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無名者の葬儀 ②

 列車が駅に着いた時には、すでに翌日の夕暮れ時だった。


 エリズたち二人に一旦別れを告げ、オースは「熟睡」しているエナを背負い、アンリリズやリンと共に公爵邸へ戻った。


 街には多くの人々がいたが、彼らが人混みの中を歩いていても、エナの異変に気づく者はいなかった。


 もしかすると、エナの美しさに一瞬視線を奪われた者もいたかもしれないが、それもほんの一瞬のことだった。


 帝都の公爵邸への帰路は、オースが思っていた通りに順調だった。


 ただ、アンダル公爵の邸宅に近づくほどに、彼の胸にある罪悪感が一層深くなっていく。


 エナを連れて出かけ、戻る時には彼女がすでに亡くなっているとは、まさか思ってもいなかったのだ。


 オースの心の奥底では、彼女をしっかりと守りたいという願いが強かった。


 それは、かつてアンダル公爵を護送し、安全に邸宅まで送り届けた時と同じだった。


 エナは依然として「熟睡」しており、その隣を歩いているリンは、彼女の姿を見ようとしなかった。


 怖がっているわけではない。


 ただ、邸宅に戻る最後の瞬間で感情を抑えきれず、オースの計画を台無しにしたくないのだ。


 帝都の賑やかな市民区を通り抜け、丘の斜面を上っていくと、そこにはアンダル公爵邸が佇んでいた。


 夕陽が傾く中、邸宅の前庭では数人のメイドが落ち葉を掃除していた。


 オースたちが帰ってくるのを見たメイドたちは、皆嬉しそうな表情を見せた。


 彼女たちの何人かは迎えに来て、他の二人は邸宅の中に向かって走り去った。


 しばらくして、アンダルが姿を現した。


「よく帰ってきたな。アンメインでの旅は楽しめたか?」

「……はい。」


 オースは感情を必死に抑えようとしたが、エナが亡くなったことをどう切り出せばいいのかわからなかった。


 秋も深まる涼しい夕暮れのはずなのに、彼の体はなぜか汗ばんでいた。


「エナはもう疲れて、ぐっすり眠っているんだな。」


 アンダルの顔には、オースが今まで見たこともないほど優しい笑みが浮かんでいた。


 彼はオースに近づいてきた。


「エナはずっと君に寄り添いたいと言っていた。こうしてその願いが叶って、きっと喜んでいるだろう。」

「しかし……アンダル公爵……」


 アンダルはオースの目を一瞥し、ただ微笑んで首を横に振った。


 その目から、オースは何かを悟り、恥じ入ってうつむいた。


「彼女を私に任せてくれ。あとのことは私が引き受ける。」


 依然として公爵としての威厳を保っていたが、アンダルの髪は白髪混じりで、夕陽に染められ、やや老いた姿が見て取れた。


「アンダル公爵……私も彼女を中までお連れしましょう……」

「オース。」


 その一声は、頼みというより、むしろ命令のように響いた。


 穏やかな表情を浮かべていたが、アンダルはそれ以上オースに拒否する余地を与えなかった。


「……承知しました。」


 オースは体を横に向け、動かない「熟睡」したエナをアンダルに引き渡した。


 彼はエナの手を丁寧にアンダルの肩に掛け直し、アンダルが彼女を背負って歩く際に、バランスを崩さないように気を配った。


「エナ、パパが家に連れて帰るよ。」


 アンダルはエナを背負い、ゆっくりと邸宅の方へと歩いていった。


 その背中を見つめながら、オースはついに感情を抑えきれず、涙を流した。


 誰もが静かに立ち尽くし、彼の最愛の娘を背負って帰る年老いた父親の姿を見守っていた。


「オース。」


 遠くへ行っていたアンダルが足を止めた。


「エナの目には……私は不甲斐ない父親だったのだろうか?」


 そのかすれた声は、まるで庭の夕風に溶け込んでしまいそうだった。


「エナは、あなたと奥様が残してくださった贈り物を、とても気に入っていました。」


 オースのその言葉を聞くと、アンダルの背中が微かに震えた。


「ありがとう、オース。」


 そう応えたアンダルは、再び足を踏み出した。


 彼の足取りは少し早くなり、まるで長い間家を離れていた娘を早く家に連れ帰りたいかのようだった。


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