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桜のトンネル  作者: 斑鳩あおい


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第七章 もう一人の自分

「……顔」


紗月が震える声で言った。


「見える?」


私は答えられなかった。


ただ、カメラの液晶を見つめていた。


そこには確かに写っている。


桜のトンネル。


私と紗月。


そして、そのすぐ後ろ。


黒い影。


ぼんやりとした顔。


だけど、その輪郭ははっきりしていた。


紗月がゆっくり聞いた。


「……誰?」


私は喉が乾くのを感じた。


言いたくなかった。


でも、目をそらすこともできなかった。


「……僕だ」


紗月が息を止めた。


「え?」


「この顔」


私は画面を指さした。


「僕に見える」


紗月は画面をのぞき込んだ。


数秒。


静かな時間。


そして、小さくつぶやいた。


「……ほんとだ」


その声は、とても小さかった。


「でも……」


紗月は首を振った。


「おかしいよ」


「……」


「悠人くん、ここにいるじゃん」


写真の中で、私は紗月の隣に立っている。


そして、同じ写真の中に——


もう一人の私。


影のように立っている。


「……ありえない」


私はつぶやいた。


紗月は少し考えてから言った。


「もしかして」


「?」


「昨日の写真の人」


私は顔を上げた。


紗月はゆっくり言った。


「昨日ここにいた悠人くん」


胸がざわついた。


「……でも」


「昨日、僕は来てない」


「うん」


紗月は頷いた。


「でも」


「この写真にはいる」


沈黙が落ちた。


桜の花びらが静かに舞う。


私はカメラを見つめた。


「……バグかもしれない」


そう言ってみた。


でも、自分でも信じていない。


紗月は少し笑った。


「心霊写真?」


「やめてくれ」


私は苦笑した。


でも。


どこか、冗談では済まない感じがした。


そのときだった。


紗月が突然、カメラをもう一度操作した。


「……あれ?」


「どうした?」


「この写真」


私は横からのぞき込む。


さっきの写真だった。


でも、少し違う。


影の顔が、少しだけはっきりしていた。


そして——


私は凍りついた。


「……違う」


紗月が言った。


「え?」


「これ」


紗月は画面を指さした。


「悠人くんじゃない」


私はもう一度よく見た。


確かに似ている。


でも。


よく見ると、違う。


髪型が少し違う。


目の形も、わずかに。


「……誰だ」


私の声がかすれた。


紗月はゆっくり言った。


「悠人くんに、すごく似てる」


風が吹いた。


花びらが舞う。


そして、そのとき。


紗月のカメラから、また音がした。


ピッ。


私たちは同時に画面を見た。


新しい写真。


また撮られている。


桜のトンネル。


私と紗月。


そして。


後ろの影。


でも。


今回は違った。


影が、少し横を向いている。


その顔が、少しだけはっきり見えた。


私は息をのんだ。


紗月が震える声で言った。


「……この人」


「……」


「どこかで見たことある」


私はゆっくり聞いた。


「誰?」


紗月は額に手を当てた。


「思い出せない」


苦しそうな顔。


「でも」


紗月の声が震えた。


「たぶん」


「……」


「事故の日」


私は凍りついた。


「この人」


紗月はゆっくり言った。


「私の前にいた人だ」


桜の花びらが、一斉に舞い上がる。


私は小さくつぶやいた。


「……三年前の事故?」


紗月はゆっくり頷いた。


そして、恐る恐る言った。


「でも」


「?」


「おかしい」


「何が?」


紗月は画面を見つめたまま言った。


「この人」


私の方を見た。


「悠人くんに似てる」


胸が、強く鳴った。


ドクン。


ドクン。


紗月の声が、かすかに震えていた。


「もしかして」


私は言葉を失った。


紗月は、ゆっくり言った。


「……悠人くん」


「三年前」


「事故にあってない?」

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