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純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第2章 隠された恋
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エナの愛 12

 ——エナ、ママは少し疲れたみたい……。ママが目を覚ましたら、また一緒に遊ぼうね。


 ママはそう言いながら、私の頭に手を置いた。


 彼女の指が私の髪に触れているのは感じられたけど、その指先には力がまったく感じられなかった。


 彼女はいつものように優しく微笑んでいたが、もう少し一緒に遊べなかったことを申し訳なさそうにしているようだった。


 彼女の顔はすでに血の気がなく、長年の病がその最後の力さえも奪い取っていた。


 今日は、一羽の折り鶴を折るだけでも、ほとんど全ての力を使い果たしてしまった。


 でも、ママは約束を守る人だと私は信じている。


 ——ママ、ゆっくり休んでね。私はリンと一緒に遊んでくるから!


 女中に手伝ってもらって、ようやくベッドに横になったママを見て、私は今ここにいるべきではないと理解していた。


 周りの召使たちは、虚ろで痩せ細ったママの姿を見て、ひっそりと涙を流していた。


 私はもう慣れていた。


 彼らはいつもこんなに弱い。全然、私みたいに大人じゃない。


 ママがまだ私と遊べるなら、彼女はきっといつか元気になって、遠く遠くに旅行に連れて行ってくれるはずだ!


 私は自分が折った不格好な折り鶴をそっと置き、ママが折った鶴を糸で繋げる作業を手伝った。


 これはママが教えてくれた「千羽鶴」という魔法だった。


 千羽の鶴を折り、それを10本の飾りにして窓辺に掛け、願いを込めれば、その願いが叶うという魔法。


 その願いを叶えるために、私はママと一緒に折り鶴を折り始めた。


 でも、私はママほど器用じゃなくて、折った鶴はいつも変な形をしていた。


 ママの美しい折り鶴と並べて見比べると、私の鶴はどう見てもかっこよくなかった。


 それでも、落ち込んでいる私を見て、ママはいつも優しく慰めてくれて、私の鶴も一緒に飾りにしてくれるんだ。


 私の不格好な鶴が、ママの折り鶴たちと一緒になると、なんだか急に綺麗に見えてくる気がした。


 ただ、私はママの執念を理解できなかった。


 彼女はベッドに寝たままで、折り鶴以外は何もできない。


 それなのに、少しも辛そうには見えなかった。


 折り鶴は彼女の生活……いや、彼女の命の一部になっていた。


 彼女がその折り鶴を見つめる目は、まるでパパを見る時の目と同じように、愛に満ち溢れていた。


 そして、彼女はこの折り鶴の魔法を完成させるために、日々努力していた。


 病にかかって、もうベッドから起き上がれなくなってしまっても。


 食事もほとんど取れないほど病んでいても。


 彼女は折り続けていた。


 毎日、数羽の折り鶴を。


 それを糸で繋いでいった。


 小さな折り鶴たちは、色とりどりの糸で繋がれ、風に揺れながらまるで夢のように輝いていた。


 彼女はまるで夢を見る少女のように、ただこの魔法を信じていた。


 だから、私の目には、そんな彼女が星のように輝いて見えたんだ。


 私はずっと、ママが折り上げる一番目の千羽鶴を楽しみにしていた。


 いつか、私もママのように、100羽の美しい折り鶴を折って、ママを困らせている病気を追い払う願いを叶えたいと思っていた。


 でも、今の私は、ただ早くその時が来て、ママがどんな願いを込めるのかを聞きたくてたまらなかった。


 これが、ママが折り上げた97羽目の折り鶴だった。


 そう思いながら、私は自分の指を数えた。


 ——ママが夢を叶えるまで、あとわずか3日。


 もしかしたら、パパの仕事が楽になるようにお願いするのかな? 


 そうしたら、私たち三人でもっと一緒に過ごす時間が増えるかも。


 それとも、自分の体が早く良くなるようにお願いするかもしれない。そうすれば、みんなが毎日彼女の世話をするのに忙しくならずに済むから。


 ママはとても優しい人だから、みんなが自分のために一生懸命働いているのを見て、きっと心苦しい思いをしているに違いない。


 ただ、今日はいつもよりも早く、ママが眠りについてしまった。


 以前はもっと時間がかかっていたのに、今日は横になった瞬間に、もう深い眠りについていた。


 ママを起こさないように、私は少し手間取って、長い折り鶴の飾りをベッドのそばの窓枠に慎重に掛けた。


 それから、静かにベッドを降りて、靴を履いた。


 ——ママ!また明日来るね!


 いつものように元気よく、彼女に別れを告げた。


【大事なおはなし!】



本作品を読み進めていく上で気に入ってくれたら、


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この2つを行ってくれると、作品の大きな力になります!


初めての小説創作なんですけど、何卒よろしくお願いいたします!

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