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語り尽くす会

休日の午後、サクラに呼び出されたツバサとミコトは、静かなカフェの片隅に並んで座っていた。薄暗い店内に優しく差し込む陽射しが、テーブルの上のカップに反射して小さな光を作る。だが、その穏やかな光景とは裏腹に、ツバサの心には波紋のような揺らぎが広がっていた。


<開始の一言>


サクラ(明るく):「さて、今日の議題は……『ミナトについて語り尽くす会』!」


ツバサ(冷静な表情で):「……また唐突なテーマね」


内心では、その名前が出た瞬間、胸の奥が微かにざわついた。


ツバサ(心の声):「また……ミナト、か。別に気にする必要はない。ただの議題に過ぎないはず……」


ミコト(静かに頷いて):「了解です」


ミコトの落ち着いた返事に、ツバサはふと視線を向ける。その姿に、心の奥で針のような小さな痛みを感じた。



< 討論のはじまり>


サクラ:「じゃあ、ミナトのどんなところが気になる?」


ツバサは一瞬、言葉を選ぶために沈黙し、カップの縁を指でなぞる。


ツバサ:「……彼は、論理的に説明しづらい存在よね。無駄に前向きで、予測不能で……それなのに、周囲を引き込む力がある」


ツバサ(心の声):「なぜ、こんなにも簡単に言葉が出ない?ただのクラスメイトについて語るだけなのに……」


ミコトはさりげなく深呼吸しながら、静かに答える。


ミコト:「私は、彼のまっすぐな部分に惹かれました。素直で、ぶれない気持ち。それが羨ましいんです」


その言葉に、ツバサの胸が少しだけ締め付けられる。


ツバサ(心の声):「羨ましい?……確かに、彼の無邪気さは時に眩しい。でも、羨ましいだけじゃない。なぜ、こんなにも気にしてしまうの?私は彼に何を求めている?」


サクラ(無邪気に):「ねえ、ツバサはミナトのこと、どう思ってるの?特別な気持ちとか、あったりして?」


その問いに、ツバサは一瞬だけ視線を逸らす。しかしすぐに冷静さを取り戻し、淡々と答える。


ツバサ:「……彼は、ただのクラスメイトよ」


ツバサ(心の声):「ただのクラスメイト。そう、ただの……でも、どうしてこの言葉が喉の奥で重く響くの?真実なら、もっと簡単に言えるはずなのに」


サクラは気づかぬふりで微笑み、ミコトは静かにカップを持ち上げる。その沈黙の中で、ツバサの心は静かに揺れていた。


サクラ(まとめるように):「ミナトって、みんなの心に不思議な影響を与えるんだね。それが彼の魅力なのかも!」


ツバサ(小さな微笑みを浮かべて):「……そうかもしれないわ」


ツバサ(心の声):「認めたくない。けれど、この揺れは確かに存在している。私は彼に何を求めているのか……答えはまだ、見つからない」


言葉には出さずとも、ツバサの心には確かな“何か”が芽生えていた。それは論理では解けない、けれど確かに存在する感情だった。



彼女はその感情を論理的に整理し、段階的に展開することで理解しようと試みた。


ツバサ:「感情というものは、一見混沌としたものに思えるが、実際には一定のパターンとメカニズムが存在する。まず、感情は大きく分けて『基本感情』と『複合感情』に分類できる。基本感情とは、喜び、悲しみ、怒り、恐怖、驚き、嫌悪など、人類共通の根源的な感情だ。一方、複合感情は、これらの基本感情が組み合わさることで生まれる。例えば、嫉妬は怒りと不安の融合、感動は喜びと驚きの複合体とも言える」


ツバサはスマホを取り出して、アプリを用いて図を描き始め、感情の相関関係を示した。


ツバサ:「次に、感情の発生メカニズムについて考えてみよう。感情は『認知評価理論』に基づいて説明できる。この理論によれば、私たちは外部刺激を受け取ると、まずそれを無意識的に評価する。その評価の結果として感情が生じる。例えば、突然大きな音が聞こえたとき、まずそれを“危険かどうか”と瞬時に評価し、危険と判断すれば恐怖という感情が生まれる。逆に、安全と判断すれば、単なる驚きで終わる」


サクラは一生懸命うなずいているが、すでに頭の中はカラフルなイメージでいっぱいだった。


サクラ:「なるほど、つまり感情って、心の中の化学実験みたいなものだね!怒りは“イライラ液”と“不満粉末”を混ぜたら爆発する、みたいな?」


ツバサは一瞬眉をひそめたが、すぐに冷静さを取り戻して答えた。


ツバサ:「……厳密には化学実験とは異なるが、比喩としては理解しやすいかもしれない。重要なのは、感情がただの衝動ではなく、個人の経験や価値観、状況判断に基づいて形成されるという点だ」


ミコトはそんな二人のやり取りを静かに見守りながら、ツバサが抱えている本当の気持ちを察していた。論理的な説明の裏にある、整理しきれない感情の存在を感じ取っていた。


ミコト(心の声):(ツバサ先輩は感情を論理で制御しようとしている。でも、感情は必ずしも論理だけで語れるものではない。それに気づいたとき、彼女は少しだけ自分に優しくなれるのかもしれない)


ツバサはサクラの天然発言に思わず微笑みながら、最後に付け加えた。


ツバサ:「……結局のところ、感情は完全に解明することはできない。だからこそ、人間らしさがあるのかもしれないな」


その言葉に、サクラは大きくうなずき、ミコトは静かな微笑みを浮かべた。


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