第8話:見えざる狙撃手
地上に出た二人を襲う、見えない敵。
それはリカルドと同じ「眼」を持つ者でした。
――バシュッ!!
再び、乾いた音が空気を切り裂く。
俺たちが隠れている廃車のボンネットに、新たな弾痕が刻まれた。
「……くそッ、位置が特定できない!」
俺は奥歯を噛み締めた。
『予見眼』で「弾が着弾する未来」は見えている。だから、当たる直前に避けることはできる。
だが、**「どこから撃ってきているか」**までは視えない。
敵は、俺の『予見眼』の射程外――遥か遠方から、一方的に俺たちを狙い撃ちしているのだ。
「リカルドくん、私が突っ込んで殺してこようか?」
カレンが廃車の陰から飛び出そうとする。
「待て! 無謀だ! 相手の居場所も分からないのに飛び出せば、蜂の巣にされるぞ」
その時。
俺たちの頭上にある街頭スピーカーから、ノイズ混じりの少年声が響いた。
『――へぇ。今の二発目を避けるなんて、やるじゃん』
あどけなさが残る、けれど感情の欠落した声。
『ボクの「千里眼」から逃げ延びたターゲットなんて、キミたちが初めてだよ。……ねぇ、実験体13号。リカルド・ヴォルテックス』
心臓が跳ねた。
俺の識別番号を知っている?
「……お前、何者だ」
俺はスピーカーに向かって怒鳴り返した。
『ボク? ボクは実験体4号。「シキ」だよ』
4号……シキ。
研究所の噂で聞いたことがある。
左目に、数キロ先の蟻の動きさえ捉える『千里眼』を埋め込まれた、最高傑作のスナイパー。
『管理官からの命令なんだ。「予見眼」と「鮮血の刃」を回収しろって。……ねぇ、大人しく出てきてよ。ボク、あんまり痛めつけるのは好きじゃないんだ』
嘘だ。
声が笑っている。こいつは、遠距離から一方的に獲物を狩ることを楽しんでいる。
「……悪いが、お断りだ」
俺はカレンの手を握り直し、小声で指示を出す。
(カレン、聞いてくれ。奴は遠くは見えても、近くの死角までは見えてない可能性がある。俺が囮になって奴の視線を惹きつける。その隙に、お前はビルの陰を伝って距離を詰めろ)
「……やだ」
カレンが即答する。
「リカルドくんが撃たれる未来なんて、絶対いや」
「死にはしない。俺の右目がついている限り、急所は外させる。……信じてくれ」
カレンは不満そうに唇を尖らせたが、俺の真剣な眼差しに負けたのか、小さく頷いた。
「……分かった。でも、もしリカルドくんに傷一つでもついたら、あのスナイパー、ミンチにするからね」
交渉成立。
俺は深呼吸をする。
「時間」を視る俺と、「空間」を視るシキ。
眼と眼の戦争が、今始まる。
「――行くぞッ!!」
俺は廃車の陰から、あえて無防備な道路へと飛び出した。
新たなライバル、千里眼の「シキ」が登場しました。
遠距離最強のスナイパーに、リカルドはどう立ち向かうのか。
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