第9話:死線上の舞踏
見えない弾丸の嵐。
リカルドは『予見眼』をフル稼働させ、死の舞踏を踊り続けます。
信じているのは、背後に忍び寄る「彼女」の刃だけ
――ヒュンッ!!
風を切る音と共に、俺の頬を熱い塊が掠めていく。
わずか数ミリの差。
俺が首を右に傾けなければ、今ごろ頭蓋骨が砕け散っていただろう。
「ハァ、ハァ、ハァ……ッ!」
心臓が破裂しそうだ。
俺は瓦礫の山となった大通りを、無様に転がりながら走り続けていた。
右目が焼き付くように熱い。
視界には常に、数秒後に着弾するであろう「赤い点」がノイズのように点滅している。
それを頼りに、身体を無理やりねじり、跳び、伏せる。
『ちょこまかと……! なんで当らないんだよッ!』
街頭スピーカーから、シキの苛立ちを含んだ声が響く。
焦っている。奴のペースが乱れてきている証拠だ。
「ここだぞ、シキ! 最高傑作の腕前はどうした!」
俺はあえて立ち止まり、両手を広げて挑発した。
『ナメるなよ……「予見眼」風情が!!』
バシュシュシュッ!
連続した発砲音。
今度は一発じゃない。三連射だ。
右目が未来を捉える。
――頭、心臓、右足。
同時に着弾する、必殺のトライアングル。
(……躱せない)
物理的に、俺の身体能力では回避不可能だ。
だが、俺は「避ける」のではなく、目の前に転がっていた車のドアの残骸を蹴り上げ、盾にした。
ガギンッ!!
凄まじい衝撃が腕に走る。ドアはひしゃげ、俺は吹き飛ばされたが――生きていた。
『嘘だろ……!? なんで弾道が読めるんだよ!』
シキの悲鳴に近い叫び。
俺は血の味のする唾を吐き捨て、ニヤリと笑った。
「言っただろ。俺には視えてるんだよ。……お前の敗北がな」
『ふざけるな! 次だ、次で確実に殺してやる! ボクの眼からは誰も逃げられないんだ!』
シキがスコープに全神経を集中させる気配が伝わってくる。
奴の意識は完全に俺に向いている。
視野狭窄。スナイパーとして致命的なミス。
――カレン、今だ。
俺が心の中で叫んだ、その時だった。
『……え?』
スピーカーの向こうで、シキの間抜けな声が漏れた。
奴の自慢の『千里眼』が、ようやく捉えたのだろう。
自分の背後に、いつの間にか立っていた「紅い死神」の姿を。
「――ねぇ。ボクのダーリンいじめ、楽しかった?」
スピーカーを通さずとも聞こえるような、冷徹で、美しい少女の声。
次の瞬間、遠くのビルの屋上が、紅い閃光と共に爆発した。
リカルドの挑発により、隙を見せたシキ。
背後にはすでに、激怒したカレンが迫っていました。
次回、最強のスナイパーvs最凶のヤンデレヒロイン、決着です。
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