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第8話 合流

登場人物紹介

久世玲司(43) 主人公 さえないおっさん 元MIF コードネーム:ゼロ

篠宮澪子(??) 玲司の上司 玲司のことが好き 王子様キャラ コードネーム:ヴィーナス

鷹宮恒一(32) 玲司の副官 元自衛軍 前線任務は初 コードネーム:ソロ

白川朱音(36) MIF 玲司の元カノ 未練あり

白川直人(38) AEMS 朱音の夫

ドクター(148) 朱音と玲司の師匠

ヴォルフ(43) SOKR族長

久世と鷹宮は、MIFの仮設キャンプへと駆け寄っていた。

「朱音! 朱音! どこだ!」

久世は柄にもなく全力疾走していた。

呼吸が荒れる。足元の瓦礫を蹴散らしながら、白いテント群の間を縫う。

「ゼロ、落ち着いてください! 医療班は後方に――」

鷹宮の声を振り切り、久世は一つのテントを開け放った。

中は、地獄だった。

簡易ベッドに横たわる負傷者。

止血処置、固定、点滴。

血の匂いと消毒薬が混ざり合い、空気が重い。

「……朱音!」

その声に、奥から返事があった。

「うるさいわね……生きてるわよ」

白衣姿の朱音が、カーテンの向こうから現れた。

袖は血で汚れ、髪も乱れているが、目ははっきりしている。

久世は、そこでようやく立ち止まった。

「……無事か」

「見ての通り。かすり傷と打撲だけ」

朱音はそう言って、すぐに他の医者と交代し、玲司の方を向き直る。

「会議室に行きましょう、そこまで行けばホークマンとワイズマンが居る。」

「ああ」

朱音は気力を失ったような声で言う。

「AEMSの護衛が三人死んだ。重症が四人。医療班も半分が筋弛緩剤で一時行動不能。ドクターもよ……最悪」

「あの蛹は、そんなに重要なものなのか」

「ええ、あの技術はSPEK以外で使用されていないわ、あの技術が広がれば戦争は泥沼化する。」

久世は歯を食いしばる。

「……やられたな」

ホークマンが入ってきた。

顔色は悪いが、声は冷静だった。

「ゼロ。ソロ。合流を確認した」

「被害状況は聞いた」

「……ああ」

ホークマンは一瞬だけ視線を落とす。

「盾兵二名、後方警戒一名。三名が戦死。

 全員、即死だ。苦しんだ形跡はない」

「線を引いてるな」

久世の言葉に、ホークマンは頷いた。

「間違いない。こちらを壊すつもりはない。

 だが、“奪える”と示すために必要なだけ殺した」

そのとき、無線が鳴った。

「――こちらヴィーナス。全員、聞こえるか」

篠宮の声だ。いつもより、少し低い。

「ああ」

「聞こえてます」

「ゼロ、スピーカーに繋げろ」

久世が無線機を会議室の機器につなげると、篠宮の声が大きくなる。

「現時点で、赤マスクの行動ログを再解析した。彼らは撤退時、追撃可能な三つのルートをすべて潰している。」

「撤退支援部隊がいたってことか」

鷹宮が言う。

「そうなる。しかも、空中監視の死角を正確に把握していた」

その言葉に、鷹宮が息を呑む。

「……内部情報です」

全員の空気が、凍りついた。

篠宮が続ける。

「ゼロ。ソロ。

 この件は、ルドエゴだけの話じゃなくなった」

「だろうな」

久世は、テントの外を見る。

担架が運ばれ、兵士は無言で動いている。

「菊東の特殊作戦群のハンドサイン。だが、現行部隊の運用とは一致しない」

「……“古い教範”だ」

鷹宮が静かに言った。

「俺がいた頃でも、もう使われなくなってた。合理的すぎるからって理由で」

「合理的?」朱音が聞く

「はい。“問題が起きていないなら、報告も不要”という思想です」

篠宮が小さく息を吐く。

「つまり……」

久世が言葉を継いだ。

「赤マスクは、国家から切り捨てられた思想で動いている連中だ」

沈黙。

朱音が、ぽつりと言った。

「……だったら、なおさら厄介ね」

「なぜだ?」

「正義でも命令でもない。自分たちが正しいと思ったことだけをやる人間は、止まらない」

その言葉が、深く刺さった。

「ゼロ」

篠宮の声が戻る。

「次の指示だ。君には――奪われた蛹の“行き先”を追ってもらう」

「場所は?」

「まだ不明。だが、

 医療・遺伝子・非正規ルート。

 この三つを同時に扱える組織は限られている」

朱音は、ゆっくりと笑った。

「……ジャックニールね」

「断定はできない。だが、最有力だ」久世が答える

「すまん、時間だ。ヴィーナス、アウト」

無線が切れる。

「私もついていくわ」朱音が久世を見る

「ダメだ、お前は非戦闘員だろ。」

「でも、誰よりもこの件に詳しいわよ」

「こいつぁ一本取られたな、ヴィーナスにコードネーム考えてもらわねーとな」

「やってやりましょう!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

久世は、拳を握りしめた。

「戦争を終わらせたい奴らと、戦争を利用したい奴らと、

 そして――戦争を“管理”しようとする奴ら」

視線の先で、赤く染まった夕焼けが沈んでいく。

「面倒な舞台に来ちまったな」

鷹宮が、静かに頷いた。

「ええ。でも――」

「逃げないだろ?」

「はい」

久世は歩き出す。

次に進むために。

奪われた蛹の、その先を暴くために。

戦場は、もう銃だけの場所じゃなくなっていた。

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