第11話:箱庭の真実
かつての敵、シキから語られる衝撃の事実。
二人が脱出したと思っていた「外の世界」は、まだ鳥籠の中でした。
瓦礫の山に座り込み、シキは諦めたように溜息をついた。
カレンの殺気立った視線が常に彼に向けられているため、逃げ出す素振りは見せない。
「……で、何から知りたいの?」
シキがぶっきらぼうに尋ねる。
「全部だ。この街は一体どうなっている? なぜこんなに荒廃しているのに、誰もいないんだ?」
俺の問いに、シキは鼻で笑った。
まるで、何も知らない子供を憐れむような目だ。
「ここが『外の世界』だと思ってるの? おめでたいね、実験体13号。ここはまだ、エデンの掌の上だよ」
「……どういうことだ」
「ここは『第2実験区画』。通称・瓦礫の街。能力者同士を戦わせるために作られた、巨大な箱庭さ」
箱庭。
その言葉が、俺の希望に冷や水を浴びせる。
地下鉄を脱出して目にしたこの広大な空も、崩れたビル群も、すべて作り物だというのか。
「元々は実験都市として作られたらしいけど、失敗作の処分場も兼ねてるんだって。ボクたちはここで殺し合いをして、最後まで生き残った『優秀な個体』だけが、次のステージに行ける」
「次のステージ……?」
「さぁね。管理官のお気に入りの『完成体』になれるんじゃない? ボクは興味ないけど」
シキは瓦礫を拾い上げ、遠くへ放り投げた。
「じゃあ、ここには海はないのか?」
カレンが低い声で尋ねる。
「海? あはは、何それ。そんなのあるわけないじゃん。この街の周りは、高さ五十メートルの『防壁』で囲まれてるんだよ」
「……嘘つき」
カレンの背中の結晶が、怒りで赤く発光する。
「リカルドくんは言ったもん。海に行くって。嘘ついたら、舌を引っこ抜くよ?」
「ひっ……! ほ、本当のこと言っただけだろ!」
シキが慌てて首を振る。
俺はカレンの肩に手を置き、彼女を落ち着かせた。
「カレン、大丈夫だ。……シキ、その『防壁』の向こう側は?」
「え? ……知らないよ。誰も越えたことがないんだから」
「なら、あるかもしれないだろ。壁の向こうに、海が」
俺の言葉に、シキは呆気に取られた顔をした。
「……正気? 防壁には無人機がウヨウヨしてるし、ゲートは厳重にロックされてる。行くだけ無駄だよ」
「無駄じゃない。ここにいても、どうせ殺し合いをさせられるだけだ」
俺は立ち上がり、遠くに見える街の境界線――霞んで見える巨大な壁の影を見据えた。
「俺は行くぞ。この箱庭をぶち壊して、本当の外へ」
「……リカルドくんが行くなら、私も行く。邪魔する壁は、全部壊しちゃうから」
カレンが俺の腕に抱き着き、いつもの甘い笑顔を見せる。
シキはしばらく俺たちを呆然と見ていたが、やがてやれやれと肩をすくめて立ち上がった。
「……はぁ。バカにつける薬はないって本当だね」
「お前は来なくていいぞ。ここで隠れていれば、しばらくは生き延びられる」
「嫌だよ。一人で隠れてても、いつか『お掃除屋』に見つかって終わりだ。……それに、ボクの『千里眼』がないと、キミたちすぐに死ぬでしょ?」
シキはニヤリと笑い、自分の右目を指さした。
「案内してあげるよ、壁まで。その代わり、本当に海があったら……ボクにも見せてよね」
こうして、俺たちのパーティーにひねくれ者の案内人が加わった。
目指すは街の最果て、巨大防壁。
デスゲームの盤面をひっくり返す、無謀な旅の再開だ。
世界の真実を知り、それでも進むことを選んだリカルドたち。
新たな仲間シキを加え、物語は「脱出編」へと加速します。
次回、防壁を目指す一行の前に、新たな「能力者」が立ちはだかります。
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