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純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第6章 悪夢にかこまれた町
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エール共和国へ ⑤

「エリズ、今はしっかり休んでおけ。」


 そっとタオルでエリズの額の汗を拭いながら、エルフの顔には心配の色が浮かんでいた。


 生化魔導人形は本来、感情表現を持たない存在。


 それでも、彼女の表情に宿る憂いは不思議と違和感を覚えさせない。


 オースの予測通り、エリズの容態はますます悪化していた。


 炎に焼かれるように赤い頬、焼ける石のように熱い体温――。


 息苦しげに弱々しい呼吸を繰り返し、時折、呼吸は短く早くなる。


 まるで肺に空気が届く前に、無理やり吐き出されてしまうかのようだ。


 額に浮かぶ汗、震える身体……。


 これが「魔力流排斥」の症状だというなら、オースの説明とも少し違う。


 オースが症状を知る医師を探しに出かけている間、エルフとリズミアにできるのは、客室でエリズを見守ることだけだった。


「エルフ……エリズ、どんどん苦しそうになってる。あのオースって男、ほんとに帰ってくるの?」

「エリズの症状は吾にも手に負えぬ。これから先は天命に委ねるほかあるまい……」

「……エリズ、絶対に良くなってね。」


 リズミアはベッド脇にしゃがみ込み、エリズの手を強く握りしめた。


 雪山で倒れた自分を小屋まで運び、細やかな看病をしてくれたのはエリズだった。


 彼女がいなければ、数日で回復することは到底叶わなかっただろう。


 だが、今度はエリズが病に倒れ、目の前で苦しんでいる。


 リズミアは何もできない自分が情けなくて仕方なかった。


 エリズがなぜ倒れたのかすら分からない。ただ、彼女が痛みに蝕まれている姿を見守るしかできない。


 焦燥感が胸の中で渦を巻き、自分の無力さを呪いたい衝動に駆られる。


 だが、それをエリズに見せれば、彼女を余計に悲しませるだけだ。


 リズミアは椅子を引き寄せ、ベッドの横に座り込むと項垂れた。


 もしエリズを救える方法があるのなら、自分が実験台にでもなろうと思った。


 この世界で、彼女を心から信頼し、頼ることができる存在はエリズしかいないのだから。


「もう昼になるな、リズミア。汝、先に食事を済ませてこい。吾は食事を必要とせぬ。ここでエリズを見守っておく。」

「エリズがこんな状態じゃ……食べられるわけない。」

「ならば、エリズの世話は汝に任せる。吾は少し確認したいことがある。夕方には戻る。」


 エルフは穏やかに微笑むと、壁際の帽子を手に取り、部屋を後にした。


「エリズ……信じていいのかな?あの人たち、本当にエリズを救えるの……?」


 リズミアは小さく呟いた。


 陽の光が彼女の顔を包むが、温もりは感じられない。


 不安が彼女の体を蝕み、底なしの泥沼へと引きずり込む。


 元気なエリズが浮かべる、あの優しい笑顔を思い出せば思い出すほど、涙が止まらなかった。


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