第9話 ジャックとニール
登場人物紹介
久世玲司(43) 主人公 さえないおっさん 元MIF コードネーム:ゼロ
篠宮澪子(??) 玲司の上司 玲司のことが好き 王子様キャラ コードネーム:ヴィーナス
鷹宮恒一(32) 玲司の副官 元自衛軍 前線任務は初 コードネーム:ソロ
白川朱音(36) MIF 玲司の元カノ 未練あり コードネーム:エイル
白川直人(38) AEMS 朱音の夫
ドクター(148) 朱音と玲司の師匠
ヴォルフ(43) SOKR族長
朝だ。昨日の騒動も何事もなかったように作業は進んでいた。
回収された兵員、民間人の治療が行われている。
ドクターは未だ昏睡状態らしい。筋弛緩薬だと思われる薬品の効果によりドクターの特殊遺伝子が活動を停止し、ドクターの体を70代の爺さんから140歳の動く死体に変えてしまっているらしい。
無線が鳴る
「おはよう、ゼロ」
「今日も麗しい声だなヴィーナス」
冗談でも言ってないとやってらんない
「ゼ、ゼロ、、気持ちは嬉しいが…心の準備というかだな。その、」
なにを言ってんだこいつは
「おい、ヴィーナス 落ち着け 冗談だ」
「ああ、冗談、そうだよな…」
篠宮の無線を無視し久世は会議用のテントに向かって歩く
「ソロ、行くぞ」
「はい、ゼロ」
テントに入るとホークマン、ワイズマンが待っていた。
「「おはようゼロ」」
「やあワイズ、ホーク」
朱音が入ってきた
「おまたせ、早速始めましょう。ゼロ、無線を」
無線をホロテーブルに接続する
「おはよう、ジャックニールへの侵入作戦の概要を説明する。なにか最初に聞いておきたいことはあるか?」
鷹宮は小さく手を上げながら言う
「あの〜、ジャックニールってのは何なんでしょうか…」
一同が驚く、そういえば鷹宮はこの辺の事情には詳しくないんだった。朱音が口を開く
「ジャックニール、JackNeelGroupというグループ会社、表向きは製薬会社として世界各国にグループ企業を置く世界を代表する会社よ。一方で、この会社はなかなか裏の噂も絶えないのよ、JackNeelGroupの最古参会社ジャック&ニールソリューションという会社は元MIFのジャックとニールという二人が作った会社なの。ドクターの一番弟子とも言えるジャック、彼は製薬部門で最も功績を残しているわ、赤いマスクの連中の筋弛緩薬の解毒に使ったのも彼の薬、ニールは遺伝子治療の分野で頭角を表していた切断された四肢を復元するような技術を作ったのも彼よ。」
「そんな人達がなぜ、MIFをやめてしまったんですか?」
朱音は声のトーンを落として言った
「わからない、それはドクターぐらいしか。」
テントに数分の沈黙が訪れる
口を開いたのは篠宮だった
「それでは作戦の説明をする。ドスバン地域にあるジャックニールの研究所に行く
ゼロとソロ、君等は清掃員としてこの実験場に潜り込め、清掃業者の車のルートを送っておく。朱音、君は菊東のNSSの科学調査員としてそちらに向かってもらう。護衛として直人を連れて行け。」
久世の右手のブレスレットがけたたましく鳴り響く
ブレスレットにはこう書かれている
〜通信希望 近くの端末へ接続〜
目の前のホロテーブルにそのブレスレットを接続する
狼のマークとともに馴染みの声が聞こえた
「菊東のゼロ、ヴォルフだ」
「やあヴォルフ」
「奴らが貴様の友を襲うのが見えた。ドスバンか?」
「ご名答、なぜわかった?」
「森が教えてくれる」
沈黙の後久世は言う
「協力してくれるのか?」
「ああ、だが我々は我々で動かせてもらう。」
「それでいい」
ヴォルフの背後で声が聞こえた
「すまん、客が来た。また会おう菊東のゼロ。」
通信が途絶えた
篠宮が口を開く
「強力な味方が増えた。ソロ、現地の様子を」
「はい、所属不明の兵士が多く近辺を囲んでいます。赤華製の重機及び装備を全員が所持していることがわかりました。衛星で常時スキャンをかけていますが赤マスクの連中は一度も映っていません。」
「ありがとう、ソロ。3人で研究所内を捜索し、蛹、SPEK兵士の亡骸、その他遺伝子実験の裏付けとなるような情報を見つけるんだ。もしなかった場合は、それ以外に何らかの違法実験の証拠を入手する。そして、蛹の行方の手がかりとなるものを探すんだ。」
「最後に、コードネームの発表だ。前回に引き続き私のことは〈ヴィーナス〉と呼べ、〈ゼロ〉〈ソロ〉君たちは変更無しだ。ホークマンとワイズマンにも作戦に参加してもらうが、二人はその名前自体がコードネームなので、変更は特になし。朱音、君のコードネームは〈エイル〉だ。東欧の医学の女神だ、以上、皆作戦開始だ。ヴィーナス、アウト」
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夜明け、
