表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/71

学園祭って楽しい?

九月初旬のまだ暑さが残る午後。教室の中で、三年二組の学園祭会議は始まっていた。


前に立つのは、委員長のツバサ。黒髪を後ろでひとつにまとめ、真剣な目つきでクラスの前に立っている。


「では、今年の学園祭のテーマは『挑戦』。私たちのクラスが出す模擬店や出し物も、このテーマに沿ったものが望ましいとされてる。具体的な案を出し合って、最終的には多数決で決めます。異論ある人?」


手が上がる気配はなく、教室は静かだ。


「……よし、じゃあ案をどうぞ。自由に発言してください」


ツバサの言葉に、さっそく手が上がる。


「はいっ!たこ焼き屋! でも、中身がランダムで、チョコとか梅干しとか入ってるの!『挑戦』って感じするでしょ?」


ふわふわのピンク髪が揺れる。サクラが楽しげに言った。


「それ、ただのロシアンルーレットだよね……」


カナデの冷静な声が響く。


「でもでも、楽しそうだよ?運試し的な!」


「胃腸が強くない人には地獄だと思うけど……」


「ま、まぁ、サクラの案は保留で。他には?」


ツバサがフォローを入れて次の意見を促す。


「私は、体験型の謎解き脱出ゲームとかいいと思う。テーマに合うし、最近人気あるし」


分析的な口調で話したのはカナデ。落ち着いた声と整った話し方が特徴で、眼鏡の奥の瞳が淡々と光る。


「うおー、それいいじゃん!」

突然、元気よく声を上げたのはミナト。陽に焼けた肌と爽やかな笑顔を浮かべて、机に身を乗り出す。


「そういうのさ、僕、めちゃくちゃハマるタイプ!仕掛けとかも作ろうよ、床に落とし穴とか!」


「学校に落とし穴作るのはまずいと思うよ、ミナト」


と、カナデがさらりと突っ込む。


「……だよな!でも、小道具とか工夫すれば本格的になりそう!」


「ふふ、ミナトのそういうところ、嫌いじゃない」


ミナトがキョトンとした表情をした。


「いや、ただの評価だから」


「そ、そうだよね……」


ミナトは困ったように頭をかきながらツバサを見る。彼女は無表情で進行してく。


「……次の意見、ある人?」


ツバサの声に、再びカナデが手を上げる。


「例えば、迷路を組み合わせた屋台なんてどう?謎を解かないとたどり着けない食べ物とか」


「それ、いいかも。サクラのたこ焼きとも合わせられるし。正解ルートだと普通のたこ焼き、外れると……」


「チョコたこ焼き!」


「やめてサクラ、それは誰も得しない」


「えー! 美味しいかもよ?」


「たこ焼きにチョコって発想、どうやったら浮かぶの……?」


「サクラだもんな……」


ミナトは苦笑しつつ、ちらりとツバサを見る。彼女の眉間には軽くしわが寄っていた。


「ミナト。あまり脱線させないで。会議、進まないから」


「ごっ、ごめん……でも、そういうのもアイデアとしてはアリじゃない?自由な発想ってやつ?」


「自由と混沌は違うの。少しは考えて」


ミナトは少ししょげたように頷いた。


「じゃあ、今まで出た案をまとめると——」


ツバサは黒板に項目を書き出す。


ロシアンたこ焼き屋台(サクラ案)

謎解き脱出ゲーム(カナデ案)

謎迷路型模擬店(カナデ&サクラ融合案)



「この中から、どれが一番テーマ『挑戦』にふさわしいか、投票を取りたいと思います」


「おー、ついに投票タイムか!オレはあれだな、迷路のやつ!」


「はいはい、ミナトは声が大きいから一票ね。次、サクラは?」


「もちろん!チョコたこ焼き迷路!」


「……それ、名前だけでもうカオスだな」


「私は分析的に考えて、体験型要素の強い謎解き迷路に一票。動線設計も工夫すれば、回転率も上がる」



ーーーー


「では……決まりですね」


ツバサが黒板の前で軽く頷く。


「今年の三年二組の出し物は、『謎解き挑戦迷路』に決定します。準備は多くなるけど、みんなで協力すればきっといいものになるはず。よろしくお願いします」


教室に拍手が起こる中、ミナトが笑顔でツバサに話しかける。


「ツバサ、やっぱお前の進行、完璧だなー。マジで頼れる委員長って感じ」


「……そ、そんなことない。皆が協力してくれたから、うまくまとまっただけ」


「でもさ、ツバサの考え方って、なんか安心する。いつもありがとうな」


そう言われて、ツバサの耳が少し赤く染まるのを、カナデはじっと見つめていた。


「(……この程度で照れてるようじゃ、まだまだね、ツバサ)」


それぞれの想いを胸に秘めながら、学園祭準備という長い戦いが、静かに始まっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