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エデン・エスケープ ―赤い目の僕と、血塗られた彼女の約束―  作者: KOSH
第2章:瓦礫の街の追走劇

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第11話:箱庭の真実

かつての敵、シキから語られる衝撃の事実。

二人が脱出したと思っていた「外の世界」は、まだ鳥籠の中でした。

瓦礫の山に座り込み、シキは諦めたように溜息をついた。

 カレンの殺気立った視線が常に彼に向けられているため、逃げ出す素振りは見せない。

「……で、何から知りたいの?」

 シキがぶっきらぼうに尋ねる。

「全部だ。この街は一体どうなっている? なぜこんなに荒廃しているのに、誰もいないんだ?」

 俺の問いに、シキは鼻で笑った。

 まるで、何も知らない子供を憐れむような目だ。

「ここが『外の世界』だと思ってるの? おめでたいね、実験体13号。ここはまだ、エデンの掌の上だよ」

「……どういうことだ」

「ここは『第2実験区画』。通称・瓦礫のスクラップ・シティ。能力者同士を戦わせるために作られた、巨大な箱庭さ」

 箱庭。

 その言葉が、俺の希望に冷や水を浴びせる。

 地下鉄を脱出して目にしたこの広大な空も、崩れたビル群も、すべて作り物だというのか。

「元々は実験都市として作られたらしいけど、失敗作の処分場も兼ねてるんだって。ボクたちはここで殺し合いをして、最後まで生き残った『優秀な個体』だけが、次のステージに行ける」

「次のステージ……?」

「さぁね。管理官のお気に入りの『完成体』になれるんじゃない? ボクは興味ないけど」

 シキは瓦礫を拾い上げ、遠くへ放り投げた。

「じゃあ、ここには海はないのか?」

 カレンが低い声で尋ねる。

「海? あはは、何それ。そんなのあるわけないじゃん。この街の周りは、高さ五十メートルの『防壁』で囲まれてるんだよ」

「……嘘つき」

 カレンの背中の結晶が、怒りで赤く発光する。

「リカルドくんは言ったもん。海に行くって。嘘ついたら、舌を引っこ抜くよ?」

「ひっ……! ほ、本当のこと言っただけだろ!」

 シキが慌てて首を振る。

 俺はカレンの肩に手を置き、彼女を落ち着かせた。

「カレン、大丈夫だ。……シキ、その『防壁』の向こう側は?」

「え? ……知らないよ。誰も越えたことがないんだから」

「なら、あるかもしれないだろ。壁の向こうに、海が」

 俺の言葉に、シキは呆気に取られた顔をした。

「……正気? 防壁には無人機ドローンがウヨウヨしてるし、ゲートは厳重にロックされてる。行くだけ無駄だよ」

「無駄じゃない。ここにいても、どうせ殺し合いをさせられるだけだ」

 俺は立ち上がり、遠くに見える街の境界線――霞んで見える巨大な壁の影を見据えた。

「俺は行くぞ。この箱庭をぶち壊して、本当の外へ」

「……リカルドくんが行くなら、私も行く。邪魔する壁は、全部壊しちゃうから」

 カレンが俺の腕に抱き着き、いつもの甘い笑顔を見せる。

 シキはしばらく俺たちを呆然と見ていたが、やがてやれやれと肩をすくめて立ち上がった。

「……はぁ。バカにつける薬はないって本当だね」

「お前は来なくていいぞ。ここで隠れていれば、しばらくは生き延びられる」

「嫌だよ。一人で隠れてても、いつか『お掃除屋』に見つかって終わりだ。……それに、ボクの『千里眼』がないと、キミたちすぐに死ぬでしょ?」

 シキはニヤリと笑い、自分の右目を指さした。

「案内してあげるよ、壁まで。その代わり、本当に海があったら……ボクにも見せてよね」

 こうして、俺たちのパーティーにひねくれ者の案内人が加わった。

 目指すは街の最果て、巨大防壁。

 デスゲームの盤面をひっくり返す、無謀な旅の再開だ。

世界の真実を知り、それでも進むことを選んだリカルドたち。

新たな仲間シキを加え、物語は「脱出編」へと加速します。

次回、防壁を目指す一行の前に、新たな「能力者」が立ちはだかります。

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