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ツバサの想いと相性診断アプリ

夜——静寂が部屋を包む中、私は眠れずに天井を見つめていた。


枕に頭を埋めても、目を閉じても、耳の奥で心臓の鼓動が響き続ける。もう2回もミコトはミナトに告白している。


そう思った瞬間、私の中で何かが静かに、でも確実に揺れた。ミナトのことが特別だと、薄々気づいていた。


ミコトは後輩。いつも明るくて、無邪気で、誰とでもすぐに打ち解ける子。私がミナトと話しているときにも、たまに廊下ですれ違っては手を振り、屈託のない笑顔で挨拶してきた。


——数日前、昇降口でのこと。


「先輩、おはようございます!」


ミコトは元気よく声をかけ、ミナトに自然に寄っていった。ミナトは能天気な笑顔で「ああ、おはよう!」と返し、気軽に軽口を叩く。そんな二人のやりとりを、私は少し離れたところから見ていた。


胸の奥で、かすかな違和感が芽生えたのは、その瞬間だった。


スマホが震える。


【ミナト】「ツバサーー!今日もお疲れ!明日、また一緒にお昼食べよーね!なんか楽しい話いっぱい考えておくから!」


そのメッセージには、変わらないミナトの無邪気さが詰まっていた。でも、今の私はどう返事をしていいのか分からない。指が震える。何度も書いては消す。


『うん、楽しみにしてる』……シンプルすぎる。今の気持ちには重たく響く。


『もちろん!ミナトと一緒なら何でも楽しいよ!』……それは本音。でも、素直になれない。削除。


スマホを伏せ、深呼吸する。


「考えよう、冷静に。私は何に動揺しているの?」



「ミコトの告白が私を動揺させたのは、ただの驚きだけじゃない。私は……」


「私は、ミナトのことが……好きなんだ。ミコトの行動が、私自身の気持ちをはっきりさせてくれた。気づかないふりをしてきたけど、もうごまかせない」


深呼吸をもう一度。胸のざわめきが少しずつ静まっていく。


「でも、この気持ちは焦って伝えるものじゃない。大切なのは、私が私自身に正直でいること。ミナトの答えがどうであれ、この気持ちは私の中で大切にすればいい」


再びスマホを手に取り、メッセージを打つ。


『うん、楽しみにしてる。デザート、ありがとう』


シンプルだけど、今の私にとっては十分な言葉。深く息を吸って、送信ボタンを押す。今度は、迷わず押せた。


送信済みの表示が出た瞬間、胸の奥でふわりとした安堵感が広がった。ミナトへの気持ちは揺るがない。ミコトの告白があっても、私の気持ちは私だけのもの。


スマホをそっと伏せて目を閉じる。まぶたの裏に浮かぶのは、ミナトの無邪気な笑顔。でも、今はその笑顔が、一層愛おしく思える。


——そして、私は穏やかな眠りへと落ちていった。



翌日の放課後の教室で、ミナトはプリンとポテチの斬新な組み合わせに思いを巡らせていた。その思考を遮るように、ツバサの鋭いツッコミが飛ぶ。


「ミナト、また変な食の実験?プリンとポテチって、味覚の冒険どころか戦争じゃない?」


ミナトが振り向くと、ミコトがスマホを掲げて立っていた。


「サクラから面白いアプリが届いたの!その名も『ズバリ!恋の相性占い』!」


「相性占い?そんなの信じられるわけないし!」とツバサが鼻で笑うが、興味津々の様子。


まずはミコトがミナトとの相性を占う。結果は——


「じゃーん!78%!」


詳細な結果:

総合相性: ★★★★☆(78%)

コミュニケーション: 自然体で会話が弾む。お互いの冗談にもすぐに反応できる。

感情的なつながり: 一緒にいるだけで楽しく、時々ドキドキする瞬間が訪れる。

未来予測: 笑顔が絶えない関係が期待できる。


ミコトは得意げに胸を張る。「ほら、やっぱり先輩と私は相性バッチリ!」




負けず嫌いのツバサは即座に反応。「ふん、そんなの偶然よ!私もやる!」


ツバサの結果は75%。

総合相性: ★★★★☆(75%)

コミュニケーション: 率直で鋭いツッコミが特徴。お互いに遠慮なく意見をぶつけ合える信頼関係。

感情的なつながり: 表面上はクールでも、内心では深く理解し合う絆が芽生える。

未来予測: 長く安定した関係を築きやすい。




ツバサは不満げにスマホを睨む。「3%差?これは誤差の範囲内!」


ミコトはにやりと笑う。「誤差じゃないもん。これが運命の差ってやつ!」


二人の言い合いはどんどんヒートアップ。


「ミナト先輩、私と話してる時の方が楽しそうだったもん!」


「いやいや、ミナトは私のツッコミにいつも笑ってるし!」


ミナトは呆れ顔で二人を見ていたが、ついに手を挙げて仲裁に入る。


「ちょっと待って!君たちは…何をそんなに真剣に?」


二人ははっとしてミナトを見る。


「アプリの結果なんておまけみたいなもんだよ。大事なのは、実際の関係だと思う」


その言葉に、ツバサとミコトは少し静まり返る。


しばらく沈黙が続いた後、ミコトが小さな声でつぶやく。「…ツバサ先輩、私、あなたのツッコミ、実はけっこう好きなんだ。いつも場を明るくしてくれるし」


ツバサは驚いた顔をしながらも、少し照れくさそうに口元を緩める。「あなたのポジティブさ、悪くないって思ってた。むしろ、羨ましいって思うこともあったし」


二人はお互いに目を合わせ、ふっと笑い合った。


「私たち、案外いいコンビかもね」とツバサがつぶやく。


「うん、ミナト先輩のおかげで気づけた!」とミコトが微笑む。


ミナトはその様子を見て、心の中でほっと安堵する。そして、再びプリンとポテチに思考を戻し、静かに思う。


「…結局、相性って、数字じゃないんだよな」


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