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揺れる心の交差点

放課後、淡い夕陽が教室の窓から差し込む中、ツバサは静かな廊下のベンチに腰掛けていた。冷静さを保つその瞳の奥では、ミコトの告白を邪魔するような自分の行動への疑問が渦巻いていた。論理では割り切れない感情が心の奥でさざ波のように揺れている。


そんな沈黙を破るように、ミナトの明るい声が響いた。


「ツバサ!ここで世界の謎を解いてるのか?」


振り返ると、ミナトが無邪気な笑顔で立っていた。その存在はあまりにも自然体で、ツバサの冷静さを優しく揺さぶる。


「……少し考え事をしていただけ」


「考えすぎると脳がねじれるって知ってる?僕なんて昨日、考えすぎて地球が逆回転した気持ちになったよ!」


「……物理的に不可能よ」


ツバサの冷ややかな返答にも、ミナトは気にすることなく隣に腰を下ろす。その無防備さが、ツバサの心の揺れをさらに際立たせていた。


一方、少し離れた場所から二人を見つめていたミコト。彼女の胸の内では、控えきれない感情が押し寄せていた。


(私は、もう気づいている。この気持ちはただの興味や観察ではない。ただ——怖かっただけ)


心臓の鼓動が速まるのを感じながら、一歩ずつ二人に近づく決意を固める。足取りは軽く見えても、内心は不安と緊張でいっぱいだった。


「ミナト先輩、ツバサ先輩、話があります」


二人が振り返る。ミコトは深呼吸をして、意を決して口を開いた。


「私……ミナト先輩のことが好きです」


一瞬、世界が静止したような静寂。その空気の重さに、胸が締めつけられる。心臓の音が耳に響き、息が苦しくなるほどだった。


しかし、次の瞬間——


「おお、ありがとう!でも今、僕はお腹が空きすぎて、心も胃袋も満たされたい気分なんだ!」


ミナトが能天気な笑顔で答え、さらに続けた。


「でも、好きって言ってくれるなんて、僕史上最大のラッキーイベントじゃん!ありがとうね、ミコト!」


その瞬間、張り詰めていた空気がふっと和らぐ。ミコトは思わず小さく笑い、胸の奥の緊張が少しずつ解けていくのを感じた。


(あぁ、こんな風に返してくれるのが、ミナト先輩らしい。怖がっていた自分が、少しだけバカみたいだ)


隣でツバサが小さくため息をつき、呆れたように呟いた。


「……本当に能天気ね」


「僕の特技だからね!」


ミナトの言葉に思わず微笑むツバサ。その表情はどこか柔らかく、ミコトの心にも温かさが広がった。


(伝えて良かった。この気持ちを抱えていただけじゃ、前に進めなかったから)


三人の間には言葉以上の理解が生まれていた。それぞれが自分の気持ちと向き合い、新しい一歩を踏み出すための大切な瞬間だった。



翌日の放課後の教室には夕陽が差し込み、教室をオレンジ色に染めていた。


ミナトは机に肘をつき、ぼんやりと窓の外を眺めていた。そこへサクラが勢いよく顔を覗き込んできた。


サクラ:「やあ!」


ミナト:「おお、サクラ!今日も元気100%だな!」


サクラ:「元気は無限増殖中!」


ミナト:「おいおい、宇宙エネルギーじゃないんだから!」


その賑やかなやり取りに、冷静沈着なツバサが教室に入ってきた。


ツバサ:「また騒がしいわね。何をしているの?」


サクラはミナトを指差して無邪気に言う。


サクラ:「ミコトの告白について、ミナトがどうするか聞いてたの!」


ツバサ:「それは重要な話題ね」


ミナトは一瞬だけ真剣な顔をしたが、すぐにお得意の脳天気スマイルに切り替えた。


ミナト:「ああ、告白のことね!いや〜、そういえば今日の雲、ドラゴンみたいな形だったんだよ!」


サクラ:「話逸らすの早っ!速度、光速超えたかも!」


ツバサ:「論点が雲散霧消したわね」


サクラは再び迫る。


サクラ:「で、どうするの?ミコトの告白!」


ミナト:「あー、それは……えーっと……今、僕の心の中では会議中なんだ。議長は僕、出席者も僕だけど、決議には時間が必要で…」


ツバサ:「全会一致に時間がかかるのは、君の多重人格会議のせいかしら?」


ミナト:「いやいや、心の中の僕たちが今、白熱議論してるんだよ!“おやつはプリン派かゼリー派か”って!」


サクラ:「そこ関係ないでしょ!」


ミナト:「でも重要だよ!人生は甘さと決断のバランスだから!」


ツバサ(冷ややかに): 「そこまで見事に誤魔化すのは、逆に才能かもしれないわね」


ミナト:「ははは、才能なら任せて!告白の返事?それは…未来の僕にバトンタッチ!」


サクラ:「タイムマシン待ちなの?!」


ツバサ:「普通に答えた方が早いわ」


ミナトは満面の笑顔でサムズアップ。


ミナト:「大丈夫、答えは…風に聞いておくから!」


教室に吹き込む風を指差して、謎のポーズを決めるミナト。


ツバサとサクラはため息をつきつつも、つい笑ってしまうのだった。


こうして、ミナトはミコトの告白の返事を、見事な脳天気さとコミカルな誤魔化しで乗り切るのだった。


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