プロローグ:赤い予兆
本作を開いていただき、ありがとうございます。
KOSHです。
私が夢で体験したことを皆様に広められたらいいなと思っています^ - ^
平凡な日常が一瞬で崩壊し、生存本能だけが試される瞬間から物語は始まります。
「予見眼」を持つ少年と、血塗られたヒロインの逃避行。
ダークでシリアスな世界観を、ぜひお楽しみください。
その日、俺――リカルドが地下鉄で微睡に落ちたのは、単なる不摂生による寝不足のせいだった。
ガタン、ゴトンと響く単調な振動。網棚の隙間から漏れる蛍光灯の白い光。
まさかそれが、血生臭い「選別」の始まりになるとは、夢にも思わなかった。
背もたれに預けた身体が、不意の衝撃に揺れる。
「あ、す、すみません……!」
眼鏡をかけた、いかにも気弱そうな青年――佐藤が、申し訳なさそうに頭を下げた。彼もまた、立位のまま寝落ちしかけていたらしい。
「……いいよ。気にするな」
俺が短く答えた直後、車両の空気が凍りついた。
「おい……今、俺の足を踏んだだろうが。あぁ?」
低く、粘りつくような声。
そこには、安物のスーツをはち切れんばかりに膨らませた、異様にガタイの良い「おっさん」が立っていた。脂ぎった顔に、爬虫類を思わせる冷酷な瞳。
その手は、既にジャケットの内側へと滑り込んでいる。
「ひっ……ご、ごめんなさい! わざとじゃ……」
佐藤の膝がガタガタと震え出す。おっさんの殺気は本物だ。ただの口論じゃない。この男は、今ここで人を殺す機会を虎視眈々と狙っている。
その時だ。
俺の右目の奥が、沸騰した鉛を流し込まれたように熱くなった。
「っ……あ、がぁっ!?」
激痛。視界が真っ赤に染まり、風景が歪む。
赤く染まった視界の中で、ノイズ混じりの「未来」が焼き付いた。
――おっさんが懐から取り出す、黒光りする自動拳銃。
――佐藤の眉間に、赤い花が咲く瞬間。
――そして、パニックになり出口へ殺到する乗客たちに向けて放たれる、無慈悲な乱射。
(……これ、は……?)
予見眼。
かつて失ったはずの、忌まわしき「呪い」の再燃。
俺が見た未来が正しければ、あと数秒でここは地獄になる。
助けるか?
いや、無理だ。俺には武器もない。あの距離で銃を取り出されたら、俺も巻き添えになって死ぬ。
(逃げろ。逃げるんだ、リカルド!)
俺の生存本能が、頭の中で警鐘を鳴らした。
ちょうど電車が駅のホームに滑り込み、ドアが開く音がする。
「……悪い、佐藤くん」
俺は震える佐藤の肩を抱く――のではなく、彼を突き飛ばすようにして、開いたドアの隙間へと身体をねじ込んだ。
「え……?」
佐藤の呆気にとられた顔が、スローモーションのように視界を過ぎる。
俺は全速力でホームを蹴った。
非常階段へ。暗闇の奥へ。
一刻も早く、この場所から離れるために。
――ダァンッ!!
背後で、乾いた破裂音が響いた。
直後、女性の金切り声と、怒号が車両の中で爆発する。
俺は振り返らなかった。
心臓が早鐘を打つ。罪悪感が胃の中で暴れまわる。
だが、足は止めない。止まれば死ぬと、右目が告げているからだ。
誰もいない、静まり返った地下通路。
俺は息を切らしながら、非常灯の薄暗い光が続く奥へと走った。
その先に、もっと恐ろしい「捕食者」が待ち受けているとも知らずに。
プロローグをお読みいただき、ありがとうございます。
自分だけ助かるために逃げ出したリカルド。
しかし、逃げ込んだ暗闇には「彼女」が待っています。
次話、いよいよヒロイン「カレン」との再会です。
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