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論理の壁を超えて

ツバサは数日間に渡って、あの日の夜の情報を自分の中で整理していた。

そして、やっぱりミコト本人に核心を聞きたいという気持ちが強くなっていた。

スマホを通じてメッセージを送り、ミコトの反応を確かめてみた。


[22:14] ツバサ:

「ミコト、本当に君は一人でこれをやっているの?」


[22:14] — 既読


ツバサの反応:

スマホを握る指先が冷たく、無意識のうちに眉間にシワが寄る。呼吸は浅く、唇を軽く噛んで感情の揺れを抑えようとする。膝の上に置いた手が拳を作り、指先が白くなる。


ミコトの反応:

画面を見つめながらも背筋はまっすぐ。姿勢は崩さず、冷静さを保つ。しかし、スマホを持つ手が少し汗ばんでおり、親指が小さく震えていることに気づく。心拍数はわずかに速まっている。


[22:17] ミコト:

「はい、一人です。でも、情報は共有しています」


ツバサの反応:

その曖昧な表現に、目を細めて画面を凝視する。無意識に深呼吸をしようとするが、胸が少しだけ詰まる感覚。指先はスマホを固く握り、冷たい汗が手のひらに滲む。


ミコトの反応:

送信後、視線を画面から逸らす。しかし、心のざわめきは消せず、再び画面に目を戻す。顎のラインに沿って小さな緊張感が走り、喉を軽く鳴らして平静を装う。


[22:20] ツバサ:

「誰と共有しているの?組織が関わっているの?」


ツバサの反応:

メッセージを打つ指が速く、力強い。背筋がピンと伸びているが、肩に余計な力が入っていることに気づかない。唇を固く結び、深呼吸して気持ちを抑え込もうとする。


ミコトの反応:

既読の表示と共に、胸の奥で小さな痛みのような緊張感が走る。呼吸が不規則になり、無意識に指先でテーブルをトントンと叩いてしまう。冷静でいることが自分の役割だと心の中で繰り返す。


[22:26] ミコト:

「それは答えられません」


[22:27] ツバサ:

「私たちはただのデータなの?プライバシーの問題はどう考えてるの?」


ツバサの反応:

眉間に深いシワを寄せ、眉をわずかに吊り上げる。スマホを強く握りすぎて、関節が白くなる。呼吸は浅く、鼓動が耳の奥で響く感覚が離れない。


ミコトの反応:

メッセージを読んだ瞬間、喉が乾く。背筋を伸ばし、無表情を保とうとするが、軽く震える指先が本心を物語る。呼吸をゆっくり整え、胸の奥の動揺を押し込めるように目を閉じた。


[22:35] ミコト:

「違います。データ以上の存在です。だからこそ観察する意味があるんです」


ツバサの反応:

その返事を読んだ瞬間、心臓が跳ねるように鼓動を打つ。スマホを膝の上に置き、拳を強く握る。冷静でいようとする意思と、揺れ動く感情がぶつかり合う。


ミコトの反応:

送信後、深く息を吸い込む。胸の奥に溜まった緊張感が重く圧し掛かる。手のひらの汗を拭い、冷たい指先を自分の膝に押し付けて現実感を取り戻す。


[22:36] ツバサ:

「“意味がある”って、誰にとって?君にとって?それとも、誰か別の存在のため?」


ツバサの反応:

指がスマホを強く握り、爪が手のひらに食い込む。呼吸が浅くなり、胸が詰まるような感覚。唇を噛み、感情がこぼれ落ちるのを必死で抑える。


ミコトの反応:

メッセージに視線を落としたまま、目を細める。心を無にするように深呼吸するが、胸の奥のざわめきは消えない。無意識に髪の毛を指先で触ることで気持ちを落ち着かせようとする。


[22:52] ミコト:

「……私にとっても、です」


[22:54] ツバサ:

「どうして、そんなに簡単に割り切れるの?」


ツバサの反応:

メッセージを打ち終えた後、肩がわずかに震えていることに気づく。深く呼吸しようとしても、胸が締め付けられるようでうまくいかない。目を閉じ、心を落ち着かせようとするが、心臓の鼓動は速いまま。


ミコトの反応:

スマホを両手で包み込むように握り、冷たい指先で画面をタップする。口元を固く引き締め、軽く震える胸の鼓動を抑えようとするが、それは難しい。目を閉じ、深呼吸を繰り返すことで心の動揺を一時的に封じ込める。


[23:05] ミコト:

「簡単ではありません。でも、必要だからです。私がやらなければならないことだから」


【余韻】

ツバサ: 表情は冷静を装うが、拳を握りしめたままの手が震えている。鼓動が速く、胸の奥がざわめいている感覚を抑えきれない。


ミコト: 姿勢は正しいままだが、深い呼吸を繰り返すことで自分を落ち着かせようとする。拳を膝の上に置き、静かに目を閉じて感情を押し込める。


二人のあいだに流れるのは、沈黙の中の不確かな感情だけだった。



【23:10】 ツバサ:

「もう一度聞くけど、本当に君は一人でこれを進めているの?」


ツバサはスマホの画面を食い入るように見つめながら、内心の不安と苛立ちを押し殺していた。しかし、ミコトの曖昧な返答は、論理で割り切れるものではなく、感情の奥底に刺さるものだった。


【23:16】 ミコト:

「はい。一人です。でも、さっきも言った通り情報は共有しています」


その瞬間、ツバサは理性の糸が切れる音を感じた。冷静さを保つ余裕はなく、スマホをポケットに押し込み、無意識のうちにミコトの部屋へと足を速めていた。


寮の静寂の中、ツバサはミコトの部屋の前に立つ。ドアノブを回すも、鍵がしっかりとかかっている。


「ミコト、いるんでしょう?開けて」


扉の向こうは静寂。ツバサは再び強くノックする。


「ミコト、話があるの。メッセージじゃ足りないの」


しばらくして、ドア越しにミコトの静かな声が聞こえる。


「……ツバサ先輩、今は……話せません」


ツバサは拳を固く握りしめ、声の抑揚を少し荒げた。


「話せない?どうして?一体何を隠しているの?」


ミコトの返事はない。ただ、扉越しにお互いの気配だけが交差する。ツバサは深呼吸をして、もう一度揺さぶりをかけてみた。


「私たちは……ただの観察対象なの?それとも、君にとってはどうでもいい存在?」


数秒の沈黙の後、ミコトは静かに答えた。


「違います。でも、それを説明するのが怖いんです」


その一言にツバサは一瞬、言葉を失った。相手の微かな揺らぎに気づいたからだ。


「怖い?……なら、余計に話すべきでしょ?私も今、怖いの。知らないことが怖くて、君との距離が広がるのが怖い。でも、逃げたくない」


ドアの向こうで、ミコトの気配が変わったことにツバサは気づいた。息を飲む音が聞こえる。扉越しであっても、感情は確かに伝わっていた。


ミコトは低く呟いた。


「……どうして、そこまで必死になるんですか?」


ツバサは苦笑した。


「それを知るために、ここに来たのよ」


長い沈黙の後、扉の鍵がカチリと外れる音が響いた。ゆっくりと開いたドアの向こうで、ミコトは無表情の仮面を少しだけ崩して立っていた。


「……話しましょう、ツバサ先輩」


その瞬間、二人の間にあった見えない壁は、ほんの少しだけ壊れたのだった。



深夜の寮、静寂が支配する一室でツバサはミコトに向き合っていた。冷徹なまでに冷静な瞳が、静かに彼女の言葉を待っている。


ミコト(深呼吸して):「ツバサ先輩、隠していたことがあります。観察対象者はミナト先輩だけではなく、複数存在しています。それぞれに担当の観察者がつき、情報は学校内の情報管理端末を介して共有されます。その際、スマホによる特別なアクセス権の証明が必要です」


ツバサ(瞬きもせず、鋭い声で):「つまり、限定的な情報共有と厳密なアクセス管理が確立されているということ。合理的な措置ね」


ミコト(うなずきながら続ける):「ただ…その情報端末を管理する組織や人物については、私たち観察者にも知らされていません」


ツバサは眉ひとつ動かさず、冷静に分析する。


ツバサ:「情報の階層構造が存在するわけね。観察者にすべてを開示しないことで、情報漏洩のリスクを最小化している。合理性のある戦略よ」


ミコト(ためらいながら):「私がミナト先輩を選んだ理由は……彼の脳天気さが時に脅威になる可能性があるからです」


ツバサは瞬間的に考えを巡らせ、理路整然と答える。


ツバサ:「それも理解できる。予測不能な行動は、安定したシステムにおいては不確定要素として作用する。特に、彼のような直感型の思考は、制御不能な変数として機能することがあるわ」


ミコト(小さな声で):「でも、彼と接するうちに…私は感情的な変化を感じ始めました。論理的には説明できないものです」


ツバサは目を細め、冷静に返す。


ツバサ:「感情は論理的評価の対象外。しかし、感情が行動や意思決定に与える影響は無視できない。むしろ、それを認識した上で分析することが重要よ」


ミコト(ほっとした表情で):「……ありがとうございます、ツバサ先輩」


ツバサはわずかに口元を緩め、言葉を続けた。


ツバサ:「私たちが直面するのは、論理だけでは解けない問題。大切なのは、その曖昧さを受け入れ、どう向き合うか。ミナトがそれを教えてくれているのかもしれないわね」


二人の間に流れるのは、静かでありながら確かな理解と信頼の空気だった。論理と感情、異なる価値観が交差することで、新たな絆が芽生え始めていたのだった。



【翌朝】


朝の光が差し込む食堂。ツバサとミコトが静かに朝食を取っていると、遠くからミナトの元気な声が響いた。


ミナト(トレイを片手に駆け寄りながら):「おはよーっ!今日のパン、焼きたてだって!これはもう、“モーニング界の黄金聖闘士”!」


ツバサ(冷静に):「パンが黄金聖闘士なら、バターは黄金の鎧ということかしら」


ミナト(目を輝かせて):「おお、それいい!じゃあジャムは…“果実の秘宝”!」


ミコト(小さく笑いながら):「それなら、コーヒーは“知恵の泉”ですね」


ミナト(うんうんと頷きながら):「完璧だ!僕たち、もう朝食界の冒険者チームだね!」


ツバサ(ため息混じりに):「くだらない。でも、悪くないわ」


ミナト(得意げに):「僕の無邪気さ、今日も世界平和に貢献中!」


ミコト:「…個人的には、世界平和よりも笑いの供給量に貢献している気がします」


ミナト(ドヤ顔で):「笑いは心のビタミンだからね!」


2人は静かに頷いて口元が笑っていた。


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