ゼロとソロはくすんだブルーのジャンプスーツを着て清掃業者のトラックに乗っていた。
「……静かすぎますね」
鷹宮が小声で言う。
「研究所の外周にこれだけ兵がいて、この中がただの研究所なわけがない」
久世は前を見たまま答える。
ドスバン研究所。
ジャックニールが表向きに運営する遺伝子再生研究施設。
巨大な白い無機質な建物
不気味なほど整っている。
ゲートが開く。
「清掃業者、定時作業」
受付は顔も上げない。
車両が中へ入る瞬間、久世のブレスレットが一度だけ震えた。
――通信ではない。
だが、確かに”何か”が触れた。
「……今の」
「俺も感じました」
鷹宮が言う。
「電波じゃない。生体スキャン……いや、違うな」
「降りろ」
二人は指示に従い、ゆっくりと降りた。
建物内部は、外よりも静かだった。
人の気配が薄い。
研究所というより、保管庫に近い。
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その頃
朱音と直人は案内役職員の立会のもと、手荷物検査をしていた。
「手厚い警備ですね」
案内役の職員2名に笑顔で迎えられた朱音は言う
「近頃この近辺でも物騒なことが多発してますから、ね?」
向こうの目に笑いはなかった
研究所内で実験設備の解説を受ける朱音は違和感を覚えた。
「普段はどういった被検体を使用しているんです?」
「この研究所では人体用のジーンセラピー遺伝子を小動物、類人猿などに使用しています。」
なら、なぜそこにSPEK隊員の亡骸とも言える蛹を運んでいるんだろう…
朱音は嫌な予感がしていた。
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研究所内部、地下データ保管区画。
「……ない」
久世は、端末から視線を上げた。
保管庫は空だ。蛹も、遺伝子試料も、SPEK兵士の遺体も――何も残っていない。
「実験痕跡もないです」
鷹宮が壁面スキャナを下ろす。
「 一旦、輸送ログの方を見てみろ」
「はい」
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「あった!」
「どれだ、見せろ。」
「蛹の直接的な実験はなかったようですが、ここへ医療部品として運ばれています。
可能性がある積荷は3つです。」
「よし、それだけ絞れれば十分だ。これに移し替えろ」
USBを端末に差し込む 1%,2%,3%,ダウンロードが始まる
久世は無線で朱音を呼ぶ
「エイル、現在地はどこだ」
「3階実験室よ」
「地下のデータ保管区画に来てくれ、俺とソロがそこに待機してる」
「了解」
朱音は案内役に伝える
「すみません、そろそろ実験データの確認をしたいのですが…ご案内いただいても?」
エレベーターが開く。
それと同時に清掃業者の格好の二人が乗り込んでくる。
―――パシュッ ―――パシュッ
ソロは一瞬で案内役2人を撃った
「殺したのか?作戦と違う」
「いや、麻酔銃です。ご安心を」
ソロが着替えながら言う。
着替え終わった久世に朱音が言う
「似合わないわね、玲」
「今はそれでいい、あと俺はゼロだ。」
「あらごめんなさい」
「こちらヴィーナス、どうだゼロ。」
「証拠は十分だ、帰還する。」
「無事の帰還を待つ、ヴィーナス、アウト」
「みんな行くぞ、陽動開始」
―――――ズンッッッ
「さあ、始まるぞ」
――――警報が鳴り響く
「警戒 赤 車庫メインゲートにて爆発、全隊敵兵を処分せよ」
久世は笑いながら説明した
「今より我が隊は裏口から逃走車両に乗り基地に帰還する」
裏口についた。同時だった
――バン
「ぐああぁ」
「止まれ!!」
直人が撃たれた。足を撃たれてうずくまっている
「全員手を挙げろ!!」
囲まれてる
「みんな、、手を挙げろ」
これで終わりか、使い潰されて終わるのか。
こんな辺鄙なゴミ溜めで、はーぁ
――――けたたましい音が響く
「なんの音だ、お前から鳴ってるぞ止めろ」
久世の腕から音がなる、ブレスレットだ。まさか
―――バタ バタ バタ
久世を取り囲む兵士が倒れていく
無線に誰かが割り込んでくる
「菊東のゼロ、久しぶりだな。」
「来てくれると思ってたよ。正直危なかった」
ヴォルフだ、姿は見えないが助かった。
「急げ!逃げるぞ」
「待って!」朱音が叫ぶ
「直人が…直人が…」
直人はもう動いていない銃撃戦の流れ弾が当たったのか、彼は血を流しすぎていた。
朱音からすればもうそれはわかりきったことである
「敵だ、また来るぞ!」
鷹宮が叫ぶ。敵の銃を奪い応戦している
「ゼロ!エイル!早くしろ!」
「エイル、行くしかないんだ、頼む」
「嫌よ、まだ、まだなにか」
暴れるエイルを引きずり、久世は車に乗り込む。
SOKRの援護のおかげもあり、追っ手を巻くことができた。しかし、大きな犠牲を払ってしまった。




