エナの愛 14
「ふわぁ~、楽しかったぁ!メリーゴーラウンドに魔導バンパーカー…ずっとやってみたかったアトラクション、全部楽しめて、もう悔いはないわ!」
そう言いながら、エナは腕を頭上に伸ばし、大きく背伸びをした。
そのまま満足げに観覧車の窓枠に身体を預け、片手で頭を支えながら外の景色を眺めた。
遠くの地平線にはまだ半分沈んでいない夕日が残っていて、金色の綿雲がそれを包み込み、幾重にも重なっていた。
山の上を、数羽の鳥が暗い森の上をゆっくり飛び、まるで沈む夕日と共に地平線の向こうへ消え去るようだった。
「時間が経つのが早いですね。エナさん、今日のデートは満足しましたか?」
「デートなのに、そんな義務を果たしてるみたいなこと言わないでよ、オースさん。」
「すみません……」
オースは少し気まずそうに笑い、エナの視線に倣って窓の外を見た。
しかし、エナはほんの少し頬を膨らませて怒っていたが、すぐに笑顔を浮かべた。
彼女は去りゆく鳥たちを穏やかに見つめ、目には幸せと寂しさが混じっていた。
「オースさん、時間が経つのって本当に早いね。」
自分の言葉を繰り返されて、オースは一瞬返す言葉に詰まった。
エナは彼の困った様子を見て、「ぷっ」と笑みをこぼした。
「よく言うでしょう……『幸せな時間ほど、あっという間に過ぎ去る』って。」
その言葉に、オースはなぜか懐かしさを覚えた。
まるで頭の中の記憶の欠片がエナの言葉と共鳴し、胸が少し高鳴るようだった。
「間違いなく、今日のオースさんは立派な彼氏だったわよ。でも、女の子と話す時は、もう少し彼女たちの気持ちを考えてみるといいかもね。」
エナは微笑みを浮かべ、再び夕陽の景色を楽しむために顔を外へ向けた。
オースは彼女の横顔を見つめ、少し躊躇いながら口を開いた。
「エナさん、もし僕ができることがあれば、何でも言ってください。もし公爵が外出を許してくれない場合、僕が何とかしてお連れします。」
「本当?それなら、行きたいところが一つあるの。」
ガタン。
エナの言葉が終わると同時に、観覧車はちょうど最高地点に達し、止まった。
【お客様へ、現在、魔導観覧車の運行に一時的な障害が発生しております。技術者による修理が行われておりますので、しばらくお待ちください。ご不便をおかけして申し訳ありません。】
何が原因かは分からないが、観覧車はしばらく動かないようだ。
しかし、オースにとってはそれがかえって良い機会だった――
彼は今まで、この高さから守ってきた全てを、こんなにリラックスした心で眺めたことはなかった。
遊園地に立つメリールの木は、夕暮れを背景にひと際目立っており、その高さは観覧車の半分にも達する。
柱のように遊園地のあちこちにそびえ、糸状の枝には菱形の葉がぶら下がり、冷たい夜風に揺れていた。
夕陽の光が葉に反射し、それらをまるで小さな鏡のように輝かせた。
または、光沢のある鱗のように見える。
それはまさに、現実と夢幻の境界線のように曖昧な、黄昏と夜の狭間に星が隠れているようだった。
「オースさん、ヌノンに連れて行ってくれる?」
「えっ?」
驚いた様子のオースに対し、エナは予想していたかのように、小さく頭を下げ、オースが買ってくれた可愛いウサギのぬいぐるみを手の中で弄んでいた。
「パパとママが結婚準備の時にヌノンに行って、少しの間そこに住んでたの。ママが私にプレゼントを残してくれたって聞いたけど、パパが遠くへ行かせてくれないから、まだ取りに行けてないの。でも、オースさんが連れて行ってくれるなら、きっとそのプレゼントを手に入れられるわ。」
「エナさんのお母様がプレゼントを……それなのに、どうして直接持ってこなかったのでしょう?」
