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躍動するプリンと、甘い午後

「うおおおおおおお!!!」


放課後、教室中にミナトの叫び声が響いた。


「……またか」


ツバサが、教科書を閉じながらため息をつく。


「今度は何? 机に手が挟まったとか?」


カナデが興味深そうに顔をあげた。


「違うんだって!これ見てよ!」


ミナトはスマホを掲げ、みんなに画面を見せた。


表示されていたのは、全国高校生写真コンクール・佳作受賞のお知らせ。


「……え?ほんとに受賞してる……」


サクラが目を丸くする。


「まじで?あの、“躍動するプリン”の写真で?」


カナデが思い出したように口を開いた。


「そう、それ!清流の前でプリンがジャンプしてるやつ!」


「いや、プリンはジャンプしない」


ミコトが即座にツッコむ。


「そうだよな。ツバサ!これは奇跡だよね!?俺、やったよね!? 」


「奇跡というより……うん、偶然の産物ね。構図は面白いし、水しぶきの具合が予想以上にリアルだった。あとプリンの崩れ具合に動きがあったのが評価されたんだと思うわ」


「だよなー!やっぱ俺、天才かも!」


「いや、落としたプリンが偶然きれいに写っただけって自分で言ってたじゃん……」


カナデがメガネをクイッと上げた。


「そ、それは結果論というやつで……」


「で、賞金っていくらもらえるの?」


サクラが首をかしげる。


「ふっふっふ……2万円!!」


「わあー!!プリンで2万円もらえるんだー!サクラもなんか落とそうかなぁ」


「やめときな、それはただの事故になるから」


ミコトが冷静にツッコミを入れる。


「でさ、せっかくだから……みんなでスイーツでも行かない?おごるよ!」


「(即答)行く!」


ツバサがぴしっと手を挙げた。


「甘いものは正義だもんね!」


「さすがミナト、男気見せたな……」


「珍しく、ね」


みんなの視線がミナトに集中し、本人はやや照れくさそうに笑った。



ーーーー

<スイーツショップ・甘味工房すずらん>


休日の午後、ミナトたちは駅前の人気スイーツ店に集まっていた。


「わぁ、見て見て!パフェが虹色になってるよ!」


サクラがガラスケースにへばりつく。


「これは……一つのグラスに7種類のフレーバーを層状に配置してるのね。上から順に、ラズベリー、ブルーベリー、抹茶、柚子、ミルク、ショコラ、そして謎の黒いゼリー……なにこれ?」


カナデが凝視して分析していた。


「それ、たぶん……イカスミゼリーらしいよ」


ツバサがメニュー表を読みながら答える。


「甘いのかしょっぱいのか分かんないね……」


「いや、イカスミは普通甘くしないでしょ」


ミコトがまた冷静なツッコミを入れる。


「えっと、私はこの“天空のショートケーキ”がいいなぁ〜。見て見て、雲の形してる〜ふわふわ〜」


「天空って、どうやって運んでくるんだろう……」


サクラの天然発言に、カナデとツバサが顔を見合わせて笑う。


「それよりミナト、注文はどうするの?おごるんでしょ?」


ツバサがにやっと笑う。


「もちろん!お好きなのをどうぞー!」


「じゃあ私は“理系のためのチーズケーキ”にする」


「なにそれ」


「計算式がチョコで書かれてて、ベースの層がπ分の3……とか、もう最高じゃん」


「どんな味か想像できない……」


カナデがうっとり見ていた。


「私は“感情の起伏パフェ”にしようかな。最初は激甘、途中で苦いエスプレッソゼリー、最後にさっぱりレモン。まるで人間関係みたい」


ミコトが淡々と告げた。


「わたしは“お花畑プリン”にするー!お花いっぱいで食べるのもったいない〜!」


サクラが手を叩いて喜ぶ。


「ツバサは?」


「“量子パフェ”。食べるまで味が分からないらしい」


「それ、もはやスイーツじゃなくてギャンブルだよね……」


ミナトは苦笑しつつも、店員に注文を伝えに行った。



ーーーー

10分後、テーブルの上は芸術的にも混沌的にも見えるスイーツたちで埋め尽くされていた。


「これが……天空……本当にふわっふわだぁ……」


「サクラ、フォークを空中で振っても取れないよ」


「でも夢があるじゃん?」


「現実を見ような」



「ちょ、ツバサ、その量子パフェ、青く光ってるけど大丈夫?」


「うん、なんか味は……ミントとワサビと……あ、あとグレープフルーツ?」


「それハズレじゃん」


ミナトが爆笑する。


「ミナト、あんたもなんか頼みなよ」


「俺?じゃあ“躍動プリンプレミアム”ってやつにしよっかな」


「……それ、まさか……」


「うん、あの俺の受賞作をモチーフにした新作スイーツらしい」


「完全にネタ化されてるじゃん……」


カナデがツッコミながらも写真を撮っていた。


「ねぇ、あれ撮ろうよ!プリン跳ねる瞬間!」


サクラがスマホを構える。


「まじか、またやるの!?」


「いいから!ミナト、せーのって言って!」


「せーの!」


プリンが空中に投げられ――


「撮ったーーー!!」


「ミナト、今度は賞金じゃなくて皿代請求されるかもよ」


ミコトが静かにそう呟いた。



ーーーー

「いやー、今日めっちゃ楽しかったな……!」


ミナトが帰り道で呟いた。


「うん、あんたにしてはナイスな日だったわ」


「天才だったね、躍動プリン」


「もう一回投げたら佳作じゃなくて入選いけるかも」


「それ以上やるとただの食品ロスよ」


「わたしは食べる担当〜♪」


それぞれが言いたいことを言いながら、笑い合う。


スイーツの甘さと、ちょっとだけ青空の名残が残る夕暮れ。


ミナトはなんだか誇らしい気分だった。


たとえ理由が躍動するプリンでも、こうして笑ってくれる仲間がいる。


それだけで、今日は特別だった。


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