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純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第6章 悪夢にかこまれた町
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エール共和国へ ③

「さて。大人しく我々と戻るんだ。偉大なる主教会が君に祝福を授けてくださる。」

「やだ……お母さんを探さなきゃ……」


暗い路地裏で、ぼろぼろの服を着た幼い少女が壁際に身を縮めていた。


怯えきった目で彼女を取り囲み、逃げ場を奪った追っ手たちを見つめている。


少女の瞳には、恐怖と絶望だけが映っていた。


彼女は髪が乱れ、路傍の哀れな乞食と見紛うほど惨めな姿だった。


しかし、その額の隙間から覗く左目だけは特異で、透明な瞳孔がかすかに見え、普通の人間とは違う何かを感じさせた。


ただ「フィヴァの血」をその身に宿しているだけで、彼女は非人道的な迫害を受けてきたのだ。


彼女を苦しめる者たちは、天空に浮かぶフィヴァの都への階段を登ることを狂信的に願っていた。


追っ手の教会関係者たちは薄緑色の長衣を身にまとい、彼らの肩には赤い逆十字の紋章が輝いている。


その中で、兜帽を深く被った追っ手たちに囲まれた彼女を、ただ一人、長衣の男が率いていた。


彼らは闇に潜む悪魔のごとき存在で、薄暗い路地に溶け込むようだった。


路地の外では、行き交う人々もいたが、誰一人として教会関係者が集まる様子に干渉しようとはしない。


彼らが何をしているかを知りたくても、誰もが同じ共通認識を持っていた。


それは、薄緑色の教会服を着た、赤い逆十字の紋章をつけた者を見かけたら、できるだけ関わらないこと。


彼らと関係を持った人間は、例外なく姿を消すのだ。


彼らが何をしているのかを住民たちは知っているが、それに抗う術はない。


魔法至上主義の国、エイルリーでは、このような魔力に狂った者たちが罰せられることはあり得ない。


魔法の進歩のためならば、どのような行いも称賛されるのだから。


だからこそ、リナードの住人にとって、この教会関係者たちはまさに「生ける恐怖」そのものだった。


指導者である男は怯える少女の前にしゃがみ込み、その痩せこけた顔をじっと見つめた。


彼女の恐怖に満ちた目に満足そうに舌を舐める。


「自分が我々の手の中から逃げられないと分かっていながら、失敗から学ぼうとしないとはな。」


男が彼女の顔を弄ぶように手を伸ばしたとき、少女は力強くそれを払いのけた。


何日も食べ物を口にしていない彼女は、全力を振り絞っても男を押し返すことはできなかったが、なおも抵抗を続けた。


「……スロ、嫌い! お前たちなんか、どっか行け!」


スロは涙ながらに叫び、身体を後退させながら、傍らの小石を拾い男に向かって投げつけた。


しかし、男は冷たい表情でそれを打ち払うと、彼女の細い首を掴み、空中に持ち上げた。


骨と皮ばかりのスロは、男にとっては羽毛のように軽い存在だった。


「神の恩恵を受けた『神福者』が、祝福を拒むとは……本当に失望させてくれるな。」


偶然差し込んだ一筋の陽光が、スロの顔を照らし出す。


彼女の右目が金色の奇妙な輝きを放ち、神秘的でありながら誘惑的だった。


「……スロ、おうちに帰りたい……お母さん……」


彼女のか細い声は、次第に掴む男の手の中で掻き消えていった。


泣きながらも、スロは弱々しく手足を振り回して抵抗しようとしたが、その動きも次第に止まり、意識を失った。


スロが静かに倒れる姿を見て、男は満足げに笑みを浮かべた。


その笑顔は、冷酷さと残虐さを孕んだ、見る者を恐怖に陥れる不気味なものだった。


「『神福者』に親など必要ない。お前たちはこの世界を創造する創世神なのだから。」


男の言葉は空虚で冷たい響きを持ち、スロを麻袋に詰め込み背負うと、足取り軽くその場を去った。


彼の背後では、信者たちが理解不能な呪文を低く唱え始めた。


まるで供物を祭壇へ運ぶ守護者の行進のように。


「女神よ、我らが創世神をお守りください。」


信者たちは祈りを捧げながら互いに肩を寄せ合い、路地を抜けていく。


「……」


その光景を、路地の片隅で身を潜めていた黒猫が冷たい瞳で見つめていた。


彼の瞳に映るのは、教会の一団と、彼らに捕らえられた少女だけだった。


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