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呪いの腕輪

作者: たま
掲載日:2026/03/13

いつも読んでいただきありがとうございます。

他にも作品がありますので読んでもらえたら嬉しいです。

宜しくお願いします。

背信の魔法矢


北の最果て、アシュフォード公爵家の嫡男・カイルは、泥にまみれて剣を振るっていた。

「カイル、あっちの群れも片付けておけよ。俺たちは王都の晩餐会があるからな」

そう言い捨てて馬車に乗り込むのは、異母弟のゼクスと、彼を溺愛する父・公爵だ。

カイルの左手首には、家宝とされる**「封魔の腕輪」が鈍く光っている。

「(この腕輪が、俺の魔力を増幅して領地を守る糧になっている……。母さんの遺言だ、耐えなきゃならない)」

カイルは、魔力を吸い取られる激痛に耐えながら、一人で数千の魔物を屠り続けてきた。

ある日、ようやく宿敵である「森の古龍」を討伐した直後だった。

背後から、婚約者である第一王女・リリアナが率いる騎士団が現れた。

「お疲れ様、カイル。でも、もう貴方は不要よ」

「リリアナ……? 何を……」

次の瞬間、リリアナの合図で、無数の追尾魔法矢が満身創痍のカイルを貫いた。

崖際に追い詰められたカイルの胸を、ゼクスの剣が深く刺し貫く。

「兄貴、その腕輪……本当は『呪具』なんだぜ? 知らなかったのか?」

カイルの体は、深い霧が立ち込める断崖絶壁へと崩れ落ちた。


壊れた「忠誠」


暗い川底で目を覚ました時、カイルは自分の異変に気づいた。

岩に叩きつけられた衝撃で、左手の腕輪が真っ二つに割れていたのだ。

「……体が、軽い……?」

その瞬間、凄まじい魔力が体中から噴き出した。

今まで腕輪に「吸い取られていた」のは、増幅するための魔力ではなかった。カイルの規格外すぎる魔力を抑え込み、同時に「家族への絶対服従」を強いる精神呪縛だったのだ。

腕輪が壊れたことで、カイルの脳内に霧散していた記憶と理性が戻る。

父も、義母も、弟も。彼らはカイルを「高性能な防衛兵器」として使い潰すため、幼い彼に呪いを嵌めたのだ。

「……全部、茶番だったのか」

カイルは、刺さった矢を引き抜き、あざ笑うように噴き出す自身の魔力を掌握した。もはや、彼を縛る鎖はどこにもない。


隣国の賢王


森を彷徨うカイルを救ったのは、隣国・レギウス帝国の皇帝、エドワードだった。

彼はカイルを一目見て、その膨大な魔力量に驚愕した。

「君ほどの男を殺そうとするとは、アシュフォード公爵も王女も、よほどの無能と見える」

エドワードはカイルに真実を告げる。

「その腕輪は、装着者の生命力を削って周囲に配分する。つまり、君が戦えば戦うほど、公爵家や王都の人間は『何もしなくても健康で裕福』になれる仕組みだった。君が消えた今、彼らはどうなると思う?」

カイルは静かに口角を上げた。

「……返してもらうだけですよ。俺が彼らに与え続けていた、過剰な恩恵を」


自業自得のカウントダウン


一ヶ月後。カイルが不在となったアシュフォード領は、地獄と化していた。

カイルの魔力供給が止まったことで、肥沃だった大地は枯れ、領民を癒していた結界は消失した。

何より、腕輪の呪縛から解放されたのはカイルだけではない。

「カイルの犠牲」の上に胡坐をかいていた公爵家の面々は、急激な「魔力枯渇症」に陥り、見る影もなく衰弱していった。

「カイルはどこだ! 早く連れてこい! 腕輪を直させろ!」

父の叫びは、魔物の咆哮にかき消された。

一方、王女リリアナも、カイルという盾を失ったことで騎士団が壊滅し、王都の支持を完全に失っていた。


真の解放


カイルは今、レギウス帝国の魔導師団長として、新たな部下たちに囲まれていた。

そこには「強制」も「呪い」もない。あるのは、彼の純粋な実力への敬意だけだ。

そこへ、ボロボロになったゼクスが使者として這いつくばってきた。

「兄貴……助けてくれ……! 領地が、魔物に……!」

カイルは、かつて弟が自分を刺したのと全く同じ、冷ややかな笑顔を向けた。

「悪いな、ゼクス。その義務は、あの日、崖の下に捨ててきたんだ」

カイルが指を鳴らすと、圧倒的な光の魔法が空を裂き、帝国の国境に迫る魔物を一掃した。

それを見たゼクスは、絶望に顔を歪める。自分たちが「ゴミ」のように捨てた男が、実は「国を支える柱」そのものだったと知ったのだ。


ざまぁみろ

「――ざまぁみろ」

カイルは呟いた。

アシュフォード家は取り潰され、リリアナは辺境へ追放。彼らは一生、自分たちが失ったものの大きさを呪いながら生きていくことになるだろう。

カイルは左手首を見た。そこにはもう、銀の枷はない。

代わりに、帝国の名工が作った、魔力を「循環」させるための新しい腕輪が輝いている。

「さて……これからは俺の好きにさせてもらう」

呪縛から解き放たれた最強の魔導師は、自由な空の下、新しい仲間と共に歩み出した。


(完)

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