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雨音カタル、季節のシンフォニー

ジメジメとした梅雨の午後。校舎の窓からは、曇天としとしと降る雨。そんな中、ミナトは脳天気にも、ふと思った。



ミナト(独り言)「梅雨ってさ、悪くないよな。水たまりに映る空とか、雨の音とか……なんかロマンあるよね?」


(スマホを取り出してメッセージを打ち始める)


《グループチャット:『放課後の五重奏クインテット』》


ミナト「おいみんなー! 四季ってめっちゃ面白くね!? 春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬はこたつ。天才か日本。」


ミナト「しかも今は梅雨だぜ!? 雨音聴きながら読書とか、傘の下での遭遇イベントとか最高すぎる!!」


ミナト「よし!お前らの“好きな季節とその楽しみ方”教えてくれ!」



ツバサ「は?」


カナデ「唐突すぎて情報処理が追いつかない」


サクラ「えーと……これはクイズ? それとも詩の発表会?」


ミコト「また始まった。ミナト先輩、連絡のテンションと内容の乖離が毎度激しすぎます」



ミナト「いやでもさ、こういうの大事だと思うんだよ!ジメジメしてるからって気持ちまで湿気らせてたら、梅雨に負けてるじゃん!」



ツバサ「ミナト、それ論理的に破綻してる。湿気と気分には直接的な因果関係は存在しない。が、まあ……わからなくもない。」


カナデ「共感性羞恥を覚えつつも、興味深い主題だと思う。季節と感情の相関性についてのデータ、実は持ってる。」


サクラ「うわー!私、冬が好き!雪だるま作れるし!あとマフラーがモフモフ!」


ミコト「サクラ先輩、冬にテンションが高くなるのは光合成できない植物と一緒ですよ」



ミナト「いいねいいね〜!こういうの待ってた!もっとちょうだい!」


ツバサ「私は……春、かな。新学期ってだけで頭も心もリセットされる感じがする。桜並木も綺麗だし」


ミナト「おお!ツバサが春って意外だな!てっきり、理詰めで“秋は気温が安定していて衣服選びに合理的”とか言うと思ってた!」


ツバサ「な、なんで勝手に私をそういうフィルターで見るの!?」


カナデ(独り言)「それはツバサが合理主義者だから。けど春を選んだのは……多分、感情が揺れ動く時期だからだよね」


ミコト(カナデを見て小さくうなずく)「(……やっぱりカナデ先輩、ツバサ先輩のこと、よく見てる。)」



サクラ「じゃあじゃあ!夏は!?海水浴!スイカ!花火大会!」


ミナト「サクラのテンション、上がりすぎ!スイカは叩いて割る派?」


サクラ「スプーンでほじる派!」


ミコト「論点がスイカの食べ方になってますが、話を戻しましょう」



カナデ「私も夏。理由は単純で、観察対象の行動が一番活発になる季節だから」


ツバサ「観察対象?」


ミナト「……もしかして、昆虫?」


ミコト(小声で)「……ツバサ先輩のことですよ」


カナデ(チラッとミコトを見る)「……その通りよ」


ツバサ「え、何それ……カナデ、私を観察してたの?」


カナデ(あっさり)「うん。かなり前から」


ミナト「なんかすごい展開になってない!?」



ミコト「……じゃあ私も言いましょう。好きな季節は……秋。静かで、落ち着いて、色も深くて、感情を整理しやすいから」


ミナト「さすがミコト、冷静すぎて風景が水墨画で浮かんだわ」


ツバサ「でもミコトが『感情を整理』って言うの、なんか意外かも」


ミコト「……ミナト先輩への感情を、秋は一番見つめやすいんです」



一瞬、空気が止まる。



サクラ「わー!なんか今のセリフ、映画のセリフみたーい!」


カナデ「ミナト、何か言うべき」


ミナト「え、あ、うん……ミコト、前にもそういうこと言ってくれたよね。でも僕……」


ミコト「答えは要りませんよ。私はただ、気持ちを伝えられて満足なんです」




ツバサ(目をそらしながら)「……ミナト、あんた、ほんと……ずるい」


ミナト「え?なんか言った?」


ツバサ「なんでもない。」



ミコト「ツバサ先輩。あなたも、ミナト先輩を観察してますよね」


ツバサ(動揺)「は、はぁ!? な、なにそれ! 意味わかんない!」


カナデ(ニヤリ)「否定はしてない」



ミナト(頭をポリポリ)「うーん、なんか急に話が難しくなってきたぞ。俺はただ、梅雨を明るく乗り越えたかっただけなんだけどなぁ」



サクラ「でもなんか、楽しくなってきた!私、来週てるてる坊主作ってくる!」


カナデ「私、ツバサの行動傾向をまとめたエクセル更新しとく」


ツバサ「勝手に観察すんな!!」


ミコト「私は……また一つ、ミナト先輩の『脳天気さ』というサンプルが増えました」


ミナト「ありがとな!?それって褒めてる!?」




《数時間後、グループチャットにて》


ミナト「みんなのおかげで、今日ちょっとだけ、雨が好きになったかも」


ミコト「それは良かったです。先輩が変化を感じられるなら」


カナデ「季節も、感情も、循環するもの。今はまだ『梅雨』の途中」


サクラ「じゃあさ、次は『夏祭り』の計画たてよーよ!」


ツバサ「そうね……そっちはちゃんと計画立ててから連絡して、ミナト」


ミナト「へい、論理的上司!」



ミナト(独り言)「四季って……やっぱ面白いな」


雨音の中、スマホの画面を見つめながら、ミナトは小さく笑った。


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