エナの愛 13
「うぅ……」
目を覚ましたエナは、頭を押さえてベンチに座り起き上がった。
隣のベンチにもたれかかりながらぼんやりしていたオースは、エナが目を覚ましたのを見て、少し不安そうな顔を和らげた。
頭が重くて、まるで誰かに強く殴られたような感じだ。頭の中のめまいはどうしても消えない。
「エナさん、大丈夫ですか?」
「え……オースさん、私たちもうカスの館を出たんですか?」
「うん。さっきエナさんが急に倒れたので、すぐに抱えて外に出ました。」
オースの言葉を聞いた瞬間、エナの頬は一気に赤くなった。
さっき自分が意識を失っていた時に抱きかかえられた姿を想像するだけで、その頬の赤みはますます濃くなり、耳まで染まっていく。
「ご迷惑をおかけしました、オースさん。やっぱりあの恐怖の館の中が怖すぎて、精神が持たなかったんですね……」
「エナさん、あれを食べますか?」
オースが指差した方向を見ると、エナの目は期待で輝いた。
「カスのフルーツタルト……小さい頃に、パパとママと一緒にカス遊園地に来た時に一度食べたことがあります。でも、あれから何年も経った今、味が変わってるかもしれませんね。」
「じゃあ、エナさんはここで少し待っていてください。僕が買ってきます。」
そう言って、オースは立ち上がり、近くの屋台へ向かった。
エナはオースの背中を見つめながら、心の中に拭いきれない葛藤を抱えていた。
【私は昔の彼が好きなのか、それとも今の彼が好きなのか……?】
昔の、憧れから生まれた無条件の愛とは違って、今のようにオースと過ごすことも嫌いではない。
ただ、過去の記憶が浮かび上がるたびに、彼に対する想いを伝えたくなる。
しかし、今の彼が過去のことをまったく覚えていない様子を見ると、その燃え上がった恋心は一気に冷水を浴びせられ、冷静にならざるを得なくなる。
もし過去のオースを今のオースに求め続けても、その返事は本当に彼の本心なのだろうか?
オースの背中がぼんやりとした輪郭に変わり、エナの目から涙がこぼれ落ちた。
秋風が顔に触れると、その涙は冷たく感じた。
オースに心配されないよう、急いでウエストポーチからハンカチを取り出し、乱雑に涙を拭いたが、心の中の悲しみは押し寄せ、抑えられない。
もっと時間があれば、もう少しだけあれば、すべてが違っていたかもしれない。
かつて彼に言った言葉を少しずつ思い出させ、心の奥底から湧き上がる恋心を彼に感じてもらえれば、きっと彼も応えてくれるはずだ。
だけど……
「エナさん?」
オースの呼びかけで、エナはふと我に返った。
目の前には、ピンク色のアイスクリームコーンを二つ持ったオースが、心配そうな顔で立っている。
エナは急いで涙を拭き、明るい笑顔を見せた。
「オースさん、これは?」
「屋台の主人が、さっきのフルーツタルトは朝の最後の二つを誰かが買っていったと言っていました。今は作れないそうです。でも、いちご味のアイスはたくさんあるというので、二つ買ってきました。」
「アイスですね!それもきっと美味しいですよ!」
エナはアイスを受け取り、少しだけ上の部分をかじった。
口に入れた途端、いちごクリームが舌の上で溶け、あっさりとした冷たさが心の中の陰りを一気に吹き飛ばした。
「そういえば、軍隊ではアイスなんて食べたことがないな……アイスって、こんなに美味しいものだったのか。」
オースはアイスのコーンを「ガリガリ」と噛みながら、まるで予想外の美味しさに驚いた表情でつぶやいた。
エナはそんな彼の姿を見て、思わず笑い声を上げた。
「オースさんの部下がこんな姿を見たら、きっと面白いと思うわ。」
「彼らはいつも、僕が仕事でも生活でも真面目すぎるって言っているんです。むしろ、彼らが僕を面白いと思ってくれたら嬉しいですね。」
「将軍の仕事って大変なんでしょう?パパも以前、代理の『右将軍』を務めていた時は、日夜公務に追われていましたし、グランド帝国中を行ったり来たりで本当に大変そうでした。オースさんが『右将軍』になってくれたおかげで、パパもようやく楽になれましたよ。」
「代理の『右将軍』?グランドの前の『右将軍』に何かあったんですか?」
オースは、帝都に来て帝国兵士団に入ったばかりの頃に、「右将軍」についての記録を見た覚えがあるが、自分には関係ないと思って深く考えたことがなかった。
エナがその話を持ち出すまで、彼は思い出さなかった。
「パパの話によると、前の『右将軍』はエール共和国の魔法団体と何か関係があったらしく、カリ将軍に『魔法組織と結託して国家を転覆させる意図』があるとして逮捕されたんです……その後、彼は牢獄で亡くなったみたいです。」
「カリ将軍か……彼は国家の利益に関わることには容赦ないですからね。でも、彼の鉄拳のおかげで、今のグランド帝国とエール共和国との間に一時的な平和が保たれているのも事実です。」
「そうですね。このまま平和が続けば、グランド帝国のみんなが幸せになれるでしょうね。」
「……」
エナの言葉を聞いたオースは、一瞬動きを止めた。
どこかで同じ言葉を聞いたことがある気がするが、思い出せない。
「オースさんがみんなのためにこんなに頑張ってくれて、私も嬉しいです。オースさんはすごく成長したのに、私は何も変わってなくて、少し寂しく感じます。」
「そんなことないですよ。アンダル公爵はずっと、あなたを誇りに思っていて、いつもあなたのことを僕に話していますよ。あなたの話をする時の彼の心からの笑顔は、本当に嘘ではありません。」
オースの言葉に、エナは少しうつむいて、寂しそうにつぶやいた。
「そうですね。パパはいつも私を気にかけてくれています……まるで昔、ママに対してそうだったみたいに。」
「……エナさん、アイスクリームが溶けちゃいますよ?」
オースが軽く指摘すると、エナはようやく手元のストロベリーアイスの大半がすでに溶け、ピンク色のクリームがアイスの表面を覆って、コーンの端から今にも滴りそうになっているのに気づいた。
「私たち、ここに座りすぎましたね、オースさん!次は別の場所で遊びましょう!」
エナは急いで溶けた部分を食べながら、オースの手を引いて立ち上がり、遊園地の通りを先へ進んだ。
さっきまでとはまるで別人のようなエナの元気な姿に、オースは一瞬彼女を見間違えたかと思った。
「次はあれよ!魔導エレベーター!」
「またそんなアトラクションか……勘弁してくれ……」
「ダメよ!オースさん、私に付き合って!」
心の中で不満を抱えながらも、オースはエナと一緒に、遠くでゆっくりと上昇しているエレベーターに向かって歩き出した。
ただ、あの場所から降りた時に、果たして自分が吐かずにいられるかどうかはわからなかった。
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