エナの愛 15
「エナ様、今日のデートは楽しかったですか?」
エナが近づく前に、リンは待ちきれずに走り寄り、興奮気味に彼女の両手を握りしめた。
リンはエナがこのデートをどれほど楽しみにしていたか、誰よりもよく知っている。
いつも愛されるお嬢様に話しかけられ、彼女のデートに対する夢を何度も聞かされていたからだ。
それだけでなく、エナが語る過去の記憶の中には、リン自身も登場していた。すべてを見守ってきたリンだからこそ、当事者であるエナの気持ちをよく理解しているのだ。
「うん。オースさんと一緒に、楽しい時間を過ごしたよ。」
「でも、エナ様、どこか寂しそうに見えます……」
「そんなことないよ。リン、勝手なこと言わないで。」
エナは拙い言葉で少しだけ反論すると、それ以上何も言わなくなった。
二人は馬車のそばまで歩き、リンはエナの手を取り、彼女が馬車に乗り込むのを助けた。
続いてリンは御者に何かを伝えてから、エナの向かいに座った。
「エナ様は一生懸命努力されてきました。オース様に気持ちを伝えるために。だから、私としては、過去のことを直接話せば、きっと彼はエナ様を受け入れてくれると思うのですが……」
「リン。」
リンが自分の考えを熱弁している最中、エナは穏やかな声で彼女の言葉を遮った。
「オースさん、たぶん……昔のことを忘れちゃってるみたい。」
「えっ!?あの時、オース様がいなければ、村全体がエール共和国の侵略軍に壊されていたんです。私たちも、生き延びることなんてできなかったのに!そんな大事なことを忘れてしまったんですか!?」
「きっと私の勘違いかもしれない。だから、リンもそんなに興奮しないでね。」
エナは窓のカーテンを少しめくり、外の街灯を眺めながら、しばらく沈黙していた。
「英雄にとって、守るべき人を守るのは自然なことだと思う。オースさんが私のことを覚えていないのも、無理はないよ……それに、今のオースさんにとって、私の気持ちに応える必要があるのかどうか……」
エナのまつ毛が、少しだけ下がり、彼女の失望を映し出した。
「でも、エナ様は彼のために、ほとんどすべてを捧げてきたじゃないですか。命までも……」
「それは私自身の選択だから、リン。誰のせいでもないよ。」
エナは冷静なままだった。
その姿はまるで魂を自分から切り離し、すべてを見つめる傍観者のように理性的で、怖さすら感じさせる。
その言葉に、リンも興奮を抑え、むしろ悲しみを覚え始めた。
「どうしてこんなにも多くの辛いことが、エナ様に降りかかるのでしょうか?私は理解できません……エナ様が最後の時間を、後悔だけで過ごすなんて、そんなの嫌です……」
「それが悪いこととは限らないよ、リン。だって、私は束縛される恋なんて、好きじゃないもの。」
二人の立場が反転したかのように、エナは微笑んで、涙をこぼしそうなリンを慰める。
「それに、オースさんはまた私を外に連れ出してくれるって。オースさんが落ち着いたら、ヌノン祭りに一緒に行く約束をしたんだ。」
「で……でも、エナ様のお時間はもう……」
「リン……」
エナはリンの頭を優しく撫でながらも、リンを慰めることはできなかった。
リンはただ泣きじゃくり、涙を止めることができない。
エナはもちろん状況をよくわかっている。
誰よりも、自分の残された時間が少ないことを知っているのだ。
だからこそ、彼女はこの感情が罪となることを望んでいなかった。
「オースさんの優しさに応えるためには、彼の気持ちを縛るべきじゃない。たとえ私たちの間に恋が芽生えなくても、たとえそれが私の片思いで終わってしまっても、それで十分満足だよ……」
「エナ様!……」
エナは手を伸ばし、泣いているリンをしっかりと抱きしめ、背中を優しく撫でた。
「今の私は、どんな時よりも健康なんだよ、リン。ほら、以前の私は、君を抱きしめる力すらなかったでしょ?」
その声は春の湧き水のように、リンの心に優しく染み渡った。
「あの方がくれた薬のおかげで、これまでの何年分もの幸せを一度に手に入れたの。やっと、健康な身体でみんなに向き合えるんだ。だから、リンも泣かないで。」
そう言いながらも、エナは自身の目が少し赤くなっていることに気づいた。
次の瞬間、涙が一筋流れた。
「今、私は本当に幸せだよ。」
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