第11話 ネスト渓谷
登場人物紹介
久世玲司(43) 主人公 さえないおっさん 元MIF コードネーム:ゼロ
篠宮澪子(??) 玲司の上司 玲司のことが好き 王子様キャラ コードネーム:ヴィーナス
鷹宮恒一(32) 玲司の副官 元自衛軍 前線任務は初 コードネーム:ソロ
白川朱音(36) MIF 玲司の元カノ 未練あり
ドクター(148) 朱音と玲司の師匠 MIF団長
ホークマン(46) AEMS指揮官 軍事特別幹部
ワイズマン(44) AEMS指揮官 情報特別幹部 科学スタッフ責任者
ヴォルフ(43) SOKR族長
ラング ドロイディア
テントの中ではブリーフィングが続いている
「さあ、本題だ。ネスト渓谷の潜入にあたりこちら側で任務用のドロイディアを用意した」
ドロイディア 人工知能を搭載し、菊東が主導して開発している機械兵器だ。
「ワイズマン、ドロイディアを連れてきてくれ」
「ああ、ヴィーナス」
奇妙な機械音とともに小さめの植木鉢みたいな形の浮遊機械が空中をぷかぷかしながらこちらに寄ってくる。
その浮遊機械は不可解な機械音とともに喋りだした
「ビー、ビー、認識、、完了、」
「やあラング、僕だよ。ワイズだ」
「やあワイズ、それにホーク、ゼロ、ソロ、エイル、」
「私を忘れてるぞ、ドロイディア。」
「オレっちにはラングっていう、素晴らしい名前があるんだよ、ヴィーナス。」
「ずいぶん、芸の仕込まれたブリキだな」
久世はドロイディアという物自体をそこまで信用していない
「紹介も済んだようだから、任務の詳細について話そう、ラング、ソロ、頼むぞ」
ホロテーブルにソロが自分の端末を接続する。
隣では、ラングがネスト渓谷周辺の地図を展開している。
空中に展開された地図を指差しながらソロが話す。
「山の中腹に位置するこの施設は表向きには何もないことになっていますが、実態は悲惨なものです。
ここは、ほとんど要塞のようなもので、違法実験の温床となっています。
ジャックニール側の資料では実践的新実験施設という項目ファイルに入っていましたが、個人的には兵科、軍事施設のファイルに即刻移動すべきですね。」
いつになく、ソロが饒舌だったようで、気になったゼロが聞く
「なんでまた、そんなに張り切ってんだソロ」
ソロの目つきが鋭くなる
「彼らが古巣の仲間かもしれないんでね、同じ部隊の人間として、しっかりぶっ飛ばさないとね。」
「珍しくやる気だな、新兵。」
ホークが言う。
ヴィーナスが軽く咳払いをする。
「よし、作戦説明に入る」
ラングが「ビー」と短く鳴き、ホロテーブルに立体地形を展開した。
ネスト渓谷。
切り立った岩壁。
谷底を流れる濁流。
そして山腹に口を開ける巨大な人工構造物。
要塞だ。
研究所なんて生易しい言葉では足りない。
「侵入ルートは三つ」
ヴィーナスが指を動かすと、三本の光線が走る。
「正面、地下水路、そして廃坑だ」
ホークマンが腕を組む。
「分散か」
「ああ。一点突破は自殺行為だ」
ラングが補足する。
「正面火力、推定自動砲台六基、重機関銃陣地十、巡回部隊多数。正攻法、成功率、18%」
「低すぎるだろ……」
ワイズが苦笑する。
「だから陽動だ」
ヴィーナスが言った。
「ホーク、ワイズ。君たちはAEMS部隊を率いて正面から叩け」
「派手にやれってことか」
「そうだ。思い切り目立て」
ホークマンが小さく笑う。
「任せろ。こういうのが本職だ」
「俺は実験室にいたいんだけどな。」
ワイズは嫌そうだ
「敵の注意を全部引きつけろ。施設の“目”を正面に固定する」
次に、地下へ線が伸びる。
「ソロ、ドクター」
「はい」
「ほっほ」
「谷底の旧排水路だ。現在は地下水路として使われている。狭いが、警備は薄い」
ラングが水路の断面図を出す。
「生体反応、少。巡回、最低限。潜入成功率、73%」
「高いですね」
「だが」
ヴィーナスの声が低くなる。
「内部は遺伝子廃棄物と薬品が流れている。毒性あり。ドクターの知識が必要だ」
ドクターが肩をすくめる。
「年寄りを酷使しおるのう」
「一番頼りにしてる」
「そう言われると断れんのう」
ソロがドクターを見る。
「必ず守ります」
短い言葉。だが重い。
最後に、最も細いルート。
山の斜面を迂回し、古いトンネルへ続く線。
「そして廃坑ルート」
久世が顎を上げる。
「俺らか」
「ゼロ、エイル。君たちだ」
朱音が静かに息を吐く。
「廃坑……崩落の危険があるわね」
「だが唯一、施設の真横に出られる」
ラングが映像を切り替える。
施設側面のメンテナンスハッチ。
「ここが最短侵入点。中枢区画まで直通」
「つまり――」
久世が笑う。
「一番“当たり”のルートってわけだ」
「そうだ。赤マスクと接触する確率が最も高い」
沈黙。
それを破ったのは朱音だった。
「……上等じゃない」
静かな声。
「蛹を取り戻すなら、私が行くのが一番早い」
久世は横目で見る。
昨日まで泣いていた顔は、もうない。
医者の顔だ。
「危なくなったら下がれよ、エイル」
「それはあなたの役目でしょ、ゼロ」
軽く笑う。
少しだけ、いつもの朱音が戻っていた。
ヴィーナスが締める。
「目的は三つ」
指を一本立てる。
「蛹の奪還」
二本。
「赤マスクの正体特定」
三本。
「そして――ネストの機能停止」
「要するに」
ホークマンがニヤリとする。
「ぶっ壊せってことだな」
「その通りだ」
ラングがくるくる回りながら言う。
「任務開始時刻、0400。夜明け前。暗闇最大」
テントの外は、すでに夜。
風が冷たい。
戦場の匂いがする。
久世は立ち上がり、装備を肩にかけた。
「久しぶりだな」
「何がです?」
ソロが聞く。
「“本気の潜入”ってやつだ」
「潜入っていうより攻撃作戦ですけどね。もはや」
ドクターが笑う。
「若いのう、お前さんらは」
久世は出口へ向かいながら言った。
「若くなきゃ、こんな仕事やってられるかよ」
外には、暗い山影。
その奥に――ネスト。
赤マスクの巣。
久世は小さく呟く。
「待ってろよ」
「全部、終わらせてやる」
夜明け前。
三つの部隊が、静かに動き出した。
――作戦開始。
次回 第11話 ネスト渓谷
レビューとか感想?溶かしてくださるととても嬉しいです。
今後とも久世くんと皆さんを宜しくお願いします。




