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混沌の先にある金メダル

陽気が心地よく吹き抜ける土曜日の午前。


ミナトたちは学校主催の「謎解き宝探しイベント」に参加するため、中庭に集合していた。


「よーし!今日の金メダル、ぜったい俺らがゲットするぞーっ!」


元気に拳を突き上げるのは、我らが脳天気代表、ミナト。頭の中はすでに優勝のイメージでいっぱいだ。


「根拠のない自信って、すごくポジティブに見えるけど……思考放棄の可能性もあるのよね」


隣で淡々と毒を吐くのは、論理派ツバサ。彼女は資料を読み込むようにスマホ画面を見つめている。


「わぁ~この地図、なんか『トレジャーアイランド』っぽくてワクワクするねぇ~」


天然ボケのサクラは地図をくるくる回しながら、方向が分からなくなってまた最初の角度に戻す。既に迷子の兆候が出ている。


「サクラ、地図は回さずに固定して。そうすれば方位がブレないから」


冷静に指摘したのはカナデ。眼鏡の奥の瞳が光る。観察と分析が彼女の得意技。


その様子を、少し離れたベンチで見守っているのがミコト。スマホを手に、まるでオペレーターのように彼らの動きを見守っていた。


「……観察対象(ミナト先輩)は、今日も絶好調ね。バカすぎて安心する」


ポツリと呟いたミコトは、スマホに届いた暗号を確認する。そこには「暗号その1」が表示されていた。



<暗号その1>



『1→A、3→C、5→E、ならば 19→?』




「これって……アルファベットだよね?19番目って……なんだ?」


ミナトが眉を寄せる。数字には滅法弱い。


「19番目は『S』だよ。Aが1番目、Bが2番目、Cが3番目……だから順番にいけば簡単」


即答したのはツバサ。彼女の頭の中には常に情報が整理されている。


「……うん、でも、これが何に繋がるのかが大事だよね」


とカナデが呟く。彼女のスマホにはすでにメモがいくつも書かれていた。


「Sってことは、『スタート』のSかもよー!宝探しだし、最初の地点って意味とか!」


サクラの発言に一瞬沈黙が走る。


「……え、それ、もしかして、天才?」


「うん、たまには当たるんだよね~、ふふ~」


サクラは鼻歌交じりで笑った。


「いや、サクラはすごいこと言ったよ。『S』が示すのがスタート地点とすれば、地図のS地点を探すべきだわ」


ツバサがマップ上にある小さな『S』マークを指差す。それは旧校舎裏の倉庫のあたりだった。


「さて、次の暗号も見てみるか!」


ミナトがスマホを操作すると、2つ目の暗号が表示された。



<暗号その2>



『A→1、Z→26、ではM+Nは?』




「えっと……Mは13番目、Nは14番目……だから27?」


ミナトが珍しく正解っぽいことを口にする。


「そうだけど……27って、26までのアルファベットには無い数字。つまり、1周超えてる」


「……ってことは、1になる?Zの次がAって感じで?」


とサクラが首をかしげながら言う。


「そう。これはたぶん、アルファベットを数値として考えて、循環型の加算方式をとってる。だからM(13)+N(14)=27、27-26=1、つまりAってことね」


とツバサがまとめると、ミナトは「ほぉ~~」と声を漏らした。


「つまり、最初の答えが『S』、次が『A』……これ、文字を集めていくのかも?」


カナデの仮説に、全員がうなずいた。



<暗号その3>



『鏡に映したら同じ形のアルファベットを3つ選べ』




「えーっと、Aは……ダメだよね?左右で違うし……」


ミナトが苦戦するなか、サクラが「OとかSとか?」と呟いた。


「Oは確実に対象。Sは微妙だけど、上下なら対称。Eは違う」


「O、X、I。これが対称性が高いアルファベットだと思う。鏡に映しても形が変わらない」


ミコトがベンチから、ぽつりと呟いた声がツバサのスマホに届く。


『ミコトからアシストが来たわ。O、X、Iで確定』



<暗号その4>



『「日」「月」「火」…続けて5番目の漢字は?』




「曜日だね!『日、月、火、水、木』……5番目は木!」


「木って……アルファベットじゃないよね?」


「たぶん、これは日本語の答えが求められてる。もしくは、曜日の頭文字で考えるなら……日→S(Sunday)、月→M(Monday)……木曜日はThursdayでTか!」


とツバサが解説。


「なるほどー、じゃあTか!」



<暗号その5>



『次の言葉に共通する文字を答えよ:「Cat」「City」「Circle」』




「Cじゃん!」


「即答だな、サクラ……でも正解」


とカナデが微笑む。



集まった文字は「S」「A」「O」「T」「C」……。


「えーっと、これって並び替えるのかな?」


「たぶんね。で、地図のポイントと照らし合わせれば……『SATO C』?」


「いや、『COAST』じゃない?」


「それだ!!ツバサ天才!」


「いや、それより先にカナデがヒント出してたような……」


「ま、結果オーライってことで!」


とミナトが叫ぶと、全員が笑いに包まれた。



ーーーー

その後、地図を頼りに「COAST」と記された旧体育館裏の場所へ向かう4人。


そこには学校が用意した『金メダル』が、日の光を浴びてきらきらと輝いていた。


「やったーーーー!!金メダルーー!!」


「奇跡だな、ここまで来れたの」とカナデが呟く。


「いや、奇跡じゃなくて、努力と混沌の賜物だわ」


とツバサが呟き、サクラが「たまものって、お菓子?」と首をかしげる。



そんな一部始終を見届けたミコトは、スマホ越しにため息をついた。


「……ほんと、目が離せないわ、ミナト先輩。三度目の告白、あるかもね」


ベンチの影で、そっと微笑んだ。


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