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エデン・エスケープ ―赤い目の僕と、血塗られた彼女の約束―  作者: KOSH
第2章:瓦礫の街の追走劇

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第7話:絶望の青い空

第1章への応援、本当にありがとうございました!

ここから舞台は「地上」へと移ります。

リカルドとカレンが夢見た外の世界。しかし、そこは彼らが知る日常ではありませんでした。

新章も、ぜひお付き合いください!

重い非常扉を、蹴り飛ばすようにして押し開けた。

 瞬間、網膜を焼くような強烈な光に視界が白く染まる。

「……あ」

 隣でカレンが小さく声を漏らす。

 血と鉄錆の匂いが充満する地下にいた俺たちにとって、その陽光はあまりにも暴力的に眩しかった。

 徐々に目が慣れてくる。

 視界に飛び込んできたのは、吸い込まれるような青い空。

 そして――。

「……嘘だろ」

 俺の口から、乾いた言葉がこぼれ落ちた。

 そこにあったのは、俺たちが知っている「日常」ではなかった。

 かつて高層ビルが立ち並んでいたはずの駅前は、巨大な何かに押しつぶされたように崩壊し、無残なコンクリートの骸を晒している。

 道路は亀裂が走り、放置された車が幾重にも重なって、不気味な墓標のように並んでいた。

 人影はない。

 聞こえるのは、ビル風が瓦礫の隙間を吹き抜ける、ヒューヒューという寂しげな音だけだ。

「綺麗だね、リカルドくん」

 カレンは、地獄のような光景を前にして、うっとりと空を見上げていた。

 彼女にとって、世界が滅んでいるかどうかなど、どうでもいいことなのだろう。

 俺が隣にいて、俺の手を握っていられるなら、そこがたとえ死の街でも楽園なのだ。

 俺はふと、背後の駅の入り口を振り返った。

 ぽっかりと口を開けた、暗闇へと続く階段。

 ……誰も、出てこない。

 あんなにいた乗客たち。佐藤くん。

 誰一人として、この出口に辿り着くことはなかった。

 地下からは、もう悲鳴すら聞こえない。ただ、死の静寂が漂っているだけだ。

「俺たちだけが……生き残ったのか」

 ズキリ、と胸が痛む。

 俺は見捨てたのだ。自分の命を優先して。

 その事実が、鉛のように重くのしかかる。

 だが、感傷に浸る時間は与えられなかった。

 俺の右目が、チクリと熱く反応したからだ。

 『予見眼』が、静まり返った街の「違和感」を捉える。

 ――バチッ。

 数百メートル先。崩れかけたビルの屋上で、何かが光った。

 鏡が反射したような、あるいはスコープのレンズのような輝き。

「カレン、伏せろ!」

 俺が彼女の細い腰を抱き寄せ、近くの廃車の陰に飛び込んだのと同時。

 つい先ほどまで俺たちが立っていたアスファルトが、音もなく弾け飛んだ。

 銃声は聞こえない。

 超音速で飛来した、長距離狙撃スナイピング

「あは。……ねぇ、リカルドくん。また『ゴミ』が、私たちの邪魔をしようとしてるみたい」

 カレンがゆっくりと立ち上がる。

 彼女の背中から、今まで以上に鋭く、透明度の高い紅い刃が展開された。

 地上の太陽を浴びて、その刃は宝石のように美しく、そして残酷に輝いている。

「今度は私が『お掃除』してあげる。……リカルドくんの視界に、あんな汚いもの、入れたくないから」

 カレンの瞳に、再び狂気の炎が宿る。

 デスゲームは、終わっていなかった。

 地下駅は、この広大な「実験場」の入り口に過ぎなかったのだ。

第7話をお読みいただきありがとうございました。

新章突入早々、新たな敵からの狙撃。

地下とは違い、逃げ場のない広大な瓦礫の街で、二人はどう戦い、生き延びるのか。

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