エカリス巫女団 ④
ポン!
地面から舞い上がる塵が、空を覆い尽くすように広がっていった。
結界の表面には徐々に亀裂が走り、少しずつ崩れ落ちていく。
静止していたヌノンの花びらが再び舞い始め、花火の爆発音もまた響き渡る。
夜風に吹かれて煙は次第に散っていき、舞い上がる花びらとともに、遠くへ飛び去っていった。
煙の中から、再びオースと謎の男の姿が現れた。
「惜しかったな、もう少しで終わっていたんだがな。」
オースは片膝をつき、長剣で辛うじて魔力を使い果たした体を支えていた。
「こんな明らかな攻撃、幻影を使えば簡単に騙せる。」
「……」
ワムは沈黙したまま、手に持っていた銀の短剣をオースの胸に深々と突き刺した。
「ぐっ……!」
短剣の毒がオースの体に影響を与え、その瞬間、彼は再び立ち上がる力を完全に失ってしまった。
そして、この最後の一撃が、マエンによるオースの体の支配も断ち切ったのだ。
「不満そうな顔をしているな、騎士殿。」
再び自分の体を取り戻したオースの顔には、苦笑が浮かんでいた。
「もう少し……俺が決断力に欠けていたということか。」
「戦闘はそのわずかな差が勝敗を決めるものだ――お前も数多くの戦いを指揮してきたなら、その重要さは分かっているはずだろう?」
ワムは血の球の前に立ち、軽く手を触れると、濁った魔力流が満ちた血の球は一瞬で砕け散った。
その中には、エナの遺体が再び姿を現した。
「お前はまだ使い道がある。眠っていろ。」
その言葉には、まるで神秘的な魔力が宿っているかのようで、オースは自分の頭がどんどん重くなり、意識が先ほどの戦闘の疲労に包まれ、深い闇へと沈んでいった。
「さて、約束通りお前の物をもらうぞ。」
エナの死を悼むように、ワムはすぐに手を下すことはなかった。
彼は半ばしゃがみ込んだ姿勢のまま、目の前の少女をじっと見つめていた。
夕風が原野を通り過ぎ、冷たくなった彼女の頬をそっと撫でていった。
「この結果も、お前の想定通りだったのだろうか……」
そう考えないわけにはいかない。
ただその考えに至ると、ワムはエナが気の毒でならなかった。
夢が叶う可能性が少しでもあれば、どんなに受け入れがたい要求でも、躊躇なく受け入れてしまう。
もう少し生き延びれば、彼女は愛する者ともっと普通の形で再会できたかもしれないのに。
だが、未知への恐怖が、彼女と自分の決断を促してしまったのだ。
「安らかに眠れ、エナ嬢。」
最後の弔いの言葉を告げ、彼は右手をエナの腹部の上にかざした。
ワムの右手の手のひらには、小さな魔法陣が現れた。
彼はまるで何かを掴み取るようにゆっくりと手を引き上げると、そこにはガラス玉のような球体が徐々に姿を現した。それこそが彼が追い求めていた【バタリファ】だ。
その全体は規則的に流れる魔力流で構成されており、中央には魔力を吸い込む黒点が存在し、周囲の光と魔力流を絶えず吸収していた。
「……咳っ。」
バタリファの形状を必死に制御するワムは、突然大きな咳とともに血を吐き出した。
バタリファを制御するには、それに匹敵する禁忌魔法が必要だった。
そして、その禁忌魔法を動かすエネルギー源は魔力流ではなく、生命力そのものだった。
ほんの少しの間、バタリファを引き出して制御するだけで、ワムは自分の体が急速に老化していくのを感じた。
【生命力を消耗する魔法こそが「奇跡」と呼ばれるに相応しい。】
バタリファの操り方を記した書物に、彼が最も驚かされた一文だった。
だが今、この瞬間、ワムの心には一つの疑念が生まれた。
エナの一族の者たちは、自らの意思で「バタリファ」を封印し、その宿主となったのだろうか。
もしそうでないとすれば、一体誰が彼女たちに拒否する権利を奪ったのだろうか。
これ以上考えるのが怖くなった。
その背後に潜む重みは、彼の想像を遥かに超えていたからだ。
しかし、エナの遺体を前にした今、ワムは敬意を抱かざるを得なかった。
この永遠に終わりのない家族の宿命が、こんなにも悲しい結末で終わることが、ある意味では慈悲とも言えるだろう。
「だがこの男――オースとか言ったな、少し弱すぎるな。」
ワムは戦いの最中、相手の実力が決してこの程度ではないと感じていた。
だが、何かに迷っていたかのように、彼は全力を出すことをためらっていた。
魔力流の主に体の支配権を一時的に委ねた時でさえ、戦闘力の向上はワムの期待には遠く及ばなかった。
だが、戦いにはやり直しなどない。
敗北は即ち敗北であり、この頑固な将軍は、自分のためらいの代償を払うことになる。
ワムは失望しなかった。
ただ、彼が望んでいた結果は、別の可能性を模索しなければならないようだ。
「取引をしよう。」
突然、背後から幽霊のように声が聞こえた。
驚いたワムが振り返ると、フードをかぶった謎の人物が彼の背後に立っていた。
声の感じからして、どうやら少女のようだった。
だが、ヌノンの花が微かに光る夜空の下、その少女の片頬がフードの陰に隠れ、歪んで見えた。
そして彼女が放つ冷たく恐ろしい気配は、ワムを一瞬で凍りつかせた。
「お前が欲しがっているもの、私が与えてやろう。」
少女は冷たい声を崩さず、地面に倒れているオースを指差した。
「彼が、この取引の条件だ。」
ほんの一瞬の困惑の後、ワムの顔には笑みが浮かんだ。
彼の周囲には渦巻く力場が現れ、その姿はその中に消えた。
「契約成立だ。」
その言葉とともに、ワムは姿を消した。
そして静止していた空が、再び動き始めた。
少女はただぼんやりと、地面に横たわるオースを見つめていた。
何かが近づいてくるのを感じた瞬間、彼女は黒い霧となり、森の陰に溶け込んで消えた。
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