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純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第3章 明るい夜空の下に散りゆく
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その明るい夜空の下に ⑧

「エリズ……わ、私たち一体どこまで行くの?」


 エリズは仕方なく立ち止まった。


 後ろで膝に手を置いて、息を切らしているリズミアの姿を見て、少し心が痛んだ。


「荷物を片付けて、宿を出てから歩き続けて……今まで、もう、ず、ずっと歩いてるよ。」

「今が上り坂だから……目的地まであと少しよ。頑張って、リズミア。」


 エリズは口先だけでなく、実際に戻ってきて、腰ポーチから若い果実の葉に包まれた小さな物を取り出し、リズミアの手に渡した。


「あなたの雪氷飴、もう食べちゃったでしょう? これ、私のをあげるわ。これで元気が出るわよ。」

「え、本当に食べていいの? この飴、とっても美味しいのに、エリズも食べた方が……」

「帰る時にまた買えばいいし。飴よりも、今はあなたに元気を出してもらう方が大事だからね。」

「エリズ……本当に優しい!」


 リズミアは感謝の目で手の中の飴を見つめ、包んでいた葉を慎重に剥がした。そこには四角い半透明の白い飴が姿を現した。


 これは秋のヌノン祭りの時期にアンメーンでしか作られない特産品であるヌノン氷飴で、飴の四角い形状とゼリーのような弾力ある食感を兼ね備えており、グランド帝国全土でも非常に有名なスイーツだ。


 リズミアは飴を口に入れ、ヌノン氷飴の一角が舌に触れた瞬間、冷たくて甘い感覚が頭の中に広がり、疲れ切った精神状態が一気に和らいだ。


 飴を噛みしめ、弾力を感じながら、顔にうっとりとした笑みが浮かんだ。


「それじゃあ、また歩き始めようか。リズミア、もう歩けそう?」

「もちろん! 今なら日が暮れるまで歩けそうだよ!」


 それはリズミアの冗談に過ぎなかった。


 飴を口に含んでその甘さを堪能しながらも、彼女は心の中で、帰りにエリズにもっと飴を買ってもらおうと密かに計画していた。


「その様子じゃ、ずっと歩けるわけじゃなさそうね……まあ、問題ないわ。目的地はもうすぐよ。」


 しかし、二人が今いるのは、林間の坂道だった。


 前方には深緑の灌木が茂り、小道はさらに森の奥へと続いていた。


 リズミアがいくら周りを見渡しても、エリズが言っていた目的地はまったく見えなかった。


「エリズ……まさか、この木が生い茂る小道が、あなたが言ってたアンメーン全体を見下ろせる場所なの?」

「いつもせっかちなんだから……ここで少し待ってて。」


 エリズは自分のペースで前に進み、木の冠が穴を開けたような小さな空間に立ち止まった。


 四方を見渡して、目が輝いた瞬間、リズミアに向かって微笑みながら手招きをした。


「ここを見て。」


 彼女の前の灌木は他の場所に比べてまばらに生えていた。


 両手で灌木を掻き分けると、現れたのはさらに急な石畳の小道だった。


 しかし、この小道はもう長い間、誰も通っていないようだった。


 一部の石板は土に埋まり、上には枯れ葉が積もっていた。


 乾いた泥が石板の紋様をぼんやりとさせており、周囲の土が緩んでいるため、階段の形状はほとんどわからなくなっていた。


 しかし、この階段を見上げると、空の明かりが見えた。


 山壁に沿って造られたこの階段は、維持できなくなり、放棄されてしまった。


 あとどれくらいで、この最後の階段も完全に消え去ってしまうのかはわからない。


 やがて、エリズの記憶の中にしか存在しなくなる日が来るのだろう。


 この道の出現は、まるでエリズの魔法のようで、リズミアの心にも大きな衝撃を与えた。


「この道は、ベファレスおじいちゃんが昔私を連れてきた場所よ。でも、今はもう使われていないみたい……」


 エリズはそう言いながら目の前の小道を見つめ、懐かしそうに思い出に浸っていた。


「当時の私は、こんな坂道を楽に登るなんて、到底無理だったわ……」

「エリズ? そろそろ出発する?」

「え……あ、ごめんね。」


 エリズは照れくさそうに笑った。


 リズミアがその狭い隙間を先に通り抜けると、エリズもすぐにその後を追った。


「この道はちょっと歩きにくいけど、一番早く展望台に登れる近道よ。リズミア、もし平坦な道を歩きたいなら、引き返してもいいけど……」

「エリズはこの道を歩きたいんでしょう? そんなの、騙されないんだから。」


 リズミアはそう言って胸を張り、「へへっ」と笑って、エリズの腕を組んで歩き始めた。


 石板の周りの土は湿っていなかったが、少し緩んでいた。


 エリズが石板を踏むたびに、足元が少し不安定になるのを感じた。


 しかし、このかすかな揺れが、彼女の遠い記憶を次第に鮮明にしていった。


 同じように前の人の手を引かれ、同じように慎重に登った二つの異なる時間が、彼女の心の中で重なり合った。


「きゃあ!」


 油断していたエリズは、石板に付いた乾いた泥に足を取られ、バランスを崩した瞬間、本能的に声を上げた。


「どうしたの!? エリズ!」


 慌てて振り返ったリズミアは、エリズが少し照れくさそうに微笑んでいるのを見た。彼女は幸運にも後ろの安定した石板に足を踏み止め、転倒を免れた。


 自分のせいで前を歩くリズミアを驚かせてしまったと思ったのか、少しばつの悪い表情を浮かべていた。


「びっくりした……今、手が引っ張られた感じがして、転ぶかと思ったよ……」

「ごめんね。えへへ……」

「エリズ、いつもそうなんだから。自分のことを考え出すときりがないわ。この長い階段、危ないんだから、次は気を付けてよね?」

「はい、はい。わかってるよ。」


 リズミアの小言を聞きながら、エリズは少し頭が痛くなった。


 以前、自分もこうしてリズミアに話していたことを思い出し、少し苛立ちを感じながらも、この素直な少女が気にしていない様子を見て、内心ほっとした。


本作をお手にとっていただき、誠にありがとうございます。


丁寧に描いた一冊となっておりますので、皆様のお気に入りの一冊になっていただけたら幸いです。


また、とても励みとなりますので、【面白い、続きが気になる】と思ってくださったら是非、『ブクマ登録』や『★★★★★』付けなどしていただけるとありがたいです。

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