「それはわからない……でも、きっと理由があったんだと思う。」
エナは小さく首を振り、目元に涙が浮かんでいた。
オースはその理由を知らないわけではなかった――
エナの母は彼女が幼い頃に亡くなり、エナが母を記憶しているのは他人の言葉や古い写真だけだった。
母が遺品を残したという話も、直接耳にしたわけではなかったのだ。
「ママは本当に優しい人だったわ。最後に私に言った言葉も、ただ『もう少し眠りたい』って……それ以上、私に何も伝えられなかったの。」
「アンダール公爵が、ずっとあなたを一人で育ててくれたんですね。それは、本当に大変なことです。」
「でも、パパはママの最後の姿を見届けることができなかったの。」
その言葉はオースの心に重くのしかかり、息が詰まるようだった。
エナは穏やかな口調で、アンダールにとって最も残酷な事実を語っていた。
「なぜでしょうね?もしこの世界に本当に女神の加護があるなら、ママみたいに信仰心の強い人がなぜ加護を得られなかったんだろう。ママはいつも祈りに時間をかけていたし、私と過ごす時間も祈りに使ってたのに……」
観覧車が突然揺れ、魔導観覧車が再び動き出した。
しかし、エナは自分の悲しみを抑えきれなくなり、涙が頬を伝い、手の中のウサギのぬいぐるみに滴り落ちた。
「女神なんて、ママの信仰に値しない……ママはいつも、無理矢理信じていたのかもしれない……たとえば、千羽鶴を折れば願いが叶うとか、そんな話を何度も私に教えてくれた。」
エナの声は悲しみによってかすれ、嗚咽混じりに心の痛みを吐き出していた。
「もし本当に願いが叶うなら、この世にこんなに多くの後悔があるはずがないわ。」
「信じる心こそが、人々を支え、困難を乗り越えさせる最も大切なものです。あなたのお母様も、きっとそのことを伝えたかったのではないでしょうか。」
オースはそう言いながら、そっとエナの顔の涙をハンカチで拭い取った。
「どんなに苦しくても、前に進まなければなりません。下を向いて泣いてばかりでは、進むべき道が見えなくなってしまいます。」
「……オースさん、ありがとうございます。私、ちょっと魔法をかけてあげるわね。」
両手で顔を覆った後、エナは再び甘い笑顔を浮かべた。
「これって、どんな魔法なの?」
オースが言い終わる前に、観覧車のドアが開いた。
二人は笑顔を交わしながら、手を取り合って観覧車を降りた。
「今日のデートはここまでにしましょう。リンがもう遊園地の入り口に迎えに来ているはずです。」
「では、数日後、私の仕事が片付いたら、エナさんをヌノン祭りにお連れしましょう。」
「はい、オースさん!とても楽しみにしています!」
エナは少し離れたところで歩みを止め、急に振り返って、オースに向かって大きく手を振った。
「今日のオースさん、エナは満点をあげますよ!」
「気をつけて、エナさん。」
オースはエナが駆け足で去っていく背中を、呆然と見送っていた。
まるで、ベッドの片隅で毛布に包まれて、悲しそうに泣いている幼い少女の姿が浮かんだかのようだった。
どんなに彼女の笑顔が甘く輝いていても、オースの心の中にある後悔の空虚さは埋められなかった。
彼女はあまりにも巧みに仮面をかぶっている。
周囲の世界が彼女の悲しみによって変わることがないように。
全てを心の奥に秘めて、たとえ最後には潰されてしまっても、その痛みを他人のせいにすることはしないだろう。
誰もが彼女の仮面を信じ込むまで、彼女はその心の痛みを永遠に埋葬してしまうのだ。
なぜか、オースは目の奥が少し潤んできた。
彼は足を踏み出し、エナが去っていく方向へと歩き始めた。
【大事なおはなし!】
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