転入クラスで自己アピール
翌日、ミナトはスマホの通知で「新しいクラスで自己紹介をする」と知らされ、少しだけ緊張しながら教室へ向かった。
教室のドアを開けると、光が差し込む中、整然と並んだ机と椅子、そして生徒たちのざわめき。ミナトが一歩踏み出した瞬間、自然と周囲を見渡す。そのとき、二つの視線とバッチリ目が合った。
サクラ(満面の笑みで手を振る):「やあ!」
ツバサ(冷静な表情、しかし目だけは鋭く光る):「……(小さくうなずく)」
ミナト(心の声):(おお、知ってる顔が二人も!…いや、濃すぎる二人とも!)
他のクラスメートたちは初対面。女子はみんな可愛く、男子もモデルのような雰囲気を持つ者が多かった。
ミナト(内心):「さすが一流学校…なんか顔面偏差値が高すぎるぞ。俺、間違えてドラマのセットに迷い込んだ?」
そんなことを考えているうちに、担任の先生が登場。
先生:「はい、静かにー!転入生を紹介します。自己紹介をどうぞ」
ミナトは前に出ると、微妙な緊張と脳天気な自信が入り混じった笑顔で立つ。
ミナト:「皆さん、こんにちは!転入生のミナトです!」
(ここで突然、ミナトの妄想モード突入)
教室がコンサート会場に一変。スポットライトがミナト一点に集中し、BGMは壮大なファンファーレ。クラスメートたちは熱狂的なファンとしてペンライトを振り、熱い歓声が響く。
クラスメートA(妄想内):「ミナト様!人生変わりました!」
クラスメートB(妄想内):「サインください!あと、握手も!」
ミナト(妄想内、ドヤ顔で):「いやいや、みんな、落ち着いて。僕はただの転入生さ!」
現実に戻る。
(実際の教室では、静寂。そして数名が眠気と戦っている。)
ミナト(現実):「…えー、特技は寝坊しないこと!ただし目覚まし時計が5個あるとき限定です!」
(沈黙の後、誰かが微かに咳払い。サクラだけが全力で拍手。)
ミナト(再び妄想モード突入):「この反応…きっと、感動で言葉を失っているに違いない!」
妄想内では、ツバサが涙目で「君は…真の天才だ!」と叫び、サクラが「ミナト、君は伝説になる男!」と讃えている。
現実に戻る。
ツバサ(冷たい目で):「……くだらない」
クラスメートたちは苦笑したり、くすくすと笑い始めた。そして、教室全体が少しだけ柔らかい雰囲気に包まれる。
ミナト(心の声):(…おお、意外とウケた?これは新学期、大成功フラグかも!)
こうして自己紹介が終わると、空いているサクラの隣の席に着席して前を向く。
すると、スマホに怒涛の着信が入り始めた。
送信元はサクラからだった。
『ミナトくん、今、真顔で前向いてるけど…頭の中は「昼ごはんにカレー、いやラーメン、いやいや…宇宙食?」って考えてるでしょ?』
ミナト(心の声):(おい、なんでバレてる!?いや、宇宙食って選択肢、俺の脳内にもなかったし!)
驚きながらも、ミナトは必死に表情を保つ。しかし、サクラから再び着信。
『もしかして「もし今日の授業が全て逆再生で進行したらどうしよう」って心配してる?』
ミナト(心のツッコミ):(心配するか!それ、授業じゃなくてホラー映画の演出だよ!)
肩を震わせるのを必死にこらえ、再びスマホを見ると新たなメッセージが届いていた。
『それとも…「教室の机が実は全員スパイで、全ての宿題を監視してる」とか思ってる?』
ミナト(さらに鋭い心のツッコミ):(机がスパイなら、俺の落書きノートは極秘文書扱いか!)
もう限界。ミナトは顔を伏せて必死に笑いを堪えるが、肩がピクピク震え続けている。
さらに追撃メッセージが届く。
『あ!もしかして「今、地球は実は巨大なドーナツで、私たちはその上に住んでいる」説を考えてる?』
ミナト(心の叫び):(考えてない!地球がドーナツなら、俺はどこに住んでんだよ、クリーム部分か!?)
その後、授業が終わると、サクラは満面の笑みでミナトに近づいてきた。
「ねぇ、私たち、もう友達ってことでいいよね?だって心のWi-Fi、バリ3で繋がってるし!」
ミナトはわざと真剣な表情を作り、腕を組んで深くうなずく。
「うーん…でもそのWi-Fi、不安定じゃない?時々、ギャグが圏外になるんだけど」
サクラは即座に「大丈夫!ギャグは無制限プランだから!」とドヤ顔で答える。
ミナト(心のツッコミ):(無制限どころか、暴走モードじゃないか!)
クラスメートたちも吹き出す中、こうしてミナトとサクラの予測不能な友情の日々が、正式に幕を開けたのだった。
もちろん、その後すぐに担任の先生のお叱りを受けたミナトとサクラであった。