第5話:裏切りの予知
白いコートの男――管理官の手によって、カレンの精神が蝕まれます。
愛するがゆえに狂う少女と、残酷な未来を視る少年。
白いコートを纏った男――エデンの管理官が、冷笑を浮かべながら一歩踏み出した。
「カレン、君のその『鮮血の刃』。もとはと言えば研究所の備品だ。……持ち主を忘れたわけではあるまい?」
男が懐から取り出したのは、奇妙な波長の音を発する小さな円筒形のデバイスだった。
スイッチが押された瞬間、キィィィィンという鼓膜を突き刺すような高周波が、狭い備品室に充満する。
「あ、が……っ!? あ、ああああああああっ!!」
カレンが頭を抱えて叫んだ。
背中から伸びていた紅い刃が、制御を失ったかのように激しくのたうち回り、周囲の壁や床を無差別に切り刻み始める。
「やめろ……カレンに、何をした!」
俺が男に向かって駆けだそうとした時、右目の奥が「爆発」した。
「が、はっ……!?」
かつてない規模の赤いノイズ。
脳が焼き切れるような熱量と共に、強制的に『未来』が流れ込んでくる。
――そこには、絶望しかなかった。
ノイズの向こう側。
自我を失い、完全に「兵器」と化したカレンが、その圧倒的な暴力で周囲を破壊し尽くす。
返り血で真っ赤に染まったカレンが、ゆっくりとこちらを振り向く。
その瞳に、俺を愛おしんでいた光はない。
ただ、邪魔な動くものを排除しようとする、無機質な「紅」があるだけ。
――そして、彼女の刃が、俺の胸を貫く光景。
「嘘だ……」
膝から崩れ落ちる。
俺が視た未来は、常に絶対だった。
カレンが、俺を殺す? あんなに「大好き」だと言っていた彼女が?
「無駄だよ、リカルド。彼女はもともと、愛などという不確かな感情で動くようには作られていない」
管理官の声が、遠くで聞こえる。
「彼女にあるのは『執着』という名のプログラムだ。……さぁ、カレン。その出来損ないの『予見眼』を回収しろ」
「あ……ぁ、ぁああああ……っ!!」
カレンが顔を上げた。
彼女の頬を、紅い涙が伝い落ちる。
それは血か、それとも彼女の最後の人性が流した涙か。
彼女の背後で、数本の刃が巨大な一つの「槍」へと合体していく。
その矛先が、ゆっくりと、確実に、俺の心臓へと向けられた。
「逃げ……て、リカルド……くん……。……私、が……君を、壊す……前、に……」
掠れた声で、彼女は言った。
だが、その直後。彼女の瞳から完全に光が消えた。
「――ターゲット、捕捉。排除を開始します」
機械のような冷徹な声。
紅い槍が、空気を切り裂いて放たれる。
俺は、視えてしまった。
俺がこのまま死ぬ未来と。
そして――唯一、生き残るための「残酷な選択肢」を。
カレンが暴走し、リカルドを殺そうとする衝撃の展開……!
リカルドの右目が視た「残酷な選択肢」とは何なのか。
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