第12話:桃缶と急襲
即席のパーティが結成され、最初の課題は「食料確保」。
束の間の休息を得た三人でしたが、この街は食事の時間さえ与えてはくれませんでした。
瓦礫の山を歩き始めて一時間。
俺たちの腹の虫が、緊張感のない音を奏で始めた。
「……腹減ったな」
「あそこ」
シキが指を差した。
彼が指したのは、瓦礫に半ば埋もれた、看板の落ちたコンビニエンスストアだった。
「僕の目で見た限り、店内の棚に未開封の『桃の缶詰』が三つ残ってる。賞味期限もギリギリセーフだ」
「マジか! お前、すげぇな!」
俺は思わずシキの肩を叩く。
この瓦礫の山から、透視するように食料を見つけ出すとは。サバイバルにおいて『千里眼』は最強の武器かもしれない。
「へへん。これくらい余裕だy――ヒッ!?」
シキが得意げに鼻を鳴らそうとした瞬間、空気が凍りついた。
カレンだ。
彼女が俺とシキの間に割って入り、俺の腕を強く抱きしめながら、般若のような形相でシキを睨みつけている。
「……ねぇ。リカルドくんに気安く触らないでくれる?」
「い、いや、触られたのはボクの方で……」
「リカルドくん、あんな缶詰くらい、私だって見つけられるよ? 瓦礫ごと店を吹き飛ばせば、中身が出てくるもん」
「それは缶詰が消し飛ぶからダメだ」
俺は苦笑しながらカレンの頭を撫でる。
「でも、カレンがいてくれて一番安心してるのは俺だよ。お前がいなきゃ、ここまで生き残れなかった」
「……ほんと?」
カレンの表情が、一瞬で花が咲いたように明るくなる。
「うん! リカルドくんがそう言うなら、今日のところは許してあげる!」
チョロい。いや、愛が重い。
俺たちは崩れかけた店内に入り、シキの言った通りの棚から缶詰を回収した。
プルタブを開けると、甘い桃の香りが漂う。久々の糖分が脳に染み渡った。
「うまい……生き返る」
「あーん、して。リカルドくん」
カレンに桃の一切れを食べさせてやろうとした、その時だ。
「――ッ!?」
俺の右目が、鋭い警告音を鳴らした。
同時に、シキが叫ぶ。
「敵襲ッ! 南側、三時の方向から四体!」
ガシャァァァンッ!!
コンビニのガラス窓が粉々に砕け散り、黒い影が飛び込んできた。
筋肉が異常に肥大化した、野犬のような猛獣――「廃棄実験体」だ。
飢えた獣たちは、涎を垂らしながら、俺たちの持つ缶詰と肉に狙いを定めている。
「チッ、せっかくの食事が!」
俺はカレンを庇って下がろうとしたが、それよりも速く、純白の影が動いた。
「……ねぇ」
カレンの声は、地獄の底のように低かった。
彼女は食べかけの桃を丁寧に俺の手に預けると、ゆらりと獣たちの方へ向き直る。
「私のダーリンとの『あーん』の時間を邪魔するなんて……万死に値するよ?」
瞬間、店内が紅い閃光で埋め尽くされた。
ギャンッ、キャインッ――!
悲鳴を上げる暇もなかった。
飛びかかってきた四体のミュータントは、空中でサイの目状に解体され、肉塊となって床にばら撒かれた。
圧倒的な殺戮。
シキが、開いた口が塞がらないという顔で震えている。
「ふぅ。……お掃除完了」
カレンは何事もなかったように笑顔に戻り、俺の手から桃を受け取ってパクリと食べた。
「ん~、美味しい! ……あ、シキ。君の分はないからね? さっきの見張り代ってことで」
「そ、そんなぁ……」
俺は苦笑しつつ、地図を広げた。
ここに長居は無用だ。血の匂いに釣られて、もっと厄介な奴らが来るかもしれない。
「行くぞ。シキが言ってた『整備工場』へ。車を確保して、一気に防壁を目指す」
桃の甘さと血の鉄錆。
奇妙な味のする休息を終え、俺たちは再び瓦礫の街へと走り出した。
休息も束の間、すぐに襲い来る脅威。
しかし、カレンの前ではミュータントなど雑魚同然でした(食事を邪魔された怒りバフ込み)。
次回、目的地の「整備工場」に到着しますが、そこには「先客」が……?
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