表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第2章 隠された恋
32/92

エナの愛 15

「エナ様、今日のデートは楽しかったですか?」


 エナが近づく前に、リンは待ちきれずに走り寄り、興奮気味に彼女の両手を握りしめた。


 リンはエナがこのデートをどれほど楽しみにしていたか、誰よりもよく知っている。


 いつも愛されるお嬢様に話しかけられ、彼女のデートに対する夢を何度も聞かされていたからだ。


 それだけでなく、エナが語る過去の記憶の中には、リン自身も登場していた。すべてを見守ってきたリンだからこそ、当事者であるエナの気持ちをよく理解しているのだ。


「うん。オースさんと一緒に、楽しい時間を過ごしたよ。」

「でも、エナ様、どこか寂しそうに見えます……」

「そんなことないよ。リン、勝手なこと言わないで。」


 エナは拙い言葉で少しだけ反論すると、それ以上何も言わなくなった。


 二人は馬車のそばまで歩き、リンはエナの手を取り、彼女が馬車に乗り込むのを助けた。


 続いてリンは御者に何かを伝えてから、エナの向かいに座った。


「エナ様は一生懸命努力されてきました。オース様に気持ちを伝えるために。だから、私としては、過去のことを直接話せば、きっと彼はエナ様を受け入れてくれると思うのですが……」

「リン。」


 リンが自分の考えを熱弁している最中、エナは穏やかな声で彼女の言葉を遮った。


「オースさん、たぶん……昔のことを忘れちゃってるみたい。」

「えっ!?あの時、オース様がいなければ、村全体がエール共和国の侵略軍に壊されていたんです。私たちも、生き延びることなんてできなかったのに!そんな大事なことを忘れてしまったんですか!?」

「きっと私の勘違いかもしれない。だから、リンもそんなに興奮しないでね。」


 エナは窓のカーテンを少しめくり、外の街灯を眺めながら、しばらく沈黙していた。


「英雄にとって、守るべき人を守るのは自然なことだと思う。オースさんが私のことを覚えていないのも、無理はないよ……それに、今のオースさんにとって、私の気持ちに応える必要があるのかどうか……」


 エナのまつ毛が、少しだけ下がり、彼女の失望を映し出した。


「でも、エナ様は彼のために、ほとんどすべてを捧げてきたじゃないですか。命までも……」

「それは私自身の選択だから、リン。誰のせいでもないよ。」


 エナは冷静なままだった。


 その姿はまるで魂を自分から切り離し、すべてを見つめる傍観者のように理性的で、怖さすら感じさせる。


 その言葉に、リンも興奮を抑え、むしろ悲しみを覚え始めた。


「どうしてこんなにも多くの辛いことが、エナ様に降りかかるのでしょうか?私は理解できません……エナ様が最後の時間を、後悔だけで過ごすなんて、そんなの嫌です……」

「それが悪いこととは限らないよ、リン。だって、私は束縛される恋なんて、好きじゃないもの。」


 二人の立場が反転したかのように、エナは微笑んで、涙をこぼしそうなリンを慰める。


「それに、オースさんはまた私を外に連れ出してくれるって。オースさんが落ち着いたら、ヌノン祭りに一緒に行く約束をしたんだ。」

「で……でも、エナ様のお時間はもう……」

「リン……」


 エナはリンの頭を優しく撫でながらも、リンを慰めることはできなかった。


 リンはただ泣きじゃくり、涙を止めることができない。


 エナはもちろん状況をよくわかっている。


 誰よりも、自分の残された時間が少ないことを知っているのだ。


 だからこそ、彼女はこの感情が罪となることを望んでいなかった。


「オースさんの優しさに応えるためには、彼の気持ちを縛るべきじゃない。たとえ私たちの間に恋が芽生えなくても、たとえそれが私の片思いで終わってしまっても、それで十分満足だよ……」

「エナ様!……」


 エナは手を伸ばし、泣いているリンをしっかりと抱きしめ、背中を優しく撫でた。


「今の私は、どんな時よりも健康なんだよ、リン。ほら、以前の私は、君を抱きしめる力すらなかったでしょ?」


 その声は春の湧き水のように、リンの心に優しく染み渡った。


「あの方がくれた薬のおかげで、これまでの何年分もの幸せを一度に手に入れたの。やっと、健康な身体でみんなに向き合えるんだ。だから、リンも泣かないで。」


 そう言いながらも、エナは自身の目が少し赤くなっていることに気づいた。


 次の瞬間、涙が一筋流れた。


「今、私は本当に幸せだよ。」


【大事なおはなし!】



本作品を読み進めていく上で気に入ってくれたら、


・ブックマーク追加!


・下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価!


この2つを行ってくれると、作品の大きな力になります!


初めての小説創作なんですけど、何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