エカリス巫女団 ⑤
暖かさが全身を包み込んだ。
目元の疲労はまだ完全に消え去っていなかったが、微かな光が隙間からうっすらと目に差し込んできた。
オースはゆっくりと目を開けた。隣の窓の外では、空がすでに明るく晴れていた。
陽光が部屋全体に降り注ぎ、窓の外の賑やかな通行人たちの姿が、彼に「現実感」をもたらした。
彼を昨晩の「夢」の遅滞から引き戻すかのように。
「昨夜……」
彼はぼんやりと窓の外を見つめながら、昨夜の情景が脳裏に浮かんできた。
エナは死んだ。
彼が取り戻すことのできない形で、この世界から去ったのだ。
彼女と初めて会った時から、彼の心には予感があった。
だが、それが実際に彼の目の前で起こらなければ、彼はこれほどの衝撃を受けなかっただろう。
こんなにも深く心に刻まれることはなかった。
ヌノンの花びらが星海へと変わるその下で、永遠の誓いを立てたのに。
ただ、エナにとっては、一歩遅すぎたようだ。
もし彼女がもう一日早くアンメンに到着できていたなら、彼女の最後の願いは果たされたかもしれない。
「たとえ騙してでも……なぜ彼女の願いを叶える機会を与えてくれなかったのか?」
彼女の体内の魔力の流れが膨張する【バタリファ】は、死をもたらす「死の女神」となり、悪人たちがその力を狙う原因ともなった。
しかし彼女は最初から最後まで、自分の秘密を彼に打ち明けようとはしなかった。
まるで最も普通の恋愛を夢見る少女のように、すべての影響を排除しようと頑なに拒んでいた。
ただ、自分の望む結果が訪れることだけを願って。
だが、彼女にはもはや選ぶ権利はなかった。
アンダル公爵はずっと前に彼に話していた。エナは病に苦しんでいたと。
彼女が普通に行動できる力をどこから得たのかはわからないが、その病を隠すために、彼女は全力を尽くしていたのだ。
そのことを思い出すたびに、オースは強烈な痛みを感じた。
自責の念が身体を圧迫し、どんどん重くなっていったが、それは彼の独りよがりな考えを罰するかのように、彼には逃げ場がなかった。
カチャッ。
部屋の扉がそっと開けられた。
「オ、オース様、お目覚めになられたのですね。」
部屋に入ってきたのは、彼の付き人である女中のアンリリズだった。
彼女は手に食事を抱え、その表情には無理やり笑顔を作り出そうとした違和感が滲み出ていた。
「私をここに運んだのは、アンリリズか?」
オースが力ない声で尋ねると、アンリリズの手が食事を置く動作を止めた。
アンリリズは何も言わなかったが、彼にはもう理解できていた。
「……すまない。」
「なぜ謝るのですか? オース様……」
「もし私がもっと強ければ、エナさえ守ることができたのではないか……」
「ですがオース将軍……エナ様のご事情は、もうお分かりですよね。」
その時、扉の方からもう一つの声が聞こえてきた。
それはリンだった。
彼女は扉の側に真っ直ぐ立っており、目元は長時間泣き続けたかのように赤く腫れ上がっていた。
「……」
リンがここに現れるとは全く予想していなかったオースは、口にしたかった自責の言葉が出てこなかった。
アンリリズの困った視線を受け、リンは部屋に入ってテーブル脇のベンチに座った。
「あなた様だけでなく、私も、そしてアンダル公爵も……エナ様が長くはないことは知っておりました。」
自分の気持ちを整理するために、リンはしばらく沈黙してから再び口を開いた。
「ただ、公爵は医者から処方された薬が効いていると思っていただけで、エナ様が再び立ち上がることができた真の理由は、私以外の誰にも打ち明けていませんでした……」
「禁忌魔法か……」
オースの問いに応えるのは、リンの沈黙と、嫌々ながらも肯く彼女の姿だけだった。
「……つまり、エナは帝都を出発した時点で、自分が戻れないことを覚悟していたのか?」
「……はい。」
「では、婚礼衣装店で言った言葉も、カス遊園地で交わした約束も……すべて嘘だったのか?」
「エナ様が仰ったことが叶わないと分かっていても、私はエナ様の想いを疑ったことはありません。」
心が痛む中、リンは嗚咽を堪えながらも話し続けた。
「私が感謝しているのは、本来グラン帝国には存在しないはずの魔法が、エナ様に夢を叶えるかもしれないという淡い希望を与えたことです。あるいは、エナ様の意思がその可能性を引き寄せたのかもしれません。」
彼女は自分のエプロンの裾を握りしめ、頭を垂れ、涙が一滴一滴と制御できずに落ち、スカートに染み込んでいった。
