エール共和国へ ⑥
明るい教会の中、長椅に座る多くの信徒たちは、祭壇に立つ神父に続いて祈りを捧げていた。
彼らは皆、教会の制服を身にまとい、肩には鮮やかな赤の逆十字の紋章が飾られている。
その目には揺るぎない信仰の念が宿っていた。
だが、その信仰の念は一般人には安心感を与えるどころか、むしろ恐怖と逃避の念を引き起こしていた。
神父は巨大なステンドグラスの窓を背にして、祭壇に置かれた重厚な書物をめくりながら、信徒たちに祈祷文を唱えさせていた。
その声は一つの肉体から発せられているかのように揃っており、全ての音節に彼らの魂が込められているかのようだった。
しかし、その口から紡がれる祈祷文は、世界に祝福をもたらすようなものではなかった。
「我らは偉大なる使命のために命を捧げる……この世界が血に濡れ、新生するために……」
教会全体の信徒たちがこの一文を口にした瞬間、教会そのものが回響によって揺れ始め、次第に名状しがたい恐怖に包まれていった。
その言葉を耳にした者は誰であれ、その信念の持つ威圧感に怯えざるを得なかった。
この教会は一見すれば普通の教会と変わらないように見える。
だが、信徒たちが発する信念は、この閉ざされた空間に強烈な圧迫感と息苦しさを生じさせていた。
最も恐ろしいのは、本来この祈祷文に恐怖を抱くはずの信徒たちが、“人”としてその内容に疑問を抱く者が一人もいないことだった。
彼らは全員、自らの命を捧げる覚悟を持った祭品のように祈りを捧げており、自然とその「命」が祭り上げられる運命にあるのだ。
さらに驚くべきは、祈りを捧げる信徒たちの目には生者の輝きが一切なく、まるで骸骨のようだったことだ。
彼らの視線は全て祭壇に立つ神父に向けられ、右手を胸に当て、機械的に祈祷文を繰り返していた。
この教会に足を踏み入れた者は、誰であれまるで亡者が蠢く恐怖の墓地に迷い込んだかのように感じることだろう。
その時、大主教は教会の入り口の外にある回廊に立ち、内部の祈祷の様子を密かに覗き込んでいた。
「大主教様、神啓で予言された昇天の日が間もなく訪れます……さらに多くの『エネルギー』を確保するため、人員を増やしますか?」
広いフードを被り、顔の見えない信徒が静かに歩み寄り、重要な報告をするかのように声を低くして尋ねた。
「計画はもうすぐ完成する……『エネルギー』は、十数年にわたる我々の計画が徒労に終わらないための重要な支えだ。途中で『エネルギー』が不足して信徒たちの昇天が失敗するようなことがあれば、主神は我々に予測不能な恐ろしい災厄を下すだろう……」
大主教の言葉が終わる前に、隣で頭を垂れていた信徒の体が震え始めた。
彼は恐ろしくて大主教の目を直視することができず、心臓を掴まれたような窒息感に襲われ、全身が硬直して動けなくなってしまった。
彼が大主教の口から語られる「主神」に抱いている感情は、敬意というよりむしろ恐怖だった。
大主教は表情に穏やかさを保ちながらも、信徒の耳元に顔を近づけ、低い声で囁いた。
「マール聖教に主神の役に立たない無能は必要ない。昇天に値する価値を証明したければ、ミスを犯すな。」
「……承知しました。」
信徒は慌ててその場を離れ、死神から逃れるかのように振り返ることなく教会を足早に去っていった。
「最後の一歩だ……あのお方もついに『滅世』の神器を私に貸してくださった。」
大主教は再び教会の内部に視線を戻しながら低く呟き、半ば閉じた瞳の奥に隠しきれない喜びを浮かべていた。
その顔に浮かぶ笑みは、ますます不気味で恐ろしいものになっていく。
「この世界はまもなく劇的な変革を迎える……主神への供物は、この私が自らの手で形作る。」




