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エデン・エスケープ ―赤い目の僕と、血塗られた彼女の約束―  作者: KOSH
第3章:碧き自由への反逆(最終章)

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第22話:神の視座

艦橋の扉を蹴り破った先に待っていたのは、静寂と一人の男。

全ての元凶であるワイズマンは、リカルドの行動すらも「予定調和」だと言い放ちます。

艦橋ブリッジの自動ドアが開くと、そこは別世界のように静かだった。

 外の砲撃音も、悲鳴も聞こえない。完全な防音空間。

 無数のモニターが並ぶ制御室の中央に、純白のコートを羽織った男が一人、優雅に椅子に座っていた。

「ようこそ、実験体13号。……いや、リカルド君と呼ぶべきかな」

 男――ワイズマンは、まるで旧友を迎えるように穏やかに微笑んだ。

 その目には、一切の殺気がない。ただ、深く、冷たい知性だけが宿っている。

「アンタが、ワイズマンか」

 俺は銃を構え、油断なく距離を詰める。

「いかにも。君たちのデータは素晴らしかったよ。特にカレンとの『感情的結合』による能力増幅……これは私の想定以上の成果だ」

「俺たちはモルモットじゃない。このふざけた実験を終わらせに来た」

 俺は引き金に指をかけた。

 問答無用。ここでコイツを殺せば、全てが終わる。

 俺の右目が、数秒先の未来を捉える。

 ――俺が発砲する。弾丸はワイズマンの眉間を貫く。彼は椅子から崩れ落ちる。

 「成功あたり」だ。

 バシュッ!!

 俺は躊躇なく撃った。消音器付きの銃口から放たれた弾丸は、真っ直ぐにワイズマンの頭部へ――

 吸い込まれる直前、ワイズマンが「首を傾げた」。

 ヒュンッ。

 弾丸は彼のこめかみを掠め、背後のモニターを破壊しただけだった。

「……なッ!?」

 あり得ない。

 俺の『予見眼』は、確かに命中する未来を視ていたはずだ。

 あんな回避行動、予知映像にはなかった。

「不思議そうな顔をしているね」

 ワイズマンは立ち上がり、懐から銀色の装飾が施されたオートマチック銃を取り出した。

「君の眼は『可能性』を視る。数ある未来の中から、最も確率の高いルートを覗き見ているに過ぎない」

 彼は銃口をこちらに向けず、適当な方向――俺の左側の壁へ向けた。

「だが、私の眼は違う」

 ――ッ!!

 俺の右目が、激しい警告音を鳴らした。

 「俺が左に回避して、そこに弾丸が当たる」未来。

 バカな、俺はまだ動いていない。なのに、回避先の未来が先に確定している?

「私の『観測眼ラプラス』は、未来を『確定』させる。私が視た未来は、絶対の真実となる」

 ワイズマンが引き金を引く。

 俺の身体は反射的に、右目の警告に従って左へ飛んでしまった。

 まるで、そう動くようにプログラムされていたかのように。

 ドシュッ!!

 弾丸が俺の左肩を貫いた。

「ぐ、あぁぁッ!!」

 焼けるような痛み。俺は床に膝をつく。

「見えるかい? 君がどう足掻こうと、私の前では全ての行動が筒抜けだ。君は私の掌の上で踊る、哀れな人形に過ぎない」

 ワイズマンがゆっくりと歩み寄ってくる。

 俺は歯を食いしばり、痛みを堪えて銃を乱射した。

 だが、当たらない。

 彼は最小限の動きで、紙一重ですべての弾丸を避けていく。まるでダンスを踊るように。

(クソッ、視えねぇ……! こいつの未来が、ノイズだらけで……!)

 俺の予知が書き換えられていく。

 視えたはずの未来が、次の瞬間には別の未来に上書きされる。

 情報処理が追いつかない。脳が焼き切れそうだ。

「終わりだ、リカルド君。君のちからは、私という神の模造品レプリカでしかなかったのだよ」

 ワイズマンが俺の目の前に立ち、冷酷な銃口を額に突きつけた。

 右目に映るのは、真っ暗な死の未来。

 回避不能。確定された絶望。

 ――ここまで、なのか?

主人公の上位互換能力を持つラスボスの絶望感。

リカルドの予知さえも手玉に取るワイズマンに、為す術もありません。

しかし、絶体絶命の窮地こそ、逆転の狼煙のろし

次回、リカルドが選んだ「未来を変える一手」とは。

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