「私はエナ様が寝たきりで過ごす日々を誰よりも見てきました。彼女が立ち上がり、夢を追いかけるために頑張る姿を、誰よりも望んでいました……しかし、これが現実です。彼女は結局、公爵夫人のように病床につき、夫人よりも早くその動きを失ったのです。」
「……すみません、リンさん。少し失礼します。昨夜の目撃者に連絡を取ってきます。」
アンリリズのこの言葉は、部屋の雰囲気とはまったくかみ合わなかった。
しかし、彼女が慌てて部屋を後にした足音は、彼女の動揺した気持ちをありありと物語っていた。
「つまり……エナは、どれくらいの間、動けずに寝たきりだったんだ?」
「4年間です。」
リンはできるだけ冷静にその時間を伝えたが、そのわずかな一瞬がオースに強烈な衝撃を与えた。
彼は彼女が自分のそばで普通に動き回っている姿に慣れすぎて、彼女がベッドに横たわり、動けない姿を想像することなど、決してできなかった。
だからこそ、カス遊園地で遊んだ時や、アンメインに訪れた時の、彼女の目に映っていたその喜びの輝きは、彼女にとってどれほど大きな願いが叶ったことだったのか。
「この4年間、彼女はずっと誰かの出現を待っていました。しかし、彼女は最近までその相手が誰かを私に教えてくれませんでした……」
「つまり、アンダル公爵が彼女の体調を私に伝えた時点で、ようやく彼女は自分の想いを伝えたのか?」
リンは沈黙しながら、ゆっくりと頷いていた。
その姿を見つめながら、オースは自分が目の前の少女を、非常に残酷な方法で傷つけていることを感じていた。
彼女に、今は苦痛しかもたらさないであろう記憶を、何度も何度も思い出させてしまっている。
それは、彼女が永遠に忘れたくない、エナとの大切な時間だった。
その思い出が、今は彼女の心と身体を蝕んでいるのだ。
「……私の魔法を使えば、彼女を普通の人間の姿で帝都に戻すことができるだろう。」
「オース将軍?それは……?」
リンは驚いて顔を上げ、その瞳にオースの心を刺すような希望の光が宿っていた。
「誤解しないでくれ……それはあくまで人形を操る術に似た魔法であって、エナを蘇らせることはできない。」
「そう……ですよね。ははは。」
リンは苦笑いを浮かべたが、その無力な笑みはさらにオースの心を深く刺し貫いた。
「死は死……女神ですら容易に操れないものを、我々ができるわけがありませんよね。」
その自嘲めいた言葉を聞いて、オースは胸の奥に何かが詰まるのを感じた。
もし彼女の言葉が本当の「現実」ならば、あの数年前の夜、彼はこの世界に生き延びているはずがなかった。
だが、「奇跡」というものは、簡単には起こらない。起こるとしても、それは受け手の意志に関わらず訪れる。
そして、「復活」ということは、今のエナにとって到底あり得ないことだった。
「エナの遺体は……ちゃんと戻されたのか?」
「はい。私とアンリリズさんもその場で可能性のある目撃者に出会いました……」
「オース様、目撃者を連れてまいりました。」
まるで時間を計ったかのように、リンの言葉が終わると同時に、扉の向こうからアンリリズの声が響いた。
オースはその声に反応して習慣的に振り向いたが、次の瞬間、彼の目が大きく見開かれた。
驚愕。
困惑。
恐怖。
幾つもの感情がオースの瞳の中で交錯し、しかしそれらは瞬く間に全て消し去られた。
「この女性は昨晩、オース様たちの戦いの現場を目撃したそうです。私たちが到着する前に、彼女が何か知っているかもしれません……」
「そう言われても……私がお伝えできる情報は限られていると思いますけれど……」
朝の光に輝く金色の長髪が、美しく目を引き、まるで女神が降臨したかのように眩しかった。
その彼女の顔は、オースの破片となった記憶の中に浮かぶあの姿と、どこか似ていた。
だが、その優雅さとは裏腹に、彼女の表情は不安げで、言葉を発する際の口調もどこかためらいがちだった。
「ですが、もしお力になれるのなら、できる限りのことをいたします……あの方の死は、あなたのせいではありませんから。」
自分の判断を述べたときだけは、少女の顔に浮かんでいた不安が強い信念によって打ち消され、オースは初対面のはずなのに、心に安心感を覚えた。
「自己紹介をさせてください。私はアン・エリズと申します。ただの村娘です。」
【大事なおはなし!】
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