表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第5話 ヴェルホ

悪夢のような一日目が過ぎた

空はきれいに晴れ、小鳥が平和ボケした鳴き声を奏でてる

無線だ

「玲司くんおはよう、よく眠れてはいないようだな」

「朝から美女の声を聞くのも悪くないな篠宮」

「ああ、昨日伝え忘れていたが私とお前にコードネームができた。誰に聞かれてもおかしくないからな。私はこれから〈ヴィーナス〉と呼べ、君は〈ゼロ〉だ」

「お前がヴィーナス、俺は玲司でゼロか、ネーミングセンスがないな」

そう言いつつも久世の顔には笑顔が浮かんでいた。

「ゼロ、君の副官が到着したようだ。」

テントの前に人が近づくのがわかった。

「失礼します」

若い男の声だ

「はいれよ、俺は本国のやつみたいな堅苦しいのは嫌いだ」

テントに入ってきたその男は菊東自衛軍の制式装備の迷彩を着用していた。

華奢な体にヘッドフォン、2台のスーツケース。

「鷹宮恒一です。」

快活な感じでの挨拶に久世は一歩引いた感じで答えた。

「久世玲司だ、よろしく。コードネームは?」

「〈ソロ〉です。」

恒一の一でソロか、安直だこと

「やることはわかってるな、男二人で楽しい登山だ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヴェルホ山は静寂に包まれていた。もう登り始めて数時間がたった。

この山は静かすぎる。周りの音が聞こえない

「嫌な山だ…」

ふと久世はこぼした

背中には最低限の装備、銃は持っているが手を伸ばせば届く位置にはない。

これは“交渉”の姿勢だ。

「こちらヴィーナス。位置情報、確認してる…ゼロ、ソロ、SOKRの目撃情報の多いポイントはこの先すぐだ」

篠宮からの最低限の情報を最後に通信が切れた。

その後山道を進んで数分。

足音が消えた。

いや、違う

消されたのは――俺達の足音だけだ。

土を踏む感触がない。

落ち葉を踏む音がしない。

次の瞬間。

「止まれ」

背後でも、前方でもない。

四方から同時に聞こえた。

焦った鷹宮が銃を構えて言う

「何者だ!出てこい!」

久世はゆっくりと立ち止まり、両手を少しだけ上げる。

「やめろソロ!!……よう。歓迎の仕方にしちゃ、ずいぶん静かだな」

鷹宮が戸惑いながら銃を下ろす。

返答はない。

だが、視界の端――

“森が歪んだ”。

木の幹が、人の形にほどける。

苔と枝と布がほどけ、そこに兵士がいた。

ギリースーツ。

ロスヴィエト製の銃

銃口は向けられているが、引き金にはかかっていない。

「菊東の人間だな」

低い声。年齢は不明。

「ご名答。国家安全保障局 NSSだ」

「なぜ来た」

「話をしに来た」

SOKRの兵士たちは動かない。

その中の一人が一歩、前に出る。

他よりも装備が古い。

だが、圧が違う。

「話す理由は」

「撃たない理由があるからだ」

鷹宮は久世の一歩も引かない態度に困惑する

一瞬、空気が張りつめた。

「……続けろ」

「お前らは無差別に殺さない。

 森林を守るために戦ってる。

 医療行動を妨害しない。

 俺は、そういう連中と話す」

沈黙。

やがて、その男は銃口をわずかに下げた。

「名前を聞こう」

「ゼロだ」「ソロだ」

「……我々はSOKR。

 この山は我々の管理区域だ」

「知ってる。だから堂々と来た」

兵士の一人が小さく笑った。

「勇敢か、愚かか……」

「どっちだろうな」

再び沈黙。

そして、SOKRの指揮官らしき男が言った。

「菊東のゼロ。ここで撃たない理由が、もう一つある」

「なんだ?」

「――お前は“戦争を終わらせる側”の目をしている」

久世は一瞬、言葉を失った。

「ついてこい」

指揮官は背を向ける。

「話は歩きながらだ。

 この山では、立ち止まる者から死ぬ」

森が、再び動き出した。

SOKRの兵士たちは、音もなく消えた。

久世は深く息を吸い、歩き出す。

(……やれやれ)

どうやら――

最悪の賭けは、最悪の結果にはならなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