第24話:二人が選ぶ未来
神を自称する男の目には、孤独な支配しか映っていませんでした。
しかし、リカルドとカレンの目には、二人で歩む景色が映っています。
その差が、勝敗を分けました。
「認めん……認めんぞ、こんな不確定要素などッ!!」
ワイズマンが絶叫した。
彼は懐から注射器を取り出し、自らの首筋に突き立てる。
強化薬物を投与された彼の右目、『観測眼』がどす黒く充血し、異様な光を放ち始めた。
「私は神だ! 私が視た未来こそが絶対だ! 死ね、死ね、死んで私の正しさを証明しろォォッ!!」
ワイズマンが銃を乱射する。
弾丸の一発一発が、因果律を歪めて俺たちの急所へと迫る。
避けても当たる。防いでも貫通する。無理やりねじ曲げられた「死の運命」。
だが、今の俺には聞こえていた。
背中を預けるカレンの鼓動が。彼女の意思が。
「……カレン、俺の手を握れ」
「うん!」
俺たちが手を繋いだ瞬間、脳内に電流が走ったような感覚が弾けた。
俺の『予見眼』と、カレンの研ぎ澄まされた『戦闘直感』。
二つの力が混ざり合い、共鳴する。
視界からノイズが消えた。
ワイズマンが押し付けてくる「死の未来」が、ガラス細工のように粉々に砕け散り、その向こうに、一本の光り輝く道が現れる。
「視えるか? カレン」
「うん、視えるよ。私たちが勝つ未来!」
俺たちは同時に踏み込んだ。
迫りくる弾丸の嵐。
だが、俺たちは避けない。ほんの数ミリ、首を傾けるだけ。肩を引くだけ。
それだけで、全ての銃弾が俺たちの皮膚を掠めることもなく通り過ぎていく。
「な、なんだ!? なぜ当たらない!? 私は『命中』を確定させたはずだぞ!?」
ワイズマンが後ずさる。
彼の目には、俺たちが残像のように揺らいで見えているはずだ。
「アンタの未来は『一人』で決めた妄想だ」
俺はワイズマンの懐へと潜り込む。
「だが、俺たちは『二人』で未来を選ぶ! 誰にも邪魔はさせない!」
「ひっ、あ、あぁぁ……ッ!?」
ワイズマンの眼前に、カレンが飛んだ。
彼女の右拳に、ありったけの紅いエネルギーが収束する。
それは破壊の光ではない。
鎖を断ち切り、自由を掴み取るための、希望の輝き。
「これで……おしまいッ!!」
カレンの拳が、ワイズマンの顔面――その傲慢な『観測眼』ごと打ち砕いた。
ズドォォォォォンッ!!
強烈な衝撃が艦橋を貫く。
ワイズマンは糸の切れた人形のように吹き飛び、制御コンソールに激突して動かなくなった。
彼の目から放たれていた禍々しい光が消え、ただの男へと戻っていく。
――勝った。
俺たちの勝利を祝福するように、艦橋の窓から朝日が差し込んできた。
水平線から昇る太陽が、海を黄金色に染めていく。
「……終わったね、リカルドくん」
「あぁ。長かったな」
カレンが俺に抱きつき、俺も彼女を強く抱きしめ返した。
温かい。生きている。
俺たちは、自分たちの力で「明日」を勝ち取ったのだ。
だが、余韻に浸る間もなく、艦全体が大きく傾いた。
『警告、機関部臨界。自爆シーケンス作動。総員退避せよ――』
無機質なアナウンスが響く。
ワイズマンの最後の悪あがきか、それとも戦闘の余波か。
この船はもう持たない。
「急ごう! ガンツとシキが待ってる!」
俺たちは手を繋ぎ、崩れゆく要塞からの脱出を開始した。
ワイズマン撃破!
二人の絆が因果律を超えました。
次回、いよいよ最終話。
沈みゆく船からの脱出、そして仲間たちとの別れと旅立ち。
「瓦礫の街」から始まった二人の物語、堂々の完結です。
最後までお付き合いください!




