重くなってくる。
ただ他人はって言ってるから、家族は親戚は違ったんだろう。そこだけ救いだったのかもしれない。
「別にこのままで良いって思っていたけど、ユージスが学園に行けって背中を押してきて……俺に言う前に両親を説得済みで、半強制的に来たんだ。望んだわけじゃないけど、でも心のどこかで他国に行けば違うじゃないかって期待してた」
意外なことを聞いた。あの従兄は悩んでいるジルベールの為に動いたのか。
―― なんだ
少しは良い奴なのか。すまない性格の悪い変態だと決めつけて。届かないだろうが、心の中で謝っておく。
「だから自分も変わらなきゃって、頑張って愛想を良くしてたんだけど、結局同じで……でも君だけは違った」
―― 違った?
なにがだと聞き返そうとして、その前に気づく。
適性が二つとか、どうでも良いとか言った気がする。結果は良かったんだろうけど、ジルベールが良い方に考えてくれなかったら傷つけていたかもしれない。
けど言い訳になるがジルベール苦しんでいる背景を、知らなかったんだ。ただ俺は萌えを追求する腐男子だから、ジルベールが攻略キャラであるのが重要なのであって設定の適性云々はどうでも良かった。だって適性二つだろうと、一つだろう萌えイベントが起きるのに支障がないだろう。
―― けど、そうか
ジルベールが悩んでいる適性のことを、どうでも良いって言った俺に希望をもったのかもしれない。他の奴とは違うと、友達が出来るかも知れないと。だから頻繁に挨拶するがごとくお茶に誘ってきたのか、友達を作りたい一心で。
そんな事とは、つゆ知らず邪険に扱っていた。単体じゃ萌えない。主人公と一緒に来いとか思ってたときもある。ものすごく悪いことを、していたのかもしれない。
最近だとお茶の誘いは、受けることにしている。けれど初期の対応は最悪だな。純粋に友達を作りたくて、ボッチで声をかけるのに慣れてなかったのに頑張ってたなんて気づかないでいたなんて。
―― いや待て、無理だろう
そうだ察して気づくなんて、そんな高度なこと出来るわけがない。なんせコミュ力は、ゼロなんだ。こうやって話してくれなかたら、ずっと気づかなかった自信がある。
「お前は意外に真面目だ。努力家だし、優しい所もある。器も大きい。性格だって、良い。それに――」
ジルベールの思いつく限りの良いところを並べる。いきなり過ぎたのか、目を瞬かせている。
―― 何か一言、前に付け加えるべきだったか
色々とこれでも、考えたんだ。でも俺には上手いことは言えない。そんな事が出来るのなら、とうにしている。
それで俺に、出来ることを考えた。それがジルベールの良いところを、伝えることだ。これでも友達だからな。友達の良いとこくらい言える。
優秀な従兄と比べてしまって、自分の良いところが見えてない気がしたんだ。だから気づかせようと思った。思いつく限り並べていく。凄いなかなり長くなるぞ。さすが攻略キャラだ。モブとは違う。
「あいつがどれだけ優れていようが、俺はお前のほうが好きだ」
そうだ。適性が一つだろうと、二つだろうとどうでも良い。もしいきなりジルベールの適性が、一つになっても驚くかもしれないがそれだけだ。
どっちが弱いか強いかも、どうでも良い。俺にとっては、あいつよりジルベールの方が大事だ。なんといってもたった一人の友達だからな。友達をどっちが凄いとか、そんな物差しで見たりはしない。
―― なにか失敗したか?
これでも色々と考えて、喋ったんだ。おかしいことも言ってない。なのにジルベールは、瞬きを繰り返したあと動きを止めてしまった。
―― なにか考え中か
表情から怒っていないことは分かったから、また話し始めるまで待つことにしてお茶を一口飲んだ。




