第2話:狂い咲く紅蓮の刃
前回、地下通路まで追ってきた殺人鬼。
しかし、彼が銃口を向けた先には、最悪の「番犬」がいました。
「へへッ、まずはその女から風穴を開けてやるよ!」
おっさんが引き金を引く。
薄暗い通路にマズルフラッシュが走り、乾いた銃声が鼓膜を叩いた。
――死んだ。
俺の脳裏に最悪のイメージがよぎる。
だが、カレンは一歩も動かなかった。
彼女の背中から伸びた紅い結晶が、生き物のように瞬時に前へと回り込み、放たれた弾丸を空中で弾き飛ばしたのだ。
「……は?」
おっさんの顔が凍りつく。
「ねぇ、リカルドくん。このゴミ、すごくうるさい」
カレンは銃弾など意に介さず、うっとりとした瞳で俺だけを見つめている。
「せっかくの再会なのに。リカルドくんの声が聞こえないじゃない」
「な、なんだテメェは! 化け物がっ!」
おっさんが半狂乱になり、二発、三発と乱射する。
だが、その全てが紅い結晶の盾に阻まれ、無力に地面へと落ちていく。
「……化け物?」
カレンの声色が、スッと冷えた。
彼女がゆっくりと、おっさんの方へ首を巡らせる。
「私のダーリンの前で、そんな汚い言葉を使わないでくれるかなぁ?」
カレンが指先を軽く振るった。
刹那、防御に使っていた結晶が弾け飛び、無数の紅い刃となっておっさんを襲った。
「ぎゃああああああああっ!?」
肉を裂き、骨を砕く鈍い音。
おっさんの悲鳴は一瞬で途絶えた。
彼は銃を握った腕ごと壁に縫い付けられ、物言わぬ肉塊となって崩れ落ちた。
圧倒的な暴力。
俺は震えが止まらなかった。乗客を皆殺しにした殺人鬼が、赤子の手をひねるように殺されたのだ。
「ふふ、これで静かになったね」
カレンは何事もなかったかのように微笑み、血のついた手を振って汚れを払う。
『――ピンポーン。おやおや、手際がいいですねぇ』
その時、通路のスピーカーから不気味なアナウンスが響いた。
『現在、フェーズ1開始から十五分経過。地下エリアに逃げ込んだネズミは……おや、君たち二人だけですか』
「……見てやがるのか」
俺は天井の監視カメラを睨みつけた。
『退屈しのぎに、君たちにプレゼントを送りましょう。東側シャッターを開放。「お掃除屋」たちを投入します』
――ギギィ、と遠くで重い金属音が響く。
なにか、巨大な機械が動き出したような音だ。
「リカルドくん、行こう?」
カレンが血濡れの手を差し出してくる。
「あのアナウンスの声、嫌い。壊しに行こうよ」
俺は、差し出されたその手を取るのを躊躇った。
この手を取れば、俺はもうこちらの世界(日常)には戻れない。
だが、背後からは「お掃除屋」とやらの駆動音が迫ってきている。
俺は覚悟を決め、カレンの冷たい手を握り返した。
「……あぁ。頼む、カレン。俺を守ってくれ」
「うん! 任せて、リカルドくん。君の敵は、世界中ぜんぶ私が殺してあげる!」
カレンが満面の笑みを浮かべる。
俺たちは、血の匂いが充満する通路を背に、駅の奥深くへと走り出した。
圧倒的な強さを見せるカレン。
しかし、新たな追手「お掃除屋」が放たれました。
次回、機械の軍勢との戦闘です。
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