ご機嫌取り大作戦!
林間学校から帰った翌日、ミナトは廊下でミコトとすれ違った。しかし、ミコトは冷たい表情で視線も合わせず通り過ぎた。
ミナト(心の声):(あれ?今、僕、透明人間になった?いや、絶対ここにいるはず!)
気になったミナトは、ツバサのもとへ直行。
ミナト:「ツバサ、大事件発生!ミコトが僕を無視した!」
ツバサ(冷静に):「普通の対応では?考えてみて、日常的にあなたの言動は人の反応を超えがちだから」
ミナト:「いや、今回は本当に氷河期レベルだ!」
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ミコトは自室で静かにスマホを見つめていた。
ミコト(内面独白):
「なぜ、あの時メッセージをくれなかったの?林間学校の間、少しだけでも…ただ一言でよかったはずなのに」
「私は別に、特別な期待をしていたわけじゃない。けれど、気づいてしまった——私が期待していたことに」
ミコトはスマホを伏せ、深くため息をつく。
「くだらない。こんな感情、理屈じゃない。ただの誤差、ノイズのはず。でも、なぜこんなに胸がざわつくの?」
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ご機嫌取りミッション開始。
<お菓子作戦>
ミナトはツバサとともにミコトを訪ねる。
ミナト:「ほら!スマイルクッキー!食べたら機嫌もスマイル100%!」
ミコト(無表情で一瞥)
ミコト(内面独白):
「バカみたい。でも…このわざとらしい笑顔、少しだけ、眩しいなんて思ってしまうのはなぜ?」
「甘いものは今、必要ありません」
ミコト(心の声):(本当は、少しだけ嬉しかった。でも、許すにはまだ早い気がする)
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<知的会話作戦>
ツバサ:「最近の量子コンピュータの進化についてどう思う?」
ミコト:「……特に興味ありません」
ミコト(内面独白):
「興味がないわけじゃない。ただ、今は別のことで頭がいっぱいで…それを認めるのが悔しいだけ」
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<即興劇作戦>
ミナト:「もうこうなったら最終手段!」
ミナトとツバサは即興で寸劇を始める。
ミナト(大げさに):「私はミナト星から来た迷子の王子!」
ツバサ(仕方なく付き合う):「そして私はツバサ星の…冷静な参謀」
ミコト(無表情で見つめる)
ミコト(内面独白):
「バカみたい。でも、目を逸らせないのはなぜ?こんなにも滑稽なのに、胸が少しだけ温かくなるなんて…」
ミナトが盛大に転び、派手にこける。
ツバサ(思わず吹き出し):「……ぷっ」
ミコト(口元が緩む)
ミコト(内面独白):
「……ほんと、バカ。でも、バカなりに必死だったこと、気づいてしまった。悔しいけど…それが妙に、愛おしいなんて思ってしまう」
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帰り道、ミナトは満足げに伸びをする。
ミナト:「やっぱり、笑顔が一番!作戦大成功!」
ミコトはふと立ち止まり、振り返る。
ミコト:「……ありがとう。バカですね、本当に」
ミコト(内面独白):
「だけど、そのバカさが、私の心を少しだけ軽くするのも事実。もう、しょうがないな……」
その一言に、ミナトは勝利のガッツポーズ。
ミナト(心の声):(やった!氷解成功!僕、今日だけは“心の融解師”かも!)
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今日、ミナトに付き合ってミコトの機嫌を直したことについて、ツバサは少し考えてしまった。
ミコトが後輩であり、自分の気持ちを素直に伝える姿勢を見るたびに、ツバサの心は複雑な感情で満たされていった。
「私は冷静でいなければならない。感情に流されるのは私らしくない」
ツバサはそう自分に言い聞かせていた。しかし、ミナトがミコトに向ける優しい眼差しや、気遣う言葉の一つ一つが、ツバサの心に小さな波紋を広げていく。彼女は自分の気持ちを封じ込め、ミコトの先輩として、ミナトの友人として、冷静な姿勢を貫こうとしていた。
「私はただの先輩で、ミナトの近くにいるだけの存在」
ツバサは自分にそう言い聞かせていたが、心の奥底ではその言葉が虚しく響いていた。ミコトの素直な告白と真摯な姿勢は、ツバサにとって憧れであり、同時に嫉妬の対象でもあった。自分もそんなふうに、素直に気持ちを伝えられたらどれだけ楽だっただろう、と。
たとえ自分の気持ちが報われなくても、逃げずに向き合うことが大切だということに。ミコトの存在は、ツバサにとってただの後輩ではなく、自分の感情と向き合うきっかけとなる存在だった。
友情と恋心、先輩としての立場、そして一人の人としての素直な気持ち。そのすべてがツバサの中で静かに交差していた。




