第17話:約束の青
放たれた無数のドローン。
しかし、海を目指す二人の、そして四人の想いは止められません。
第2章、完結です。
空を埋め尽くすほどの小型ドローンが、不快な羽音を立てて殺到してくる。
ゴリアテ本体がダウンしても、この自律兵器たちが残っている限り、ゲートには近づけない。
「ちっ、うっとうしいハエどもめ!」
ガンツが車体を回転させ、遠心力で振り払おうとするが、数は減らない。
「リカルド! こいつら、カレンちゃんを狙ってる!」
シキが叫んだ。
ドローンの群れは、最大の脅威であるカレンを集中的に攻撃し、ゴリアテへの接近を阻もうとしていた。
「カレン、止まるな! そのまま突っ込め!」
俺は窓から身を乗り出し、叫んだ。
「でも、これじゃ前が見えない!」
「俺が視る! 障害物は全部、俺たちが排除する!」
俺はシキとガンツを見た。言葉はいらなかった。
「へっ、任せな! 弾切れまで付き合ってやるよ!」
シキがライフルを乱射し、カレンの目の前に立ちふさがるドローンを次々と撃ち落とす。
ガンツは車を巧みに操り、ドローンの群れに体当たりをして進路を切り開く。
開かれた、一本の道。
その先には、膝をつきながらも再起動しようとしているゴリアテの胸部――弱点である動力炉が赤く明滅していた。
「いっけぇぇぇぇッ!! カレン!!」
「――うんッ!!」
カレンが翼を羽ばたかせ、一直線に翔けた。
邪魔するものはもう何もない。
彼女は右手に紅い結晶を極限まで収束させ、巨大な槍を形成する。
「これで……終わりッ!!」
ドォォォォォンッ!!
紅い槍が、ゴリアテの胸部装甲を貫き、深奥にある動力炉を粉砕した。
内部から漏れ出したエネルギーが青白い閃光となって吹き荒れ、巨大要塞は断末魔のような軋みを上げて完全に沈黙した。
――ガコン。
ゴリアテの機能停止と連動し、背後の巨大ゲートのロックが外れる音が響いた。
分厚い合金の扉が、重々しい音を立てて左右に開き始める。
「……開いた」
砂煙が晴れていく。
俺たちは車を降り、ゲートの隙間から差し込む強烈な光に目を細めた。
そこから吹き込んできたのは、腐敗した鉄の匂いではない。
どこか懐かしく、そして少ししょっぱい、潮の香り。
「リカルドくん……!」
カレンが俺の手を握りしめる。
俺たちは並んで、開かれたゲートの先へと歩みを進めた。
視界いっぱいに広がったのは、瓦礫の山でも、灰色の空でもない。
地平線の彼方まで続く、深く、澄み渡った群青色。
「……海だ」
波の音が聞こえる。
それは、俺たちが夢見て、約束し、命懸けで目指してきた場所。
防壁の向こう側には、確かに「本物の世界」が広がっていた。
「綺麗……。ねぇリカルドくん、私たち、本当に来たんだね」
カレンの瞳に、青い海と空が反射して輝いている。
俺たちはついに、この狂った箱庭(実験場)を脱出したのだ。
だが、感動に浸る俺たちの背後で、シキが静かに呟いた。
「……ねぇ。あれ、何?」
シキが指さした先。
美しい海の水平線上に、不自然な黒い影が浮かんでいた。
それは、巨大な軍艦の船団。
そして、その中央に鎮座する旗艦の甲板には、白いコートを纏った数人の人影が立っていた。
デスゲームは、まだ終わっていなかったのだ。
第2章、これにて完結です!
ついに海へ到達したリカルドたち。しかし、そこで待ち受けていたのは……。
次回より、物語はいよいよ最終章へ。
「研究所」との最終決戦が始まります。
二人の旅の結末を、ぜひ最後まで見届けてください。
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